第12話

次の日も予定通り足立さんが迎えにきてくれた。

「おはようございます! 今日も頑張りましょう!」

僕のテンションにの高さに足立さんはびっくりしていた。

「お、おはよう。どうしたの?すごく元気じゃない?」

「昨夜はいいことがあったので思わず大声出してしまいました」

足立さんはその姿を見て微笑んだ。元気はまわりの人に笑顔を振りまくものだ。足立さんの笑顔を見てさらに僕は元気になった気がする。

「今日は昨日探した場所より少し標高を上げてみましょう。山側から見て神殿が見えるところは全て探すつもりで行きましょう」

足立さんもやる気になっている。

 昨日は神殿の屋根と同じ高さから二十メートルぐらい標高を徐々に上げたところまでを重点的に捜索した。今日は三十五メートルぐらまで標高を上げて勾玉探しをする。

 神社に到着して早速捜索に入った。まず地形図を片手に道のない斜面を目印になるところまで一気に登る。そこから左右に分かれて斜面をくまなく探す。祠の大きさが全くわからない。木造建築の立派なものから石を組んだだけの簡単なものまで、怪しいと思ったものは全て調べる地道な作業が続く。そしてあっという間に昼になった。

「足立さん、何か見つかりましたか?こちらはダメです。一旦ランチにして休憩しませんか?」

「こっちも全然ダメ。そうね、お昼ごはんたべようか」

携帯電話をトランシーバー代わりに使って相手の様子を聞いたり緊急や発見があったら連絡することになっていた。ただ、初めてのトランシーバーは食事の誘いだった。

 一度下山していつものカフェでランチを食べながら調査状況を報告しあった。二人とも思ったより成果が上がらず疲れていまい無言が続いていた。

「そういえば不動君、今朝何であんなに元気だったの?」

「足立さんは僕の彼女の話はどれぐらいご存知ですか?」

「突然姿を消したって……」

「静香っていいます。静香が夢の中で会いに来てくれたんです。そして……」

「どうしたの?」

「足立さん! なぜ静香が夢の中に出てきたかわかりました! 静香は祠の場所を教えてくれたのですよ!」

「どういうこと?」

「夢の中で僕らは出雲大社にいたのです。神殿前で山を指指すのですが、それが随分高い場所を指していたのです。足立さん、昔の出雲大社の神殿って五十メートルぐらいあったんですよね。今の神殿をベースに場所を予想しても、そこだと神殿と同じかそれよりも下になるじゃないですか。標高は最低でも五十メートル以上の場所を探せばいいんですよ」

「なるほど! それなら納得がいく! どおりで何もない訳だ!」

「あと足立さんの話の『神有月』。もう一つ予想をしてみたのですが、ちょっと地形図をお借りしていいですか?」

僕は地形図と方位磁針を並べた。

「十月に太陽が南中する範囲と神殿の位置を結んでみます。そしてその延長上で山との交点ができます。あくまで僕の予想ですが、標高五十メートル以上でこの交点と囲まれたところに祠があるのではないかと思います」

「そっか!八百万の神の中でもやはりトップは『天照大神』、太陽神だもんね」

「そうなんです。その線が怪しくないですか!」

「じゃあご飯を食べたらすぐ行ってみましょう!」

 今、静香の姿は見えないけど、遠くから見えない糸で僕を操っている気がした。

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