第17話

 ビーデルは泊めてくれた夫婦に礼を言った。ガルドラから指示があったのか、夫婦は隣町の友人に紹介状を書いてくれている。


「アンタも大変だね……」


 夫人が彼女に哀れみの目を向けた。


「何でまた、そんなに若いのに殺人なんて……

 たしかにこの国の貴族のほとんどは腐ってるだろうけどさ……」


 ビーデルは少し考えて、そして笑顔で答えた。


「私の生きる意味、みたいなものですから」


 ビーデルはもう一度夫婦に礼を言うと、次の町へと旅立った。










 ルアドとジョンはまた、真っ赤に染まった現場を見た。


「これで何件目だ?」

「5件目だ

 死んだ人数は10人だったはずだよ」


 ルアドは大きなため息を吐いた。


「……そろそろ、先回りして阻止しねーとな……」


 ルアドはそう呟くと、この町での調査の指揮を部下に任せ、少しの兵と共に隣の町へ旅立った。










 ビーデルは紹介状にあった家を訪れ、そこで情報収集をしていた。町で得た情報を持ち帰り、今まで得た情報と共に考えを巡らせていると、勢いよく家の扉が開かれた。


「兵隊が町に来た!」


 家主はすぐに彼女に荷物を持たせ、裏の山へと逃がしてくれた。早い、早すぎる。まだ事件が起こっていないのに来た。今までは事件が起きてからだったのに。一抹の不安を覚えながら、ビーデルは裏山へと入っていった。













 ルアドはすぐにこの町に住む貴族の家を訪れた。主人は怯えていたらしく、彼の姿を見るなり飛びつく。


「わ、私たちを守ってくれたまえぇぇ!」

「えぇ、もちろんです」


 その光景を、ビーデルは裏山から見ていた。ガルドラがくれた望遠鏡はすごく役に立つ。彼らの口の動きを見て、ルアドがこの屋敷に滞在することを知った。


「ふーん、直接対決か……」


 ビーデルは先程までの不安は忘れ、彼との対決への期待感が溢れ出した。

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