第3話 あの場所で

待ち合わせは、一年前のここだった。

雨に汚れた駅前の時計塔。


一年前のあの日、スケジュールに五月蠅い君が、何の連絡もなくこの世から去ってから、365日。

君に逢うのであれば、君の眠る所に行くのが一番なのだろうが、僕は何故かここにいる。

ここにいれば、君が申し訳なさそうな顔をしてあの細い道から走ってくる。そう思わずにはいられなかった。


勿論君は現れるはずもない。


そう思ったとき、ふと見覚えのあるような後ろ姿を、人込みの中に見つけた。

その後ろ姿はまるで僕に気づいたかのように走り去っていく。


「君、なのか?」


気づけば、その後ろ姿を追う様に走り始めていた。


たぶんここで足を止めたら

もう会えないかもしれないと思った。

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