第24話 二面
ギルドでセリアとサニと別れた後、ルミはジュエリーの住処まで帰った。
「ジュエリーさーん、ただいま帰りましたー」
「ルミ、この家使うか?」
「……それってどういう意味ですか?」
「私はこの町を出る」
ジュエリーはただの旅人だ。エルフを殺す為に旅を続けている。
エルフが居なければまた旅を再開するのは当たり前だ。それはルミもよく分かっている。
「……なら私もお供します。私も母を探したいからです。だから見つかるまで一緒に旅をしませんか?」
***
翌日
「――そういうわけで、明日町を出ることになりました」
ギルドでのルミの発言にセリアとサニは意外にも驚いた顔はしなかった。それどころか納得したような顔をしている。
「そっか、旅頑張って」
「私たちもこっちで頑張ります」
(あれ?思ってた反応と違う)
ルミが想像していた反応は突然別れることを知ったセリアとサニは驚いたり悲しむと思っていた。しかし意外にも二人は送り出す気満々だ。
「驚かないの?」
「お母さんを探すんでしょ」
「あとジュエリーさんがほっとけない、ですよね?」
ルミの気持ちは2人に見透かされていた。
母親を探したい気持ちに嘘はない。冒険者を始めたのも旅の資金稼ぎが目的だった。
ただ、ジュエリーをこのままほっておくことができなかった。自分を人間だと思い込み同種族を次々に殺める彼女の存在は周りから見たら異常だろう。
けれどジュエリーは町の人々を救った。きっとエルフを憎み続けるのには何か事情があるに違いないとルミは考えている。
それにいつの日にかジュエリーが自身をエルフだと悟ってしまった時、自分の存在さえも憎んでしまうのではないかとルミは心配なのだ。
「2人にはお見通しか」
「資金面は問題ないの?」
「お金の方はジュエリーさんと話し合って稼ぎながらの旅をすることにしたよ。ジュエリーさんも今までそうしてたみたいだし」
「それなら問題ないですね」
「おい!町に騎士団が来たぞ!」
ギルドの扉を開けて入ってきたのは男性冒険者だ。
他の冒険者達は首を傾げた。それもそのはず騎士団は王国所属の組織だ。
町に来ることなど滅多にない。
ルミ達や他の冒険者達は半信半疑でギルドを出る。
「道を開けろ!」
純白の鎧を身に纏った騎士が道を開けるように言い先導する。人々は道端で立ち尽くしその光景から目が離せなかった。騎士団という珍しい存在が町に来てるからではない。人を取り囲む形で直進する騎士団、その中心にいるのは多くの人を助け町の人々や冒険者から人望があるガーレンだった。
ガーレンは下を向き手首に手枷をはめられている。
その光景はまるで罪人を連行しているかのようだ。
「ガーレンさんに何するんだ!国の騎士だからって横暴じゃないか!」
ある男性冒険者が抗議に出る。ガーレンに命を救われた者とし騎士団であろうと黙っていられなかった。
「横暴?どこがだ。これは正当な処罰だ。もしや知らないのか?この者が魔物を操り町を壊滅させようと企んだ極悪人であることを」
騎士の発言に人々は狼狽し嘆きや怒りの声が飛び交う。全てはガーレンによる行いだと理解したのだ。
「そんなの嘘だ!ガーレンさんは俺の命を救ってくれた!みんなだってそうだろ?これはきっと何かの間違いだ!」
それでも騎士の発言を信じない者が一定数いた。ガーレンによって命を救われた人々だ。
「ふん、戯言を。進むぞ」
何を言っても無駄と判断した騎士団は直進を続行する。
「——もういい、これ以上俺に関わるな」
突然ガーレンは立ち止まり空を見上げて、口を開いた。
その発言が己の罪を認めたものなのか、それとも人々の騒ぎを収めるためのものなのか、真意は誰にも分からなかった。
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