第7話 薬草採取

 食事を終えた後ルミはジュエリーに「ついて来て欲しい」と言われ現在森の中を歩いている。

「そういえばセリアって誰だ?」

「前まで一緒に冒険をしていた友達です。ん?ジュエリーさんが何故セリアの名前を?」

「お前が寝ぼけて言ってるのを聞いた」

「それはお恥ずかしい限りです……」


 セリアとルミが一緒に暮らしていた時、ルミを起こす役目はいつもセリアだった。その時の癖が出てしまったのだ。


「今は冒険していないのか?」

「クビにされたんですよ。お前は弱いからいらないって言われたんです……」

「聞いて悪かったな」

「ジュエリーさんが謝ることじゃないです。全てはリーダーぶってるあの男が悪いんですから」


 ***


 あの男は今……


「はくちょん!誰か俺のことを噂してるな」

 ケイトは可愛らしいくしゃみをして鼻の下を擦る。

 今ケイト達はクエストを終えギルドに報酬を受け取りに来ている。


「大丈夫ですかケイトくん。風邪でしょうか」

 ケイトを心配して近寄るセリア。

「セリアそこじゃない。くしゃみのことに触れて。あと近づき過ぎると危ない」

 そう言ってサニはケイトからセリアを遠ざける。


「おい、サニまだ誤解してんのかよ。あれはルミの嘘だって」


「そうですよ、サニちゃん。ケイトくんはそんなことしませんって」


「セリアはもっと、自分の外見を自覚すべき」


 サミの言葉は正しかった。現にセリアはギルド内で5本の指に入る可愛さだと男性冒険者から噂されている。当の本人は気づいてないが。


「何でサニはそういうことを言うんだ。明日もクエスト受けるんだからあまりからかうなよ」

「へいへい」

 不服そうな顔でサニは頭を掻いた。


 ***


「あのここって昨夜の……」

 昨夜の出来事が鮮明にフラッシュバックして言葉に詰まるルミ。恐怖と焦りが混ざった感情が溢れ出てルミの呼吸は次第に早くなっていく。足が震えて上手く立つことができない。

 ふらついた足で必死に首にかけたペンダントを握りしめる。


 ジュエリーに連れられて訪れた場所は昨夜自分が殺されそうになったエルフ達の住処だった。当然エルフ達の死体がそこらじゅうに転がっている。

 ルミは手のひらで目を覆った。死体を見るのが初めてのルミにはあまりにも刺激が強い。

「ごめん、なさい、私……」

「悪かった」

 ルミの背中をジュエリーは優しく摩った。 

 呼吸が少しづつ正常になっていく。

「もう大丈夫です。それで何をすればいいんですか?」

 呼吸を整えてルミは聞く。


「薬草の採取だ。星の形をした水色の花が咲いている草だ」

「それ私も探してました」

 ジュエリーが言った薬草の特徴はルミの探していた薬草と全く同じだ。


「クエストというやつでこの薬草の存在を知ったんだろ?」

「そうですけど、何でジュエリーさんクエストのこと知ってるんですか?」 

「何度もギルドに行ってるんだ、なんとなく分かる。この辺は私が探す。お前は少し離れた場所を見てきてくれ」

「分かりました」


 その後、ジュエリーとルミは別行動を取り薬草採取をする為各々探し回る。


 それから30分が経つ。


 各々薬草を見つけた後、ルミとジュエリーは再び集まった。


「ど、どんな感じですか、ジュエリーさん」

「9つ見つけた」

「す、すごいですね。私は4つです」

 ずっと同じ作業をするのは気が滅入るものだ。15分ぐらいでルミの集中力は切れていた。


「ガァー」

 鳴くアルティメットドラゴン(以下略)を見るとクチバシに薬草を咥えている。


「おー、すごいぞ。アルティー」

 ルミはアルティーのクチバシから薬草を取る。

「アルティー?」

「面倒くさいので省略しました」 


(カッコよかったのでは?)

 ジュエリーは内心疑問に思うが、ルミにとってそれはそれ、これはこれなのである。


「今回は14つか」

「何でこんなに見つかるんですかね。私も昨日探しましたけど1つも見つかりませんでした」


「その薬草はエルフのいる所しか生えてこないんだよ」

「どういうことですか?」


「エルフには清浄化という体質があるんだ、エルフが長く住み着いた森の草木は繁茂し、川は透き通り綺麗になる。エルフが自分達を神に近い存在だと勘違いする理由の一つだ」

「つまり、薬草も上質なものが取れるということですか?」

「そういうことだ」


 ルミは辺りを見回す。昨夜は暗くて分からなかったが、言われてみると草木が生い茂っていることに気がつく。


 ルミが昨日探していた場所はエルフの住処から遠かったため目当ての薬草が手に入らなかったのだ。クエストの内容を暗記したせいで細かい場所のズレがあった。

(そうか、だから薬草採取でも危険度が高かくて高報酬だったのか。薬草がある所にはエルフもいるということになる。エルフがいれば衝突する可能性がある。それ込みの薬草採取だったんだ)


「はあ〜何か私ってバカですね」

 自分がいかに軽率だったかを思い知らされる。

「確かにそうだ。エルフの言うことを素直に受け取るぐらいだしな」

「そこは励ましてくださいよ」


「よし、ギルドに行って換金するぞ」

「はい聞いてないですね。分かりました」

 ジュエリーとルミは薬草を持ってギルドへと向かった。

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