第26話 第一回お主はヌシを釣れるのか?大釣り大会・朧
「あのぉ〜、大変申し上げにくいのですが、私も一緒に連れて行ってはいただけないでしょうか?」
と、言い出したのは司会者だった。
「別に構わんが、行ってどうするつもりなんだ?」
モカが普通に質問した。
「そうだぞ!お前もさっき自分で言っていたじゃないか、チッキの城に行くんだぞ!命の危険だって十分にあり得るんだぞ!」
バンプが畳み掛けるようにいった。
「言えね、あなた方を見ていたら、なんだか面白いバトルを展開してくれそうな雰囲気を感じましてね、私のMC魂に勝手に日がついたのですよ!それに実況の勉強にもなるのではないかと思いまして・・・」
「そういうことならいいだろう」
「おいっ!いいのかよ!」
モカの即決にバンプが突っ込んだ。
「いいじゃないか!実況してくれた方が、俺たちもテンションが上がるだろ!」
「本当に実況なんかでテンションが上がるのかよ?」
半信半疑で納得するバンプ。
「決まりですね!さぁ、みなさんチッキの城目指して出発進行!!!!!」
「お前が仕切るなぁ〜!!!」
バンプは司会者の調子の良さに、若干イラっとしたのであった。
ザザーーーーーン!!!
ザザザーーーーーーーーン!!!!!!
船に乗ってウォーターアラウンドアイランドを目指すモカ一行。
「そういえば、みなさまに伝えておかなくてはならないことがございます」
「なんだよ?」
「実は、チッキのお城があるウォーターアラウンドアイランドの周りには、いくつもの潮流が存在するのです。そのため、船で向かってもそのまま島に上陸といのは困難!いえ、不可能なのです」
「なんでそんな重要なことを出港してから言うの?」
バンプは普通にイラっとした。
「聞かれなかったので・・・」
司会者のその言葉に怒りマックスのバンプであった。
「じゃあ、どうすればいいんだよ?」
「はい。ここら海域のヌシに手を貸していただこうかと思います」
「ヌシ?」
「えぇ、この海には昔から海域の治安を守り続けてくれている"海のヌシ"がいるのです。そのヌシにこの船を島の入り口まで引っ張っていただき上陸しようという作戦です!」
「ちょっと待て!ヌシって魚なんだろ?どうやって意思疎通を図るんだよ!」
「目を見て話せばヌシ様はわかってくれます」
「言葉の通じない外国に行くのとはわけが違うんだぞ!!!国どころか!種族というレベルで違ってんだぞ!そんなんで意思の疎通なんて無理だろ!」
「いいえ、きっと大丈夫です!」
「根拠ゼロの返答!!!どうすんだよ!いきなり襲われたりしたら!」
「その時は、私が実況します!」
「そっかぁ、なら安心だね。・・・ってなるかぁぁぁ!!!」
バンプは海の上でノリツッコミした!
「先ほどのは冗談です!襲われた時には引き返しましょう!」
「そもそもそのヌシ様にはどうやって会えばいいんだよ?」
「これです!」
テレテレン♪
「ゴールデンミミズゥ〜!!!」
司会者は金曜19:00のテンションで紹介した。
「ミミズってことは、もしかして・・・」
「はい!その通りです!釣っていただきます!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!わかってる?俺たち今から、デスク軍幹部のチッキを倒しに行くの!無駄な体力は使いたくないの!」
「無駄な体力ではございません!これもチッキを倒すために避けては通れぬ道の一つなんです」
「・・・・・」
バンプは返す言葉を失った。と、同時に、
ギュルルルルルルルル〜〜〜♪
バンプのお腹が鳴った。
「そういえば、今日まだご飯食べてなかったな。この釣りをしながら別の魚も釣って、昼ごはんにするか!」
モカが前向きな発言をした。
「そうと決まれば・・・、コホン!第一回お主はヌシを釣れるのか?大釣り大会ぃぃぃぃぃ!!!オボロオボロオボロオボロオボロ〜〜〜!!!」
『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーー!!!!!』
司会者は大会名を大声で叫んだ後、すぐにリバースした。そして、その突然の出来事に一同は驚いた。
「ごめんなさい。どうやら私、酔ってしまったみたいです。自分にではないですよ!船にです」
みんなそんなことはわかっている。
「もう、しょうがねぇなぁ〜。あっちの部屋で寝てろ!!!」
そう言うとバンプは司会者をおんぶして部屋まで連れて行った。
「なんだか、最近俺おんぶばかりしている気がする・・・」
バンプが戻ってきて釣り大会はスタート。ちなみに、みんなの釣竿などの道具一式はモカが魔法で用意した。
「全然釣れないでござるな〜」
「確かにね!ヌシではなくても、何かしら釣れてもいいと思うんだけど・・・」
モカ一行はかれこれ1時間以上、あたりのないまま釣りを続けていた。
「本当にいんのかよ!何だかこの餌で釣れるのかも怪しくなってきたぜ!」
「バンプ殿!焦ってはいけませぬ!拙者、この時間は己の忍耐力を鍛えよという神の思し召しであると見受けましたぞ!」
「オイオイオイオイ!モカ!ロボ人が暇過ぎて新しい悟りを開きはじめたぞ!」
「いいじゃないか!開かせてやれ!」
「なんだよ開かせてやれって?聞いたことのないなだめ方!」
「フフフ・・・」
「なんだ!お前そうやって笑えるんだな?」
バンプがイアリの笑顔を見て言った。
「何よ!悪い!何だか、あんたたちのやりとりが面白くって笑っただけじゃない!人を鬼みたいに言わないでくれる!」
「悪い悪い!ちょっとびっくりしてな!」
「笑うことは良いことだ!」
モカがイアリを肯定するように優しく言った。
「フンッ!」
イアリは怒ったような態度でふてくされてみたが、心の中では満面の笑みを浮かべていたのであった。
ググン!
グググンンンン!!!!!
「引いているでござる!拙者の竿が凄い勢いで引いているでござる!!!」
それは突然だった。モカとバンプがイアリとやりとりをしている後ろで、ロボ人に大きな当たりが来たのである。
「いいぞ!ロボ人!そのまま、そのままゆっくりだぞ!」
「凄いじゃない!本当にただのロボットじゃなかったのね!」
「ヌシじゃない方が、昼食食べられるからいいんだけどなぁ〜」
モカが元も子もないことを言った。
「グヌヌヌヌヌヌヌヌヌ!!!グヌヌヌヌヌヌヌヌヌ!!!ヌウウウウウウウ!!!」
「いいぞ!いいぞ!巻いてるぞ!いい感じで巻いてるぞ!」
「ヌグググググググググ!!!ヌググググググググググ!!!ヌグググググググ!!!」
「あとちょっとよロボ人!」
「ヌグキキヌギギギククククギギギギ!!!オオオオオオオオオオオオオ!!!!!ウウウウウウオオオオオリャャャャャャアアアアアア!!!!!」
ザァァァァァッパァァァァァァァン!!!!!
驚くほどに大きな魚が釣れた。
「これ絶対ヌシだろ!」
「もちろんでござろう!」
「見たことのないサイズ感ね!」
「・・・・・」
全長30メートルはあろうかと思われる魚をロボ人は釣り上げた。その大きさにみんなが目を奪われていた。
「ここからどうすればいいでござる!」
釣られたままの魚はロボ人の力で宙をバタつくような感じになっていた。次の瞬間である。
バクッ!
なんと別の魚が海中から飛び出し、ロボ人が釣った魚を半分飲み込むような形で噛み付いたのである。しかも、その魚、サイズがロボ人の釣った魚よりはるかに大きいのだ。どのくらいかというと、嚙みつきながらも、その全長が半分以上海の中に隠れているほどである。
「ヌ、ヌシが食べられている」
デッキの声が気になって這いずりながらやってきた司会者が言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます