第25話 賞金首は幹部様

「さっき新しいギルドが発表されたんです。そのギルドの暗殺ターゲットが、何とあのデスク軍幹部のチッキだったんですぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!」

息を切らしながら、慌てて入ってきた司会者。


「マジかよ!!!」

バンプは驚く。


「でも待てよ、デスク軍の幹部ともなれば討伐なんてとっくの昔にギルドになっていたんじゃないのか?」

バンプは疑問を司会者にぶつけた。


「はい!!!そちらの骨董品コレクター様の仰る通りでございます」

バンプは一瞬、眉をピクリとさせたが"ここは話の流れを切るところではないガマン、ガマン"と自分に言い聞かせた。


「今回のチッキだけでなく、ボードやバスタなど、過去にもデスク軍の幹部がギルドに登場することは何度かございました。しかし、あの泣く子も黙るデスク軍の幹部です。挑戦するものなんて、ハナから現れません!!!たまに現れたとしてもご想像の通りの結果です。冒険者を募るのではなく、犠牲者を募るような形になってしまうため、いつしかギルドでデスク軍の幹部に関する依頼を見かけることは無くなりました」


「じゃあ、なんで今回はチッキのギルドが発表されたんだよ!!!」


「どうやらチッキにとても深い因縁のある方からの依頼のようでして・・・」

そう言うと司会者は依頼書のコピーをモカたちに見せた。


 そこには・・・、


「憎っくき、憎っくきチッキを討伐した方には報酬10億マーメ」

と書いてあった!!!


『10億マーメ!!!!!!!!!』

その場の全員が大きな声を揃えた。


「さっきの大会で100万マーメって聞いた時でも驚いたのに10億マーメだと!!!」


「私にとって100万マーメははした金だけど、10億マーメになってくると全然違うわ。それだけあればホット・スプリングの新作も全部買えちゃうじゃない!!!」


「拙者生まれて今までそんな大金見たことがないでござる。ぜひ1度お目にかかりたいでござる!!」


「10億マーメということはそれだけ強い相手ってことだな」

ひとりひとりのテンションが大きく上がった。


「過去にあった幹部の討伐は多くても3000万マーメほどでした。しかし、今回は桁が違いすぎます。それに加えて、今ちまたで噂されているボード行方不明事件もありますから」


「ボード行方不明事件・・・?」


「ご存知ありませんか?私も驚いたのですが、デスク軍の幹部である、あのボードがどこかの誰かにやられてしまい、そのショックからデスク軍をやめ、放浪の旅に出てしまったという話です。そのため、今デスク軍の幹部の席が余っているらしいのです。それって聞きようによってはデスク軍が衰退しているようにも聞こえませんか?そう聞こえたものは、もしかしてデスク軍の幹部討伐って昔ほど難しくないのでは?と考え、挑戦しようとする可能性もあると思うのです。それに加えて、この金額です。今回の依頼は今までのそれとは、状況も報酬もわけが違うのです」


「そのやられたボードとおっしゃる方は、確かモカ殿が・・・」


「だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

バンプがロボ人の口を無理やり手で塞いだ。


「バカやろう!!!こんな物騒な街でそんな話したら俺たちまで狙われるかもしれないだろ!!!」

バンプは小声でロボ人に説明した。


「モガモガガフガフモガモガモガモガ」

ロボ人は"なるほどそういうことでしたか。承知しました"と答えた。二人のそんなやり取りをイアリは何かあるなと疑いの目で見つめるのであった。


「あいつ俺にやられて行方不明になってたんだな」

モカが言っちゃった。


「えっ?????」

司会者は耳を疑った。


「だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!バカヤローーーーーーーー!!!!!」

バンプはモカに罵声を浴びせた。


「ハハハ!!!またまた冗談がお上手で。さっきから気になっていましたがコレクターさんもかなり珍しい物をお持ちだ!!!先ほどもそちらのロボットが何やら喋り始めたり、今度はこちらの紙袋が冗談を言ったりと、まるで自立しているようですね。素晴らしい!!!あなたがどれだけ世界を見てきたのかがよくわかりますよ」


「ハハハ!!!そうでしょう!!!ハハハ!!!」

バンプはここ最近で1番の苦笑いをして見せた。そんな空気を遮るかのようにイアリが言った。


「私そのギルド受けるわ!!!」


「マジ???」


「マジよ!!!」

イアリの発言に驚きを隠せないバンプ。


「だって10億マーメよ!!!考えただけでヨダレが出てきちゃうわ」


「お前、チッキって知らないの?デスク軍って知ってる?」


「う〜ん・・・、よく分からないけれど、負けて逃げ出すような奴らの仲間なんでしょ?」


「かぁ〜!!!!!わかってねぇ〜!!!」


「しょうがないじゃない!!!私今まで、暗殺の仕方しか教えてもらってきていないんだから。・・・でも、そういえばパパがこの世には強いやつらが沢山いて、その中のひとつにそのデスク軍っていうのがいるって言ってたような気がするわ」


「ほらみろ!!!!!そんな簡単に手を突っ込んでいいような話じゃないんだって!!!俺たちがなんとかしてくるから、お嬢ちゃんは違うギルドを探しなさい!!!」

バンプは精一杯イアリのことを思って話したつもりだったのだが、相手は言っても暗殺者である。

バンプの言動は暗殺者のプライドを馬鹿にしたような態度に、イアリには映ってしまったのである。


「あなたそう言って、先に行ってお金を奪うつもりなんでしょ。そうはさせないんだから。・・・とは言っても、私ひとりではもしかしたら上手くいかないかもしれないわね。なら、私も一緒に連れて行ってよ!!」


「はい???」


「力を貸してあげるって言ってんの!!!!!その代わり取り分はあなたと私で半分ずつね」


「あのぉ〜、拙者の分は・・・?」


「えっ?あなたロボットでしょ???お金なんて必要ないでしょ!!!!!」


「勘違いされているようですが、拙者見た目はロボット、中身は人間という設定でして・・・」


「設定っていうな!!!」

バンプはロボ人に突っ込んだ。


「OK!!!わかったわ!!!それなら3等分ね!!」


「俺のは?????」

モカが主張してきた。


「はぁ〜???あなた紙袋でしょ???どうせ役に立たないんだから、そんな贅沢言っちゃダメよ!!!う〜ん、でも、あなたもこのパーティーの一員なわけだから、よしっ!!!こうしましょう!!!3等分してそこにいるあなたのオーナーから少しもらいなさい!!!」


「だから俺は骨董品コレクターじゃねぇっての!!!!!」

さすがにバンプは声を荒げた。


「もう!!!金の話はいい!!!お前に半分の5億マーメをやるよ!!!残りを俺たちで分ける!!!お前たちもそれでいいよな???」

バンプはモカとロボ人に問いかけた。


「構わん!!!」


「大丈夫でござる!!!」

2人ともバンプの意見を飲み込んだ。


「本当にそれで良いの???あなたたちひとりひとりの配当金額が減っちゃうわよ???」


「5億マーメを3人で割っても十分大金だろうが!!!」


「あなた気持ち良い性格しているわね!!!なんだかついていくのが楽しみになってきちゃった」


「よし!!!決まりだな!!!そうと決まればスグに出発するぞ!!!これだけお金の取り分の話していて、他の人に先を越されましたじゃ笑えないからな!!!」


「そうね、急ぎましょう!!!」


「・・・と言っても、相手はデスク軍幹部のチッキだからな。簡単に誰かに先を越されることはないと思うけれど。おい司会者!!!チッキは今どこにいるかわかるのか?」


「はい!!!先日までデスク軍幹部が集まる会議がデスクの城であったようなのですが、今はもう終わり、チッキは自分の城に戻ってきているようです」


「じゃあ、直接城へ向かえばいいんだな???」


「はい!!!その通りです。チッキの城は海に浮かぶ孤島!!!ウォーターアラウンドアイランドにあります。島全体がチッキの領土!!!綺麗な海に囲まれた島です」


「ということは船が必要だな???」


「はい!!!しかし・・・」


「どうしたんだ???」


「先日、この街にある船が何者かに破壊されるという事件がありまして・・・」


「そうか!!!モカ!!!」

そう言うとモカはテクテクと港の方へ向かっていった。


「どうされました???」


「いや、ウチのリーダーに船を修理しに行ってもらったんだよ」


「リーダー???リーダーはあなたでは???」


「違う違う!!!俺はあいつの仲間だよ」


「へっ、へぇ〜。そうなんですね」

司会者はバンプの話を聞き流すように返事をした。


「終わったぞ!!!」


「えっ???」

司会者がスグに戻ってきたモカに聞き返した。


「だから終わったって。船の修理!!!」


「ははは!!!またまたご冗談を昨日大破したばかりの船がそんなスグに・・・」


「直っとるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」


みんなで港に向かい、船を見た司会者はその驚きについつい大声を出してしまった。


「ふぅ〜!!!やっぱり魔法は疲れるから嫌い!!!」

モカは小さじ一杯程度の愚痴を吐いた。


「よし!!!じゃあ、ウォーターアラウンドアイランドに向かうか!!!」


『オウ!!!!!!』

モカの呼びかけに、バンプ、ロボ人、イアリが声を揃えた。

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