第20話 圧倒的

ガイィィィィィィィィィン!!!!!


バンプの切り込みはコンロの拳によってあっけなく弾かれた。


「オイオイオイ!!!いきなり切り込んでくるとは危ねぇやつだなぁ・・・」


「なるほど、お前の武器はその拳につけたグローブか」


「ご名答!!!俺は武器を持つのが嫌いでね。武器って荷物になるじゃねぇの。それが面倒臭いんだよなぁ〜。それにコレだとほとんど生身で勝負できんじゃん。わかりやすくてよくね???」


「遠回しに武器を使ってる俺自身を否定されているようでしゃくにさわるな」


「ハハハ!!!スマンスマン。そんなつもりはないんだぜ。俺にとってはこっちの方が自分を鍛えやすいって話よ」


「そうか、それもこれも勝てなきゃ意味がないんだよっ!!!」


またしてもバンプの方から切り掛かった。


シャッ!シャッ!シャッ!シャッ!シャッ!


シャッ!シャッ!シャッ!シャッ!シャッ!


ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!


ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!


バンプの連続攻撃はことごとくコンロの拳によって弾かれてしまった。


「そんなもんかお前の攻撃は!!!」


挑発するコンロ。


「まぁ待てよ。戦いを楽しませてくれ。体が温まらないと力が出ないだろ!!」


「それっぽいこと言うねぇ!!!それでやられたらどうするつもりなんだっ???」


今度はコンロの方から仕掛けた!!!


ビュッ!シャッ!ブンッ!ビッ!シャッ!


ビュッ!シャッ!ブンッ!ビッ!シャッ!


サッ!バシッ!ドカッ!サッ!サッ!


ドカッ!サッ!サッ!サッ!バシッ!


バンプはコンロの攻撃をいくつかもらってしまった。


「やっぱ強ぇなオイ!!!」


「こんなんで感心されても全然嬉しくねぇんだけど!!!」


「それじゃあ少し、本気出させてもらうぜ!!!」


緒操呂奇真剣おどろきしんけん

豚の尻尾ピグテイル


ビュワッッッッッッッッッッッッッ!!!


「なんだなんだ!!!それっぽい雰囲気あったから何かあんのかと思ったら、さっきと同じ攻撃じゃねぇか!!!期待して損したぜ!!!」


「フン!!!気をつけろよ!!!」


「何???ハッ!!!」


シュザッッッッッッッッッッッッッ!!!!!


なんと今までと同じに見えたバンプの攻撃だったが、その剣筋が尻尾のようにしなり、コンロの防御を交わし切りつけた・・・かのように見えたが、コンロはその直前で技の軌道に気づき避けていた。しかし、それでもコンマ数秒遅かったため、バンプの技はコンロの頬をかすめわずかながらダメージを与えることができたのだった。


「ちょっと本気出せばこんなもんよ!!!どうだ???まだ余裕か???」


バンプがコンロを挑発する。


「あぁ、余裕だね。俺の感想はさっきと何も変わっちゃいないなぁ〜」


コンロがバンプを挑発する。


「でも、お前が技を見せてくれたんなら俺もちょっと技を見せないとな」


サッ!!!


バンプはコンロのその言葉にすかさず構えをとった。挑発こそしているがバンプは自分がコンロに勝てるという確信をこれっぽっちも持っていない。そんな相手が自分の口からご丁寧に技を出すと言ったのである。油断する余裕すら今のバンプにはなかった。


弱火eat up《ジャクヒートアップ》!!!!!


そう言うとコンロの両手を炎が包み込んだ。


「さあ!!!今度はこっちの番だ!!!いくぞっ!!!」


そう言うとコンロは手のひらから炎の玉を飛ばした。


ヒュッ!ヒュッ!ヒッ!ヒュッ!ヒッ!


ヒュッ!ヒュッ!ヒッ!ヒュッ!ヒッ!


右手と左手それぞれ交互に5発ずつ、合計10個の火の玉が放たれた。


クルッ!クルッ!クルッ!クルッ!クルッ!


クルッ!クルッ!クルッ!クルッ!クルッ!


コンロが放った火の玉を、剣を持ったままバク宙しながら交わすバンプ。

そして最後の1個を交わし終えた瞬間。


「遅い!!!」


ドガッ!


バンプが交わす最終地点を予測していたコンロが交わすことに気を取られていたバンプへ強烈な炎の拳を食らわせた!!!


ズザザザザザザザザザザザ!!!!!


ドゴォォォォォォォンンン!!!!!


コンロの炎の一撃を喰らったバンプは地面を滑るように吹っ飛び洞窟の壁に激突した。


「どうした?もう終わりか?そんなわけないよな?さぁ立てよ!!!」


「ハァハァハァ!!!」


バンプは立ち上がった。しかし息は荒くかなりのダメージを受けているように見えた。


「クソォ、体が思うように動かねぇ!!!まだ、ボードとの戦いの傷が完治してねぇんだ。チクショウ!!!こんな面白い戦いなのに全力でやれないなんて、やりきれねぇよ!!」


「オイッ!!!何をひとりでゴチャゴチャ言ってんだ!!!」


悔しさを滲ませるバンプなどお構いなしと言わんばかりにコンロのラッシュが飛んできた!!!


ギィン!キン!ギィン!キン!ギィン!


キン!ギィン!キン!ギィン!キン!


しかし、今度は全ての攻撃をさばききったバンプ。


「少し目が慣れてきたのかもしれねぇな」


世界一の剣豪を目指すというだけあって、やはりバンプには格闘のセンスがあるのだ。そのセンスは数分、数秒の戦いの中でも磨かれていき、バンプを成長へと導いていく大きな要素であった。


「とはいえ、俺も長期戦は避けないと体が持たねぇぞ」


バンプは自分の置かれている状況を冷静に判断していた。子供たちを守らなければいけないこと、ロボ人の面倒を見なければいけないこと、村人たちを助けなくてはいけないこと、この戦い以外にも、いやむしろこの戦いと並行しての方が正しいのかもしれない。今のバンプには抱えているものがたくさんあるのであった。


「ウダウダ考えていても時間が無駄になるだけだ!!!短期決戦で決めてやるぜ!!!いくぞ!!!」


緒操呂奇真剣切りおどろきしんけんきりふだ

ダブルアップ


「何だそのトランプは???」


コンロがそう聞いた瞬間にバンプはトランプを宙にバラまいた。


「これが攻撃か?こんなちゃちな攻撃で何をしようっていうんだ?不思議な攻撃技を持っているんだな。何かあるのか?それともただの時間稼ぎか?まぁどっちでもいいか!!!全部灰にしちまえばなぁ!!!」


そう言うとコンロは手のひらから火の玉を次々と飛ばし、宙に漂うトランプを次から次へと燃やしていった。


ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!


ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!


ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!


ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!


次から次へとトランプは燃え、灰となり地面に落ちていった。


「って、結局何もねぇのかよ!!!お前にはガッカリだよ!!!もうちょっと骨のあるやつだと思っていたのに」


そう言うとコンロはゆっくりとバンプの方へと近づいていった。


ザシャッ!ザシャッ!ザシャッ!ザシャッ!ザシャッ!


ザシャッ!ザシャッ!ザシャッ!ザシャッ!ザシャッ!


ザシャッ!ザシャッ!ザシャッ!ザシャッ!ザシャッ!


ザシャッ!ザシャッ!ザシャッ!ザシャッ!ザシャッ!


ザシャッ!ザシャッ!ザシャッ!ザシャッ!ザシャッ!


灰となって地面に落ちたバンプのトランプを無残に踏みしめながらコンロがバンプに近づいてくる。


「触れたな」


「何?」


シューーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!


バンプの元へとトランプが1枚吸い寄せられるように飛んでいった。


「俺のダブルアップという技は相手が触れたトランプのカードによって、俺に恩恵がもたらされるというもの。相手の触れたトランプがスペードの場合は腕力!ハートの場合は忍耐力!クローバーの場合は視力!ダイヤの場合は脚力!といった具合にそれぞれが2倍になり、トランプに書かれていた数字×1分が継続時間になるんだ。」


「ちょっと待て!!!話をどんどん進めんなよ!!!そもそもの話、俺はお前のトランプを全部燃やしたろうが!!!それとも何か?灰になったトランプにも触れちゃダメだっていうのか?」


「ちゃんと数えたのか?」


「ハァ?」


「ちゃんと自分の燃やしたカードの枚数を数えたのかって聞いてんだよ!!」


「何・・・?」


「そう。俺がはじめに上にばら撒いたのはジョーカーを含んだ53枚のトランプのうち40枚だけだったんだ。そして、お前が宙に舞ったトランプに気を取られ上を向いているうちに地面に残りの枚数をばら撒いた。あいにく洞窟の中は薄暗い。それに加えてお前が燃やしたトランプの灰が地面に落ち、もともと地面にばら撒いていたカードの上に重なり見えにくくなる。そして、今、お前がこっちへ近づく時に灰の下にあった無傷のカードを踏んでしまったってわけさ」


「お前、ずいぶん策士じゃねぇの?」


「マジシャンなんでね。そしてお前が触れたカードがこれだ!」


ハートの10


「ハートつまり俺の忍耐力が2倍になり、それが10分続くってわけだ!!」


「はっ?たかが忍耐力が今までの倍になったところで何になるっていうんだ?」


「忍耐力が2倍になるってことは、体への負荷に今までの2倍耐えることができるようになるってことだ。言い換えると今現在、俺が感じている体への負担が半分になるってことなんだよっ!!!」


ザンッ!!!


さっきまでとは別人に近いバンプの切り込みが、コンロの横腹に傷をつけた。


「グッ!!!」


「はぁ〜!!!やっと効いてくれたか。さぁ、第2ラウンドを始めようぜ!!!」


「ククク!!!面白れぇ〜!!!お前最高だよ!!!ボードに稽古をつけてた時には感じることができなかった刺激を受けてるぜぇ〜!!!強いって退屈だと思っていたけど、世の中は広いなぁ〜!俺にとってはCOFFEE BEANSより、お前と出会えたことの方が収穫だ!!!」


「そりゃどうも」


「俺ももう少し力を出すとしようか・・・」


中火eat up《チュウヒートアップ》!!!!!


先ほどまでとは違うもっと大きな炎がコンロを包んだ。

前回は拳だけだったが、今回は両腕全体を炎が包み込んでいる。


「いいねぇ」


バンプは笑った。


「そうこなくちゃ!!!」


バンプが切り込んだ。


ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!


ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!


ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!


ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!


二人はまさに互角。お互いの攻撃をお互いが受ける。その攻防が何度も繰り返される。


ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!


ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!


ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!


ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!


「この時間、タマンねぇなぁ〜!!!!!」


コンロが嬉しそうに言う。


「確かに、こんな時だっていうのに俺もワクワクしてるぜ!!」


バンプも嬉しそうに言う。


ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!


ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!


どちらも寸前のところで相手の攻撃をさばき、ダメージを与えられないでいた。


ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!


ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!


こんなに自分の実力と拮抗した相手に出会うことなど人生であるのだろうか?と、感じてしまうほどにお互いの力に差がなかった。


「お前にはもっと早く出会っていたかったぜ」


「奇遇だな。俺もそう感じていたところだ」


まるで幼馴染のような雰囲気さえ感じる2人のやり取りはどんどん続く。


ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!


ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!


「マジシャン?お前そろそろビクビクしてんだろ?」


「ふんっ!!!」


バンプは図星だった。


「だよなぁ〜!!!もうすぐ10分経っちまうからなぁ〜。せっかくこんなに面白れぇ〜時間を過ごしてんのに残念だぜ。だからせめてもの敬意を表して・・・」


強火eat up《キョウヒートアップ》!!!!!


コンロの全身を炎が包んだ。


「全力で葬ってやるよ!!!」


「お前、最後まで優しいなぁ〜」


バンプは皮肉を言った。


ハァァァァァァァァァァァァ!!!!!!


とてつもなく大きな炎の塊がコンロの手のひらからバンプへと放たれた。それを剣で受け止めようとするバンプ。しかし、コンロの放った炎の力は凄まじく、バンプはズリズリと足が地面をえぐりながら押されていった。


「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」


もはや気合だけで炎を受けているようにも見えるバンプ。

しかし、その気合も足りずに壁まで押され炎は爆発を起こし砕け散った。


ドガァァァァァァァァァァァァンンンンンンンン!!!!!


バンプは凄まじい爆発音とともに降り注ぐ瓦礫に埋もれた。


「ハハハハハハハハハハハ!すまねぇなマジシャン!!!!!結局本気を出したら圧倒的だったってわけだ。でもさっきまでの時間は楽しかったぜ!!!生まれ変わったらまた会おう」


ガラッ、ガラガラガラ。


それは瓦礫が崩れる音だった。バンプに背を向け帰ろうとしていたコンロはその音に何かを感じバンプの方を振り返った。


「なぁ〜んかおかしいと思ってたんだよなぁ〜。いくら前の戦いの傷が癒えてないって言っても、ある程度の時間は経っているんだし。自分で言うのは何だけどそれなりに回復力はある方だと思っているし。こんなに体が疲れるもんかねって、戦いながらずっと不思議に思ってたんだよなぁ〜」


「お前、何をブツブツ言っている??」


「いやさぁ〜、ずっと引っかかってたんだよ!!!俺なんか今日調子でねぇなぁ〜ってよ」


「そうか?まぁ〜、あの炎の大玉を食らって、まだ立てるその根性だけは褒めてやる。だが言い訳はよせ!!見苦しいぞ!!!自分の実力を認めろ!!!」


「そうなんだよ。確かに自分の実力を認めなくちゃいけねぇ。でも、これが俺の実力だってどうしても思えなくてさ。俺の体が俺の体じゃないみたいでさ。なんだかずっと何かが体にへばりついているように重くてさ・・・。なぁ???モカァァァァァァァァァァ!!!!!!」


バンプ今日イチの大声が出た。


「テメェ、いつまで人の背中で寝てんだぁぁぁぁ!!!しかもお前、魔法か何か使って自分の体重を少しずつ重くしてただろぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!この野郎!!!いつまでもおんぶしてもらえると思うなよ!!!!!本当の意味でお荷物になってんじゃねえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」


そう言うとバンプはおんぶしていたモカを思いっきり投げ飛ばした。


ズバラガギャバガドガラズドーーーーーーーーーーーーーーンンンンン!!!!!


モカは地面の奥底へと沈んでいった。それはモカがバンプにかけていた負荷の度合いをみんなに知らしめた。


「!!!!!!!」


コンロは驚いた。


コキッ!コキッ!コキッ!


バンプが全身を鳴らした。


「いやぁ〜軽くなったなぁ〜」


「ハハハハハ!!!!!やっぱり面白れぇ〜よお前!!!」


そう言うとコンロは全力でバンプへと向かっていった。


緒操呂奇真剣おどろきしんけん

堂煩どぼん


バンプの居合抜きがコンロを捉え、コンロは血しぶきを上げながらその場に倒れこんだ。


「悪いなコンロ。圧倒的だったのは俺の方みたいだ」


バンプはコンロに勝利した。

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