第18話 お前が回収するのかよ

ドォォォォォォォォォォォォンンンン!!!


大きな音を立ててバンプたち一行は先ほど大男と戦っていたフロアの下の階へ落ちた。


「痛いてててててて・・・」


バンプはモカをおぶったままキツネを右手に、ネギマを左手に抱え、なんとか無事に着地した。


「いやぁ〜驚いたでござるな。まさか地面が壊れてしまうとは・・・」


ロボ人はマキをお姫様抱っこして、こちらも同様に無事着地した。


「ささどうぞお姫様。お怪我はござらんか?」


ロボ人は少しコントチックな振る舞いでマキに声を掛けた。


「大丈夫です。ありがとうございます」


マキはロボ人とのコントに乗っかる余裕がなかった。


「しかし、3人とも先ほどの戦いは凄かったでござるな!!!拙者感動したでござる」


「俺たちは3人とも自分たちが未熟だって自覚があるからな。助け合うことの大切さを知っているのさ」


「素晴らしい!!!拙者も見習わなくてはいけないでござるな!!」


「見た感じロボットだし強そうに見えるけどな」


「いえいえ、拙者は未だ未熟者」


「それで強かったらただの嫌味だからな!!!」


「はははははでござる!!!」


キツネとロボ人が会話を楽しんでいるのを遮るかのように割って入ってきたものがいた。


「なんかでっけぇ音がしたから来てみれば。何だお前ら?」


「!!!」


モカをおぶったままのバンプとロボ人は声を掛けてきた男の殺気に瞬時に気がつき、子供たち3人を守るようにして構えをとった。


「何だよお前たちいきなり構えたりして物騒だなぁ!!!こっちはまだ何もしてないっていうのに」


「ロボ人感じるか?」


「ええ、ただならぬ空気を感じるでござる!!!奴はヤバいでござる!!!」


バンプとロボ人は小声でやり取りをした。


「なぁ〜にをコソコソ喋ってるんだよ!!!ったく、ここは危ねぇんだからお前たちも用事がないなら帰れよ!!!ここは遊ぶところじゃないぞ!!!」


と、話し終わったところで男は何かに気がついた。


「あれっ?そこに倒れているのは大声で有名なケトルちゃんじゃないのぉ〜!!!どうした?そんなボロボロになって???」


そう、大男も先ほどの地割れに飲み込まれてここまで落ちてきたのだった。


「コンロ様。申し訳ないドン。あそこの子供たちにやられてしまったドン!!!」


「はぁ〜?お前子供に負けたの???」


「いや、そうじゃないドン!!!普通の子供じゃないドン!!!凄く連携の取れる、大人にも負けない力を持った子供なんだドン!!!」


「じゃあ、お前は普通の大人に負けたんだな。普通の力を持った、普通の大人に!!!」


「違うドン!!!そうじゃないドン!!!誤解だドン!!!」


「お前、餌になるか?」


「やめてくれだドン!!!次はこんな失敗しないだドン!!!」


「どうしよっかなぁ〜・・・」


男がもったいぶっていると、


ドガガーーーーン!!!

ドガン!!!

ズガガガーーーーン!!!


遠くの方から何かが近づいてくる音がした。

しかもソレは何かを壊しながら近づいてきているようだった。


「ほらほら、起きちゃったじゃ〜ん。せっかく今まで寝てたのに、お前がでかい声出してこんなことするから。どうすんの〜〜〜〜〜〜???面倒くさくなっちゃうよ〜〜〜〜〜!!!」


「知らないドン!!!オイラは何も悪くないドン!!!」


「いやいや、弱いって時点でお前悪いから」


男は言い切った。


「はぁ〜、起きちゃったかぁ〜、面倒くせぇなぁ〜〜〜〜。チッキ様もこんな時に会議してんじゃねぇ〜よ!!!ったく・・・」


男の愚痴にバンプは耳を疑った。


「おい!!!お前がチッキじゃないのか?」


「はぁ〜???何を言ってんだお前!!!俺がチッキ様なわけねぇだろうが!!!そもそもチッキ様は女性だし」


「何???ということは、チッキというやつはお前よりも強いってことか???」


「まぁ直接戦ったことねぇから何とも言えねぇが、普通に考えてそうだろ。まぁ参考になるかどうかは分かんねぇが、俺たちの所属しているデスク軍てのがあるんだが、その幹部の一人にボードって言うやつがいてな。実は俺は昔、ボードの教育係をしていたことあるんだ。あいつとなら練習がてら何度も戦ったけどな」


「それで、結果は?」


「ハァ?????俺があんなのに負けるわけねぇだろ!!!ふざけんなよ!!!1000勝0敗くらいじゃねぇの!!!」


「それで、お前幹部じゃねぇのかよ???」


「悪いな、俺は出世とかに興味ないんだわ!!!」


「マジかよ・・・・・・」


バンプはつきつけられた現実にため息をついた・・・のも束の間、スグに笑い始めた。


「ということは世の中には、こんな強いやつがもっともっといるってことだ!!!上等だよ!!!強くなってやるよ!!!そうじゃなきゃ世界一の剣豪になんてなれねぇよな。あんた名前なんていうんだ?」


「俺か?コンロって言うんだ。お前は?」


「俺はバンプだ!!!」


「そうか。一戦やるか?」


「俺もちょうどそう言おうとしてたところだ!!」


バンプが自分の剣に手を伸ばそうとしたその時だった。


グルルルルルルルルルルルルルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!


大男の声にも引けを取らない、いやそれ以上の大きなおたけびが聞こえた。


「悪いなバンプ。先にコイツをどうかしないといけないみたいだ」


バンプたちの前に洞窟の天井いっぱいいっぱいのサイズの生き物が現れた。


「なっ?なんだこいつは???」


「ははは!!!驚いたろ???これがチッキ様のペット、サーティちゃんだ」


「オイオイオイオイオイオイ!!!ペットってサイズを超えてねぇか?」


そう、その大きさは先ほどのケトルが可愛く見えてしまうほどで、縦にも横にも大きくケトルの数倍では収まらないほどのサイズだった。


「ペットっていうか・・・」


「化け物でござるな」


バンプの言葉をロボ人が奪うようにして言った。


「しかも、こいつの鱗・・・これって竜じゃないのか?」


「博識だなぁ〜マジシャン!!!そうだよ、こいつは竜」


「しかも、なんだよこれ・・・」


バンプが言いたいことはその場にいた全員が思っていたことだった。この竜、なんと首がいくつもあるのである。それもキングギドラなどのレベルではない!!!ゆうに10本は超えているのである。


「こんな化け物見たことねぇだろぉ!!!こいつは30の首を持つ世にも珍しい竜なんだよ!」


「ありえねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!竜ってだけでもラスボスレベルだぞ!!!!それが30の首を持っているだと・・・・・・・」


バンプは何かに気がついた。


「30・・・・・の頭・・・・・の竜・・・・・、30頭竜!!!!!!!!!いやいやいやいやいやいや!!!!!お前がフラグ回収するんかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいいいいいいいい!!!ロボ人じゃなくて敵側が回収してくるの?????そんな回収の仕方あるんだ。」


バンプは一人で突っ込んでいた。


「バンプ殿、何を一人でブツブツと喋っておられるのですか???」


「いや、ロボ人気にしないでくれ。これは俺だけの問題だから」


そんな2人のやり取りを邪魔するかのように30頭竜のサーティが2人に向かって突進してきた。


ボゴォォォォォォォォォォォォン!!!!!


サーティの突進は2人に避けられサーティは洞窟の壁に激突した。


「これでくたばってくれれば楽なんだけど・・・」


「それは、ありえないでござろう」


もちろん、その通りである。サーティは屁でもなかったかのようにすぐさま振り向いて、再度2人へ突進してきた。


ボゴォォォォォォォォォォォォン!!!!!


またもやサーティの突進は2人に避けられサーティは洞窟の壁に激突した。


「オイオイオイオイ!!!キリがねぇぞ!!!!!」


「動けない子供たちのことを意識しながら戦うというのはとても難しいでござるな」


「ハハハハハハハハハハハ!!!!!面白れぇ!!!!!おいバンプ!!!!そんなんじゃ、俺と戦うどころの話じゃねぇぞぉ〜!!!!」


すると、そんなコンロの声にサーティが反応し今度はコンロの方へと突進していった。


「オイオイオイオイ、あの竜は敵味方見境ねぇのかよ!!!」


バンプは半ば呆れて言った。すごい勢いで突進するサーティ。しかしコンロは避ける気配を見せない。そして、サーティがコンロの目の前まで近づいた時、


「オイ!!!お前、俺に喧嘩売るのか???」


コンロがサーティを一睨みした瞬間、サーティの足はピタリと止まった。そして我に返ったかのように落ち着きを取り戻し、自分のしてしまったことを後悔するかのようにサーティは震え始めた。


「おぉ〜、よしよしよしよしよし。そんなに怖がらなくていいんだぞぉ〜。何もしなければ俺も何もしないんだからなぁ〜」


「マジかよ!!!あの竜が怯えてんじゃねぇか!!」


「それほどの強者ということでござろう」


「悪かったな邪魔しちまって!!!こいつ寝起きが悪くてさ。まぁこの後、村人たちを食べていただくわけだから、それまでの運動がてら付き合ってやってくれや」


「いいのか?俺たちが勝っちまったら、お前、チッキとかいうやつに怒られるんじゃねぇのか?」


「その時はその時だ!!!もし、お前たちがサーティに勝ったら考えるよ」


「ちくしょう、完全に俺たちのことをなめてやがる。ただ、事実だ。今の俺たちじゃあいつらに勝てるなんて100%の保証はない!!」


「ではバンプ殿こうしましょう」


「なんだ?」


「拙者があの竜をひとりで倒すので、その間子供たちの安全を守っておいてください。そして、その後交代して、今度はバンプ殿があのコンロという男を倒してください。拙者が子供たちの面倒を見るので・・・」


「あれっ?聞いてましたかロボ人さん???今の俺たちじゃあいつらに勝てるなんて100%の保証はないってところを・・・。でも、確かにそれぞれがタイマンで勝負すれば、無駄な体力を消耗せずに少しは勝てるチャンスも上がるかもしれねぇな。面白れぇこと考えるじゃねぇか!!!!!よし、のった!!!」


「決まりですね。その作戦でいきましょう!!!」


「だけど、ロボ人大丈夫かよ?あんな化け物相手に勝算はあるのか???」


「まぁ、どうにかなるでしょう」


「他人事だなぁ〜」


「いえ、バンプさん他人事ではございません、ロボ事です!!」


そう言うとロボ人はひとりでサーティの方へと歩を進めた。


「オイオイオイオイオイオイ!!!!!ひとりでサーティを相手するつもりか???根性あるねぁ〜、でもさっきまでのサーティと違い、もう目がしっかり覚めているから気を付けろよぉ〜。こいつ意外と頭いいからなぁ〜。なんせ頭が30個もあるんだから」


コンロのドラゴンジョークに動じることもなくロボ人は進む。


「じゃあ、あのロボット君が遊んでくれるみたいだから一緒に遊んで来い!!!」


コンロの言葉に反応するようにサーティはロボとへと突進していった。


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!


地響きのような音を立てながらサーティはロボ人の方へ向かっていく。


「さっきと何も変わっておらぬではないか!!!」


そう言うとロボ人は過去2回同様、サーティの突進をジャンプして上手く避けた。


「ガルルルルァァァァァァ!!!」


ジャンプ中、身動きの取れないロボ人へ向け、ひとつの頭がヘッドバットを繰り出した。


「何!!!!!!!」


ボガァァァァァァァァァァァァァァンンンン!!!!!


ロボ人はサーティのヘッドバットをモロにくらい、洞窟の壁にめり込むほど叩きつけられた。そこへ容赦なく畳み掛けるようにサーティは突進した。


ドギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンンンンンンンン!!!!!!


ロボ人は避ける間もなく、壁にめり込んだままサーティの突進を食らった。


「ロボ人ーーーーーーーー!!!!!」


バンプの心配する声に反応したのはサーティの方だった。バンプの方を向き今度はバンプの方へ突進をはじめ・・・・・・ることができなかった。なぜなら、サーティが全く動かないからである。正確に言えば足はバタバタと力強く動いている。しかし、なんだか宙に浮いているのである。実はロボ人がサーティの尻尾を掴み、その巨体を持ち上げていたのだ。


「竜よ、油断はいかんぞ!!!!!どおおおおおおおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


ロボ人がお返しと言わんばかりにサーティを投げ飛ばした。


ボガァァァァァァァァァァァァァァンンンン!!!!!


サーティの巨体が壁に激突した。


「やるねぇ〜!!ロボット!!!」


コンロが嬉しそうに言った。


「やるじゃねぇか!!!ロボ人!!!」


バンプも嬉しそうに言った。


しかし、サーティはスグに起き上がった。そして今度はゆっくりとロボ人の方へと向かっていった。


「落ち着いている状態の方が怖さがあって良いでござるよ」


対戦相手への敬意からか、サーティを褒めたロボ人。そんな気持ちなど無視するかのようにサーティは全ての頭をまるで腕かのように振り回しながらロボ人へラッシュを仕掛けた。


サッ!パシッ!シュッ!パシッ!パスッ!サッ!パシッ!シュッ!パシッ!パスッ!サッ!パシッ!シュッ!パシッ!パスッ!サッ!パシッ!シュッ!パシッ!パスッ!


20頭分の攻撃はさばいたり避けたりできたロボ人だったが、21頭目の攻撃あたりから徐々に攻撃を受け始め30頭目の攻撃はもろに食らってしまった。


ズバギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンンンンンンンンンンンン!!!!!!


さっきとは明らかに違う大きさの音を立ててロボ人は洞窟の壁に叩きつけられた。


「痛つつつつつつつつつつ・・・」


よろよろしながら立ち上がったロボ人を見て、サーティはにんまりとした。ロボ人の頭の右上の方からはダメージを物語るかのように、電線が飛び出していた。

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