第17話 3人寄れば文殊をも超える知恵
「やいやいやいやいやい!!!お前はそんな大きな体をしているのに声でしか攻撃できないのかよ?」
キツネが大男を挑発する。
「なんだ貴様ドン!!!おいらは力にも自信があるのだドン!!!」
そう言うと大男は右足でケリを放った。
ビュワッ!!!
なんとこれが早い。大男から繰り出されたとは思えないスピードだったのである。とはいえバンプがボードとの戦いで見せたようなスピードというわけではなく、一般的な考えで想像するよりも早いといった程度。キツネも驚きながらギリギリのところでかわすことができたのである。
「あっぶねぇ〜!!!想像以上にいい動きしやがる!!!」
「キツネ!!!あんた調子乗ってんじゃないわよ!!!3人で力を合わせるんでしょ???」
「わかってるよ!!!ちょっとからかっただけじゃねぇか!!!」
「キツネ!!!マキ!!!余計な話してる場合じゃないぞ!!!」
「ヘイヘイヘイヘイ!!!わかってらぁ!!!」
そう言うと最初にキツネが大男へと切り込んだ。
気まぐれな引っ掻き《マイペースクロウ》
キツネの爪が長く伸びオーラをまとった。
「ニャアだこの野郎!!!!!」
それはバンプにとって、キツネが見せた初めての攻撃的な魔法であった。
「そんなもの効かないだドン!!!」
そう言うと大男は避けることをせず、そのままキツネの爪を体で受けた。
シャーーーーーーン!!!
それは肉を爪が引っ掻いたとは思えないような音だった。
「ドンドンドン!!!オイラの体に傷をつけた事は褒めてやるドン!!!そこらへんの刀では全く歯が立たないほどの自慢の皮膚だったのに、まさか切り傷をつけるとは立派だドン!!!」
そう言いながら大男の胸部のあたりには血が少し出ている程度の引っかき傷しかついていなかった。
「どうしたドン!!!これで終わりじゃないドンね!!!もっともっと遊ぼうドン!!!」
「くぅぅぅぅ頑丈なヤツだなぁ〜!!!じゃあ、そろそろお前たちいいか???」
『オウ!!!』
キツネの呼びかけに、ネギマとマキが答えた!!!
「いくぞーーー!!!フォーメーションデルタァァァァァァ!!!!!」
『フォーメーションデルタァァァァァァ!!!!!』
そう言うと3人は三角形の形に広がり大男を囲った。
「何だドン!!!今度は3人一緒に遊んでくれるドンか?」
「残念だったな!!!お遊びはここまでだ!!!なんて子供に言われる気分はどうだ大男???」
「凄く不快だドン!!!虫唾が走るドン!!!でも、お前らにはさっきの傷くらいが限界だドン!!!あんな攻撃では一生かかってもオイラを倒せないドン!!!」
「ヘヘ〜ン言ってな!!!俺ら3人でお前を倒して村のみんなを救うんだ!!!こんな通過点で時間をかけている場合じゃないんだよ!!!」
「全然余裕だドンが念には念を入れるドン!!!ドォォォォォォォォォォォォォォォン!!!」
大男は自分の周りを囲む子供達へぐるりとその場を一周しながら、声の衝撃波を放った。しかし、この動作によって大男に死角が生まれたのである。その瞬間にキツネは洞窟の天井に届きそうなほど高くジャンプして魔法を放った。
陽動する
その声に直ぐさま振り向き、キツネへ向けて声の衝撃波を浴びせようとした大男。しかし、その目に飛び込んできたのはキツネではなく"ネコジャラシ"だった。
「にゃ〜ん!!!」
大男は不思議な力に感化され口調や動きが猫のようになった。
「これは誘惑の魔法だ!!!この
「にゃ〜ん!!にゃ〜ん!!にゃ〜ん!!」
大男は見事なほどに猫になってしまった。これでは自慢の大声も上手く出せない。しかし、それは大男の声を塞いだに過ぎなかった。そう!大男というくらいである。力には自信があるのだ。
「にゃ〜ん!!にゃ〜ん!!にゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!」
なんとその馬鹿力でネコジャラシを引きちぎってしまったのである。これでは効力なんてないも同然。
「お前、オイラを舐めすぎだドンにゃ〜ん!!!」
「ハハッ!まだ猫の部分が残っているじゃねぇか!!!でも、こうなることもお見通しさ!!!これはただの時間稼ぎなんだからな!!!」
「なに強がりを言っているんだドン!!!」
「強がりかどうかは後ろを見てみればわかるさ!!!」
「なんだとだドン!!!」
キツネのその言葉につられて大男は後ろを振り向いた。するとそこには洞窟を照らすようなほのかな明かりがあったのである。大男は目を凝らして見た。そして理解した。その明かりはなんとマキの魔法だったのである。
「私は魔法使いとしてまだまだ未熟だから、こんな小さな炎魔法にも時間が掛かってしまうけれど、キツネ!!!あんたのおかげで上手く詠唱することができたわ!!!」
「へへ〜ん!!!気を抜くなよマキ!!!」
「何をするかと思えば、そんな小さな火の玉でオイラを倒せるとでも思っているのかドン!甘いドン!!!」
「甘いかどうかはやってみなくちゃわからないでしょ!!!行くわよ!!!ファイアーボール!!!」
マキは渾身のファイアーボールを放った。しかし、それは心もとないほどに小さかった。例えるならば卓球の球くらいである。しかも、それは大男から大きく外れるように飛んで行ったのだった。
「ドンドンドン!!!どこに飛ばしているドン!!!ただでさえ威力がなさそうな魔法を当てることさえできないのなら話にならないドン!!!」
確かに大男の言う通りである。しかし、そんな言葉にマキはクスリとした。
「あんた、な〜〜〜〜〜〜〜〜〜んもわかってないのね!!!見せてやりなさいよネギマ!!!」
そう、マキは初めからファイアーボールを大男へなど、向けていなかったのである。マキが向けたのはネギマにだったのである。
「ナイスパスだぜマキ!!!うおりゃあああああああ!!!!」
そう言うとネギマは、ファイアーボールを球に見立てて今にも打とうと言わんばかりの構えを見せた。
「そんなことをしても無駄だドン!!!お前がいくら力強く打ってきたところでオイラの力の方が圧倒的に上なんだドン!!!お前たちの連携はオイラが簡単に受け止めてしまうんだドン!!!」
そう言うと大男は両手を体の前へ出し、キャッチャーのようなポーズをとった。
「行くぞぉぉぉぉぉ!!!大男ぉぉぉぉぉ!!!」
そう言うとネギマは飛んできたマキのファイアーボールをクンクンニルで爽快にスイングした。球は大男を目掛けて飛んでくる!!!そして意外と早い!!!そして目を凝らして見て分かったことがある。
「なんだドン!!!これボールじゃないドン!!!!!」
そう。それはファイアーボールではなく、ファイアーボールによって炎に包まれたクンクンニルだったのである。
「なんて小賢しいことをするんだドン!!!危うく両手でボールをキャッチするような感覚で取るところだったドン!!!さすがにコレを食らったらケガをしてしまっていたドン!!!だけど・・・・・」
そう、なんと炎をまとったクンクンニルは大男の右上の方へと飛んで行ったのである。
「ドンドンドン!!!惜しかったドンねぇ〜!!!炎をまとったヤリを投げるという発想は良かったドン!!!でも所詮は子供!!!力が足りなくてコントロールが定まってないドン!!!大暴投だドン!!!残念でしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁだドン!!!」
確かに大男の言う通りである。
しかし、そんな言葉にネギマはクスリとした。そして一言言った。
「決めろよ!!!!キツネーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
そう、ネギマは初めからクンクンニルを大男へなど、向けていなかったのである。向けたのはキツネにだったのである。
「ナイスパスだぜネギマ!!!」
「ドンドンドン!!!お前にその武器を投げてどうするんだドン!!!お前が燃えて終わりだドン!!!」
「燃えねぇよ!!!いくぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
猫の手も借りたい《レンタルパッド》
魔法を唱えたキツネは全身が猫の手のようになった。もちろんあの肉球もしっかり付いている。
「さぁここで問題です!今俺に向かって飛んできている炎をまとったヤリをこの肉球で跳ね返すとどうなるでしょう???ハイ時間切れです!!!答えは、威力とスピードが何倍にもなって飛んでいくでした!!!」
「わ、わ、わ、やめるんだドン!!!そんなことしても何にもならないだドン!!!悪かったドン!!!村の人たちに迷惑かけたこと謝るドン!!!許してくれドン!!!」
「もう遅ぇーんだよっっっっっっっっ!!!」
プニョニョニョポーーーーン!!!!
キツネの肉球によって跳ね返された炎をまとったクンクンニルは今までの何倍ものスピードで大男へと向かっていった。しかもその狙いは、さっきキツネが引っ掻いた胸の傷口で会った。
ズギャガガガガーーーーン!!!
大男の胸の傷口へダイレクトにクンクンニルは突き刺さった!その痛み、衝撃に、大男は大声を出した。
「ボギャーーーーーーーーーーーー!!!ギャーーーーーーーーーーーー!!!」
大男はとてつもない大声を出して倒れた。子供達は3人で力を合わせて大男に買ったのである。
「ヨッシャーーーーーーーー!!!」
キツネは喜んだ。
「ウォォォォォォォォオオオ!!!」
ネギマは喜んだ。
「イェェェェェェェェェェイ!!!」
マキは喜んだ。
そして3人は満面の笑みでハイタッチをした。
パーーーーーーーン★
とても気持ちのいい音が洞窟内に響いた。
「ったく、ヒヤヒヤしたぞお前たち」
いつでも助けに行けるように臨戦態勢を取っていたバンプが3人に声を掛けた。
「ヘヘン!!!マジシャンの兄ちゃん、俺たち凄かっただろ?」
キツネが自信満々にバンプに聞いた。
「大丈夫だったから良かったものの!下手したら命を落としてたぞ!!!心配かけやがって!!!でも、まぁ3人のチームワークが俺の想像を超えていたのには驚かされたよ。よくやった!!!」
「ヘッヘッヘッ!!」
ネギマは嬉しそうに笑った。
「フフフ!!」
マキも嬉しそうに笑った。
と、同時に3人ともその場に膝から崩れ落ちた。
「ダメだぁ〜!!!集中のしすぎと緊張と体力の消耗で俺もう動けねぇよ〜!!!」
「俺もだ!!!」
「私も!!!」
キツネもネギマもマキも今の戦いで全ての力を使い切ったようだった。
「おいおいおいおい、俺はもう誰も抱き抱えたりおんぶしたりできねぇぞ!!!」
バンプが保険を張るかのように言った。
「おんぶしてよぉ〜!!!」
キツネがここぞとばかりにバンプに甘えた。
「甘えるんじゃなーーーーーい!!!」
バンプがコミカルに言い返した。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!!
突然洞窟が悲鳴を上げているかのように揺れはじめた。
「なんだよ一体??」
バンプがもう少し落ち着く時間をくれよと言いたげな雰囲気で言った。
「これって、もしかしてさっきの大男の最後の大声のせいなんじゃ・・・?」
そう、マキの予想は当たっていた。キツネが最後の一撃を大男に与えた時に上げた大男の大声が、あまりにも大き過ぎたために、このフロア全体に衝撃波を与えた形になっていたのだ。結果、天井からは石や岩が落ちはじめ、床にはヒビが入った。そして、そのまま床は崩れ落ちバンプ一行は下の階へと落ちていった。
アアアアアアアアアアアアレレレレレレレレレレレレェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!
バンプたちは深い闇に飲まれていった。
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