第16話 子供だからって舐めんなよ
モカをおぶったバンプたち一行は、特にモンスターがいるわけでもない"ペディグリーの洞窟"を1階また1階と深層部へと歩を進めていた。
しかし何回か下の階に差し掛かった時に事件は起きる!なんと道が5つに分かれていたのである。
「ここに来て分かれ道か。しかも5つも。間違えたからって引き返しても、次も間違えて・・・なんてしてたら時間がどんどんなくなってしまうぞ!!」
バンプが不安に感じていると、キツネが洞窟の地面に何かを発見した。
「これ見てくれよ!!!これって何かを引きずった後じゃないか?」
「どれどれ・・・」
バンプがその言葉を確認するように地面を見ると、確かに何かを引きずった跡のようなものが残っていた。
「これは何でござる???」
ロボ人も気になる。
「これってもしかしてマーキングみたいなものなんじゃ・・・」
マキが自分の考えをこぼした。
「誰かが助けに来てくれた時に自分たちの居場所がわかるようにつけたってことか?」
キツネがマキに質問した。
「そうね。消された跡がないところを見ると連れて行った犯人にはバレていないんじゃないかしら?」
「罠って可能性もあるんじゃないか?」
バンプが子供達の希望に満ちた可能性に水を差した。
「確かに。でも罠だとすればこの先に敵がいるってことだろ?罠じゃなければ、この先に人質がいるってことだから、人質のそばにはやっぱり誘拐犯がいるんじゃないか?結局どっちにしたって敵がいるってことなんだから、ただの道案内程度に考えるくらいでいいのかもな!」
キツネがやけに冷静な判断を下した。
「・・・ん?・・待てよ?これって・・・」
のも束の間で。キツネがすぐに何かに気づいた。
「この後を見てくれ!!」
再び、地面にツイタマーキングを指差すキツネ。
「もう、今度はなんなのよ〜?」
少し切れ気味のマキも含め、みんな再びそのマーキングを覗き込んだ。
「これだよこれ!!!この地面のエグれ方!!!よぉ〜く見ると3つの線が1つになっているんだよ」
確かに線の跡は1本のように見えながらも、その両サイドに小さな線が1本ずつあり、全部で大小3本の線が1つになったものだったのだ。
「これって"ネギマ"の武器じゃないか?」
「本当だ!これきっと"ネギマ"の武器を引きずった跡よ!!」
「"ネギマ"って?」
当たり前のように納得し合うキツネとマキにどストレートにごもっともな疑問を投げかけるバンプ。
「私たちの仲間です。キツネとネギマと私は3人でいつも遊んでいたんです。その"ネギマ"って子が使っている武器にこの地面の跡がそっくりなんです。多分、ネギマは私たちが必ず助けに来ると思って自分の武器を引きずるようにしてマーキングしたんだと思います」
「ちょっと待てよ!ネギマって子もお前たちと同じくらいの年齢だろ?」
「はい!そうです!!」
「武器なんて持っているのかよ?」
「はい!私たち3人は何かあった時には自分たちの命は自分たちで守ろうと普段から3人で戦う訓練を行っているんです。もちろん、村の大人たちに内緒でですよ」
「そうだよな!!!ネギマのことをすっかり忘れてたぜ!!!あいつがいればなんとかなるかもしれないぜ!!!」
「私の予想だと、ネギマは最後まで抵抗したんじゃないかしら。それで最後に連れて行かれたとか?」
「なるほど、だからネギマたちの後に戻ってくるヤツらの仲間もいなくて、このマーキングに気付かれることもなかったってわけか?」
「だとしたら、このマーキングを辿っていけば、まずはネギマに会うことができるかもしれねぇってことだよな?」
「そうなるな」
「なんだかワクワクしてきたでござるな」
ロボ人のテンションが上がった。
テレレ♪テッテッテッテッテ〜♪♪♪
「そうと決まれば急ごうぜ!!!まずはネギマの救出だ!!!みんな急ごうぜ!!!時間がないことには変わりがねぇんだからさ!!!」
そう言うとキツネが走り出した。
「ちょっと待ちなさいよ!!!」
マキもキツネを追いかけるように走り出した。
「待つでござる!!!危ないでござるよ!!!」
キツネとマキを追いかけるようにロボ人も走り出した。
「いや、俺こいつおぶってるから走れねぇんだけどぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
そして、バンプはゆっくりと歩き出した。
モカをおぶったバンプたち一行は再び、地面のマーキングを頼りに洞窟を奥へ奥へと進んでいった。
「こうやってみると、さっきの辺りから急に分かれ道が増えていく作りになっていたんだな」
「ネギマ、グッジョブだぜ!!!」
5本の分かれ道などカワイイものと思うほどに、洞窟の先には7つ、8つ、9つ、それ以上の分かれ道がバンプたちを待っていたのだが、それらを全く気にすることなくマーキングを頼りにバンプたちは急ぐことができた。
そして・・・
「ネギマーーーーー!!!!」
キツネが叫んだその先には、大男に片手で抱えられながら洞窟の奥へと連れ去られていくネギマの姿があった。
「キツネーーー!!!」
「ネギマーーー!!!」
「マキーーー!!!」
「キツネーーー!!!」
「ネギマーーー!!!」
「マキーーー!!!」
3人はしりとりを楽し・・・ではなくて、お互いの名前を呼び合い再会と無事の確認を大いに喜んだ。もちろん、ネギマを抱えている大男がそれに気づかないわけもなく、声のするキツネとマキの方を振り返った。
「お前たちは、なんだドン???」
「悪いな、お前も仕事なんだろうが、俺たちはその子の仲間なんだ返してもらおうか?」
バンプが大男に返答する。
「それはできないドン!!!オイラはボスの所まで人質を届けるという大役を任されているんだドン!!!守れないとボスに怒られてしまうんだドン!!!」
「テリャーーーーーーーーーーー!!!!」
バンプと大男の会話を遮るようにキツネが大男に向かって何かを投げた。そしてそれは見事に大男の目に命中した。
「どうだぁ!!!水の綺麗なトツペ村で育ったわさびの不良品を使って作られた、わさびエキスマシマシ特製泥団子!!!効くだろう!!!」
「痛いドン!!!痛いドン!!!染みるドン!!!」
大男は抱えていたネギマをスグに降ろし、両手で目をゴシゴシこすり始めた。大男の手から離れたネギマは一目散にバンプたちの元へと駆け寄った。
「キツネーーー!!!」
「ネギマーーー!!!」
「マキーーー!!!」
3人は再度しりとりを楽し・・・ではなくて、お互いの名前を呼び合い喜んだ。ネギマの手にはやはり3又に分かれたヤリがあった。
「元気だったか?」
「当たり前よ!!!お前たちも元気でよかったよ」
「あんたのそのクンクンニルのおかげよ」
「何がだ???」
「またまたとぼけちゃって。あんたがそのクンクンニルで地面に線を描くようにマーキングしてくれたから、私たちはそれを辿ってここまで着けたのよ」
「・・・???」
ネギマは頭にハテナを10個くらい並べた。そして、5秒が経過し。
「・・・だろ!!!俺の作戦大成功だったな!!!」
(絶対たまたまだ!!!)
(絶対たまたまだ!!!)
(絶対たまたまだ!!!)
(絶対たまたまだ!!!)
(絶対たまたまでござる!!!)
その場にいた全員がネギマの作戦が後付けであることを確信した。
「お前たちよくもやってくれたなドン!!!」
喜んでいるのも束の間、大男はバンプたちの元へとやってきた。
「お前らもう許さないドン!!!全員粉々にして持ち運びやすいように袋に詰めてサンタさんスタイルでボスの所まで連れて行くドン!!!」
「おっとりしているのかと思えばエゲツねぇこと言い出すなコイツ。そんなギャップ萌えは誰も望んでないわ!!!」
(とはいえ参ったなぁ、この人数を守りながら、しかもモカの面倒も見ながらコイツを相手にするのか?できるか?)
バンプの不安をよそに、堂々とした雰囲気を醸しながらキツネとネギマとマキが横一列に並び戦闘態勢を取っていた。
「バカ!!!お前たち子供が敵う相手じゃないぞ!!!」
「マジシャンの兄ちゃん、まぁ見てなって!!!俺たち、一人一人ではたいしたことないけれど、3人力を合わせればこんなヤツチョチョイのチョイよ!!!」
「そんな簡単なわけないだろうが!!!」
「まぁまぁバンプ殿、ここは子供達の好きにさせてみようではござらんか?」
「ロボ人お前まで何呑気なこと言ってんだよ!!!」
「バンプ殿ご安心んくださいませ。何かあった時は拙者が助けに入るでござる」
「相手の力量もまだわかっていないというのに、そんな余裕ないかもしれないんだぞ!!!」
「マジシャンの兄ちゃんもロボットの兄ちゃんも俺たちを舐めすぎだよ。まぁ見てなって!!!いくぞみんな!!!俺たちのコンビネーション見せてやろうぜ!!!」
『オウ!!!』
子供達3人は大男へと向かっていった!!!
「キツネ。マキ聞いてくれ!実は俺はあの大男と村で戦っている」
「マジかよネギマ?」
「あぁ、だけどやっぱり一人では歯が立たなくて負けてしまった。でも、その時の戦闘スタイルなどは頭に入っているから、今からそれを教えようと思う」
「もったいぶらずに早く教えなさいよ!!!」
「あの大男の武器は声なんだ!!!」
「はっ?声?」
「そう、特殊な周波数の声で相手を行動不能にするんだ。そして動けなくなった相手を自慢の腕っぷしでドーン!ヤツの声に耳をかしちゃダメだ!だからこれを持っていろ!!」
「これは?」
「俺がただノコノコと誘拐されただけと思おうなよ。俺のハンカチを丸めて作った耳栓だ!!!これがあれば大丈夫なはず」
「サンキューなネギマ!!!」
そう言うとキツネはネギマにもらった手作りの耳栓を耳に入れた。そしてマキも同じように耳栓を耳に入れた。
「これで準備は万端だ!!!俺一人じゃ勝てなかったけれど、この3人のコンビネーションがあれば絶対に勝てる相手だと思う。みんなで力を合わせてあいつをギャフンと言わせようぜ!!!」
「ネギマ〜、あんたギャフンなんてお父さんお母さんみたいなこと言うんだから、ちょっと笑わせないでよね」
「そうだぞネギマ!!!ギャフンじゃなくてぶっ倒しゃいいんだよ!!!いくぞみんな!!!」
3人は真っ直ぐ大男の方へと向かっていった。
「子供が3人でオイラを倒そうっていうのかドン?ナメるなドン!!!ナメるなドォォォォォォォォォォォォォォォン!!!」
大男の大声は凄まじい衝撃波のような勢いで3人に飛んできた!!!
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!おいおいおいおい!!!!!耳に入れなきゃいいんじゃなかったのかよ?????」
「いや、俺が戦った時はそうだったんだけど。あいつ、まだ本気じゃなかったってことか!!!」
「当たり前だドン!!!子供相手に本気になるなんて大人気ないんだドン!!!オイラは大人だからそこんとこわきまえているんだドン!!!ホレホレ、もっと行くドォォォォォォォォォォォォォォォン!!!ドォォォォォォォォォォォォォォォン!!!」
『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』
キツネとネギマとマキは大男の衝撃波をこらえるので必死だった。
「ヤバイ!!!なんだか衝撃波の力にやられて頭までクラクラしてきた」
「大丈夫だキツネ!!!俺の耳栓があるんだから、ヤツの声が聞こえるわけはない!!!」
「そうだよなネギマ!!!お前がくれた耳栓だもんな」
「そうだぜキツネ!!!このネギマ様特製の耳栓を信じろって!!!」
「そうだよな???お前が作った耳栓だもんな。・・・耳栓だもんな。・・・耳栓。・・・・・・・・って、なんで耳栓してんのにお前らの声がこんなにハッキリ聞こえるわけ???」
「あら、ほんと!!!」
マキもさすがに気がつかなかったらしい。
「確かに、何故だ?俺はしっかり自分のハンカチで作ったんだぞ!!!あの通気性抜群のハンカチで」
「それだろうが原因は!!!!!なんで、よりにもよって通気性抜群のハンカチで作っちゃうの???通気性抜群ってことは空気を上手く通すってことだろ!!!それじゃあ、聞こえちゃうじゃ〜〜〜ん!!!」
「すまーーーーーーーーーん!!!俺やっちゃったわ!!!」
「アホかーーーーーーー!!!!!」
「アホだーーーーーーー!!!!!」
「でも、それでも少しはあいつの声を軽減できているんだと思う。とはいえ、このまま距離も縮められないままズルズルいくと俺たちの命も危なくなってくるぞ!!!」
「どうする!!!」
「まずはあの声をどうかしないといけないわね」
マキが突破口となりそうな言葉を発した。
「あの声をどうかする。・・・!!!良い方法を思いついたぜ!!!ちょっとみんな俺の近くに来てくれ!!!」
『OK!!!』
ネギマとマキはキツネに近づいた。
「いいか?ごにょごにょごにょごにょごにょごにょごにょごにょごにょごにょで、ごにょごにょごにょごにょごにょごにょごにょごにょごにょごにょというわけだ。」
「なるほどね!!!それならいけそうね!!!あんたやるじゃん!!!」
「確かに、キツネのその案なら俺たちのコンビネーションを最大限に活かしてあの大男をギャフン・・・じゃなかった、ぶっ倒せると思う!!!」
「決まりだな!!!よぉ〜し!!!それじゃ、俺たちのチームワークをあの田舎ジャイアンに見せつけてやろうぜ!!!」
『よっしゃ!!!』
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