第15話 モカは意外と重てぇ〜

「はぁ〜、こいつ意外と重てぇ〜」


バンプは深い眠りについたモカをおぶったままトツペ村に着いたのだった。


「何だか村の中から煙がたくさん出ているでござる」


「!!!」


ロボ人の言葉と実際にその目で見た景色に慌て、キツネは村へと駆け出した。


「おい!ちょっと待てよ!!!ちくしょう!!!俺はひとり担いでるっていうのに」


バンプとロボ人もキツネの後を追いかけるようにしてトツペ村の中へと入っていった。


「はぁはぁはぁ、やっと村に着いた・・・・」


息も切れ切れにそう零したバンプが村に入って目にしたものは、膝から崩れ落ちたキツネの姿だった。


「どうした。・・・って言うまでもないか?この惨状じゃあな」


目の前に広がっていたのは破壊された家々だった。村は壊滅状態。人の声、気配、全てを感じ取ることができない状態だった。


「ちくしょう!!!みんな〜、みんな〜。うぐっ、うぐっ」


泣き止まないキツネの肩にバンプはそっと手を置いた。


「まだみんなやられたと決め付けるのは早いんじゃないか?もしかしたら、まだ生きてるヤツがいるかもしれないぜ!!!手伝ってやるから、一緒に探してみようぜ!!!」


ゴシゴシゴシ


キツネは自分の腕で、自分の涙を拭った。


「そうだよな。希望を捨てちゃいけないよな!!!」


バンプの言葉に励まされたキツネはどこかにまだ人がいないか、村中を探し回った。すると・・・。


「キツネ???」


誰かがキツネを読んだ。


「マキ!!!」


その女の子はキツネの知り合いだった。


「マキ!無事だったのか?」


「うん、あんたこそ、どこ行ってたのよ!!!」


「俺は助けを呼びに近くの村まで向かってたんだ。そうしたら、ちょうど魔法使い一行に出会って、しかも助けてもらえるように、約束までこじつけたんだぜ!!」


「そうなんだ。村のためにありがとう。でも、もしかしたらもう遅いかも・・・」


「おい!!!それどういう意味だよ?俺が逃げた後、街はどうなったんだよ??もしかして、みんなもうやられちゃったのか?」


「ううん。正確にはまだやられていないわ!!!」


「どういうことだ?」


「みんなさらわれたの!!!」


「奴らにか?」


「そう。なんでもデスク軍幹部のチッキが飼っている1番可愛がっているペットの餌にするとか何とか言って・・・」


「村人全員がか?」


「そうなの、私も見たわけではないから良く分からないんだけど、とてつもなく大きなペットらしいわ。奴らの話から聞こえてきたところによると、どうやら奴らはチッキの命令でそのペットの散歩を任されたらしいの。いつもはチッキが自分で散歩に連れて行っているみたいだけれど、どうやらデスク軍の方で予期せぬ事態が起きたらしくて、緊急会議が開かれることになったみたい。それでチッキは散歩に連れて行けなくなって、部下たちにお願いしたっていう流れみたい。そして、その散歩がてらペットの餌として目をつけられたのがこの村だったっていうわけ。どうやらそのペットの好物は「人」みたいなの。水も空気もキレイな村で育った人は最高に美味しいだろうと奴らは考えたみたいだわ。多分、チッキへの点数稼ぎもあるんじゃないかしら」


「なんて奴らだ!!!・・・待てよ。俺は村が襲われた時、まだ村の中にいたんだぞ!!!そんな凶暴な動物がいれば、覚えていてもおかしくないだろ?そんな動物いたか?」


「実はヤツらそのペットの散歩に手を焼いていたみたいで、ペットはここから少し離れたところにある"ペディグリーの洞窟"っていうところでお留守番させているみたいなの?」


「そんな凶暴なペットが大人しくお留守番なんてするものなのか?」


「多分、大人しくするんだと思う。そのペットを見守る役目のヤツが凄い実力者なんじゃないかな?」


「でも、そいつがいるなら別に洞窟で待っていなくても、一緒に村に来て直接村人たちを食べてしまえば良かったんじゃ・・・」


「そうね。でも、そのおかげで、まだみんなの命があるっていうのも事実よ」


「なんだか釈然としないが・・・。よし、そうと決まれば話は早い!!!今から、その"ペディグリーの洞窟"にみんなで向かおう!!!バンプたちも来てくれるよな?」


「いいとも〜!!!って言えるかぁ〜!!!こちとら、大魔法使いをおぶっとるんじゃい!!!急ぎはするけれども、そんなスピードは出せないぞ!!!」


「かまわない!!!ごめん!!!わがままばかり言って。でも、村のみんなは俺にとってかけがえのない存在なんだ。頼む!!!力を貸してくれ!!」


キツネはバンプにはじめて頭を下げた。


「しょうがねぇな!!!じゃあ、いっちょ人助けに行きますか!!!」


「どなたか存じませんが、見ず知らずの私たちのためにお力を貸していただきありがとうございます。このご恩は一生忘れません。しかし、相手は凶暴かつ強敵、何かあれば、あなた様がたの命を最優先に御考え下さい。危なくなったのなら逃げてくれても構いませんので・・・。どうかよろしくお願い致します」


「お嬢さん。俺たちは逃げも隠れもしないよ。相手がどれだけ凶暴だろうと、強敵だろうと絶対に倒してみせるさ。・・・最悪コイツがね」


そう言うとバンプはおぶっているモカのほっぺたをツンツンした。


「ハハハハハ。頼もしい上に冗談までおっしゃられるなんて。私たちを元気付けるために何から何までありがとうございます」


「ハハハハハ。(信じてもらえてね〜、そうだよな。コイツ見た目だけだとそんなに強そうに見えねぇもんな)」


バンプは改めて、自分が今背中に背負っている"モノ"が世間一般的には紙袋なのだと身にしみた。


(ってか、もしそうだとしたら紙袋を背中に担いで、"重てぇ〜、重てぇ〜"って言ってる俺ってめちゃくちゃヤバくね?)


「ねぇねぇ、俺って紙袋を背中に背負っているヤバい奴に見える」


「えぇ、ですが正確に言えば、紙袋を背中に背負っているヤバい奴に見えていた。ですね。あなたのジョークに私はとても癒されましたのですから。本当にありがとうございます」


マキはとても嬉しそうに言った。


(・・・もうそれでいいや)


バンプは諦めた。


「それはそうとロボ人はどうするんだ?お前は別に関係ないと言えば、関係ないと思うが・・・」


「何をおっしゃいます。もとはと言えば、拙者の方が先にキツネ殿と会話をしていたのでござる。拙者にも心があります。困っている人がいたら見捨てることができないという心がね」


「とは言っても、お前、戦えるのかよ?まぁ、ロボットってことはある程度の戦闘プログラムみたいなものが組み込まれていても変ではないと思うが・・・」


「そうでござる。拙者には誰にも負けない武器があるのでござる」


(うわぁ〜、やっぱりこいつ侍だよ!!!俺と武器ほぼカブちゃってるよ。俺は剣で、こいつは刀。ほぼ同じような武器だよぉ〜。これで、俺の存在が少し霞んじゃうよぉ〜!!!願わくば、30刀流とか、ありえないレベルの技を持っていて欲しいよ。そうすれば、多少はキャラ被りを解消できるのに・・・)


バンプは心の中で愚痴った。


「では、私が"ペディグリーの洞窟"まで、ご案内致します」


マキが少しだけ弾んだ声で言った。


「頼んだぞ!!!」


バンプがマキに優しく微笑みかけるように言った。


「はい!では、みなさん手を合わせて掛け声出しますよ!!!せーのっ!!負けてたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「負けてたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


バンプ以外、全員の声が揃った。


(・・・、何?このノリ・・・)


バンプは出遅れた。



そして、ペディグリーの洞窟の入り口へ到着。


「それなりに距離はあったが、何事もなく着いたでござる」


「そうですね。敵に出くわしたらどうしようとヒヤヒヤしていましたが、安心しました」


「ヘヘッ?マキはビビりすぎなんだよ!そんな奴が出てきたら、俺がヒョヒョイってやっつけてやるぜ!!!」


「まぁ!!!猫になるしか取り柄のない小僧が大きな口を叩く事。本当に敵が出てきたら一目散に逃げちゃうんじゃない?」


「テメェ!!!言わせておけば・・・」


「ふぉ〜い。ふぉ〜い」


疲れすぎて、"お〜い"が"ふぉ〜い"になったバンプが会話に割って入った。


「お前ら喧嘩はやめてくれ!!そんな時間があるなら、1分1秒でも早く村の人たちの元へ急ぐぞ!!!」


バンプは疲れすぎて、何歳も年下の子どもたちに"ド正論"をかましたのだった。


「ごめんなさい。急ぎましょう。時間がないわ!」


「お前が言うなよ!よし、行くか!!!」


「拙者も早く悪い奴らを退治したいでござる」


「ふぉ〜し、行くふぉ〜!!!」


バンプはもうヘロヘロになっていた。これで本当に敵と戦えるのであろうか?そんな不安はなんのその。一行はペディグリーの洞窟へと入っていった。


「はぁ〜。なんだかモカがどんどん重くなっている気がするんだよな」


バンプの弱音は風にさらわれた。

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