第14話 キャラ渋滞に巻き込まれました。~モカお前もか?~



「ありがとう紙袋」


タマは照れ臭そうにしながらモカに感謝の気持ちを伝えた。


「ヨシヨシ。素直なところがあるじゃないか!」


モカはタマの頭をナデナデをした。


「フンッ!!!」


タマはすぐにその手を振り払った!


「調子に乗るんじゃないわよ!私頭をなでて良いのはバンプ様だけなんだから!」


「ハハハ。ありがとうタマ」


「バンプ様〜」


ボードとの戦いの傷も癒え、バンプも完全回復していた。と、いうよりもモカの回復魔法の力が大きい。


「モカ、ありがとう。お前のおかげで故郷を守ることができたよ」


「気にするな!ただ、お前の熱意に答えただけだ!」


「ありがとう。普段は何を考えているのかわからない表情をしている割に、熱いハートを持っているんだな」


「本当にどんな偏見で俺を見ているんだ!俺にも人と同じように感情があるわ!っていうか人だわ!!!」


「悪い悪い!そんなつもりで言ったんじゃないんだ」


トップス大草原での戦いを終えて1日が過ぎたが、昨日とは打って変わって穏やかで温かい雰囲気が、カケタネ村を包んでいた。


「モカ様、バンプ、タマの命を救ってくれてありがとう。そして、この村を守ってくれてありがとう。昨日は二人とも疲れ切っていたから、そのままお休みいただきましたが、今日はみんなでおもてなしさせてください」


「ホォ〜、おもてなしとな?」


ワクワクしながらモカが言った。


「はい。最高の料理と最高のお酒と最高の音楽で2人に最高の時間を過ごしていただこうと思っております」


「こう見えて、俺は食にも酒にも音楽にもうるさいぞ!」


どうやらモカは違いのわかる男らしい。


「村の恩人に喜んでいただくため、私たちも力いっぱい盛り上げさせていただきます」


「では、楽しみにしていようかな」


そう言うとモカは嬉しそうに笑った。それを見た村長もまた、嬉しそうに笑った。


パクパク!パクパク!パクパク!パクパク!パクパク!


パクパク!パクパク!パクパク!パクパク!パクパク!


パクパク!パクパク!パクパク!パクパク!パクパク!


グビ!グビ!グビ!グビ!グビ!


グビ!グビ!グビ!グビ!グビ!


グビ!グビ!グビ!グビ!グビ!


ドンチャン♪ドンチャン♪ドンチャン♪ドンチャン♪ドンチャン♪


ドンチャン♪ドンチャン♪ドンチャン♪ドンチャン♪ドンチャン♪


ドンチャン♪ドンチャン♪ドンチャン♪ドンチャン♪ドンチャン♪


食事も酒も音楽も、モカが想像していた以上のものだった。みんなシワができそうなほどずっと笑顔で、楽しむ声は村全体を包み込んだ。そして盛大な宴は終わっていった。そして夜が明けた。


「なぁ、モカはこれからどうするんだ?」


モカの旅の支度が落ち着いた頃を見計らって、バンプが声を掛けた。


「そうだなぁ〜。引き続きCOFFEE BEANSを集める旅を続けるかな」


「俺もその旅に一緒に連れて行ってくれないか?っというか仲間にしてくれ!」


「OK!」


「あれっ?そんな簡単で良いの?」


「あぁ!」


「なんか色々と考えたりしなくて良いの?」


「ん?だって仲間になりたいんだろ?」


「そうだけど、あまりの即答に驚きを隠せないよ」


「お前良いやつだからな。別に断る理由もない!」


「俺がもし、モカを騙そうとしていたらどうするの?俺、マジシャンだぜ!人を騙すのは得意なんだが」


「その時は、ボッコボッコにするだけの話だ」


「・・・・・。あぁ〜そうだね」


バンプはこれ以上ないほどに納得した。


「じゃあ、そういうことでこれからよろしくな!」


バンプは右手を差し出した。


「あぁ、こちらこそな!」


モカも右手を差し出した。


ガシッ!


2人は固く握手を交わした。



村の入り口には、モカとバンプの旅立ちを見送ろうとたくさんの村人が集まってきていた。もちろん、タマもいた。


「バンプ様、行ってしまわれるのですね??」


「ごめんねタマ。本当はこの村にずっと入れたらいいんだけど、俺にも夢があってさ」


「知っています。世界一のマジシャンになられるんですよね?」


「そう!そして、剣豪にもね」


「バンプ様なら、必ずその2つの夢を叶えることができると思います!!」


「もし夢が叶ったら、もう一度カケタネ村でマジックショーをするから応援しててね」


「はい!」


「じゃあね!タマ」


そう言うとバンプはタマの頭をナデナデをした。


「はわわわわわわわわ!」


プシューーーーーーーーーーー!


顔から頭から湯気が昇るタマ。


「みなさんもお体に気をつけて。困ったことがあったらなんでも連絡してきてください。それでは行ってきます!」


バンプは子供のような無邪気な声で村人たちに別れの挨拶をした。


「いってらっしゃーーーい!」


村人たちは元気な声でバンプを見送った。


「モカ様もいってらっしゃーーーい」


村人たちは元気な声でモカを見送った。


2人は村人たちの声を背中に受けながら新しいスタートを切った。


「ハンカチ使うか?」


モカはバンプに聞いた。


「大丈夫!」


「いいから使え。顔がびしょびしょだぞ」


「ありがとう」


くしゃくしゃの声でバンプはモカに言った。



それから数日・・・。


2人は何げない会話を交わしながら、あてのない旅を続けていた。すると前からロードバイクに乗ったおじさんがやってきた。頭にねじりはちまきをしている。知人ではないが、"ゲンさん"って名前っぽそうな人であった。そのおじさんは、モカと通り過ぎる瞬間に少しだけ立ち止まり、


「もっと仲間が欲しいなって思っているんだったら、この道をまっすぐ行ってみな!」


と、だけ言い残し去って行った。"なんだ、あのおっさん?"と、心の中で思いながらモカは、おじさんが教えてくれたように、道をまっすぐ進んだ。のんびりと歩きながらモカは考えていた。


「どうして、俺がもっと仲間欲しいと思っていると気がついたのだろう・・・」と。


そしてまた、バンプもおじさんについて考えていた。


「ロードバイクにねじりはちまき・・・ありなのか?」


センスとは一体何なのか?その思考のドツボにはまっていたのだった。


しばらく歩いていると遠くの方で、捨て猫にちょっかいを出している風な人影が目に入った。


「誰かいるな。ちょっとあの人に話でも聞いてみようぜ!何か面白い話聞けるかもしれないぜ!」


バンプが軽快に言った。


テクテクテク


その人影に近づいて2人は驚いた。なぜなら、それは人影ではなくロボットだったからである。


「お前、ロボットか?」


どストレートにバンプが聞いた。


「はい。そうですが何か?」


ロボットは淡々と答えた。


「ここで何をしているんだ?」


「旅の途中でこの捨て猫を見つけ、かわいそうだな。どうにかしてあげたいな。と、思っていたところです」


「・・・・・。・・・・・。ん〜と、気を悪くしたらごめんな。お前ロボットだよな?」


「はい。ロボットです!!」


「その"かわいそだな"っていう気持ちがあるものなのか?」


「えぇ、そうですね。人になったことがないのでわかりませんが、人が感じる"かわいそう"という気持ちとあまり相違のない"かわいそう"という気持ちを感じることができているのではないかと思っています」


「ほう、すごいなぁ〜。人の心を持って・・・」


「オォォォォォォォィ!!!!!!」


バンプの言葉を遮るように大声でツッコミが入った!!!しかし、どこから?


「オイオイオイオイオイオイ!!!そこのマジシャンみたいな格好したお兄ちゃん!!!あんたこのロボットに興味ありすぎなんだよ!!!ここに、可愛い猫が、訳わからん健康器具の入っていたダンボールの中で"寂しいよぉ"って哀願しているのが見えんのか?」


なんと声の主は捨て猫であった!!!


「はぁ?今度は猫が喋るのかよ???」


バンプは思考回路がほんのちょっとショート寸前なようだった。


「私も先ほど知ったのでござる」


「えっ?"ござる"?お前の語尾"ござる"なの?」


猫にツッコもうとしていた矢先に、ロボット割り込むようにボケをかます。これならボードと戦っていた時の方がまだ楽だったなとバンプは思った。そして、ひとつひとつ丁重に捌いていった。人の通らない田舎道のど真ん中で、キャラの大渋滞が発生中である。


「よしっ!ひとつひとつ処理していこう!!!まず、なぜ猫が喋っているんだ?」


「よくぞ聞いてくれた!!!俺はこの道の先にある"トツペ村"ってところに住んでいたんだが、数日前にとある連中が村にやってきて、突然襲撃をはじめたんだ」


「何でいきなり?」


バンプは質問した。


「トツぺ村の産業っていうのが、世界中のあらゆるペットの餌の販売なんだ。ここら辺は田舎ということもあって、水や空気がとにかくキレイ。だから作物や生き物がのびのびと成長できるんで、人間たちの食べ物はもちろん、動物たちにとっても美味しい餌がたくさん売っているんだ。そこに目をつけて、この村を占領しようと考えたのがデスク軍の幹部、チッキだ。奴は無類のペット好き。聞いた話じゃ、飼うのが困難と言われるような凶暴なペットもたくさん飼っているらしい」


「はぁ〜、出たよデスク軍」


バンプは肩を落とし、うんざりして言った。


「そのチッキの部下たちがトツペ村にやってきたんだ。部下たちとはいえデスク軍、その力は尋常じゃなくて、俺は急いで助けを求めるため村を出たんだ。唯一使える、この猫変化の魔法を使ってな」


「それで、力尽きてこのダンボールの中で寝ていたところ、このロボットに見つかったと」


「まっ、そういうところだな。しっかり寝ることも助けを求めるためには大切ことだからな」


「聞いたことねぇよ!!!」


バンプが言った。


「厄介なことになりそうだなぁ〜。そういえば猫のお前、名前は何ていうんだ?」


「俺か?俺の名前は"キツネ"だ!!!」


「ややこしい!!!!!猫変化の魔法使えて猫になれるのに、名前はキツネ???・・・ってか猫に変化できる魔法って何?変化できるだけ?変化して立ち向かったけど力足りなくて・・・とかではなくて、ただ変化できるだけ?俺、結構世界中回ってきたけど聞いたことないよそんな魔法!!!」


「勉強になってよかったな」


「はい、ありがとうございます。あなた様のおかげです。ってそうじゃねよ!!!」


バンプはノリツッコミした。人気のない道のど真ん中で、ノリツッコミをした。バンプのノリツッコミに田畑のカカシも恥ずかしくなり、少し頬を赤らめているようだった!!!


「拙者の名前は"ロボろぼと"と申すでござる。」


「間髪入れずに自己紹介ぃ〜!!!ちょっと待ってくれ。追いつかないわ!!!っていうか、お前一人称"拙者"なの???武士?武士なの?もう絶対、武器"刀"じゃん!!!いきなり俺とキャラ被ってくるじゃん!!!もう、名前が"ロボ人"って、ほぼそのまま"ロボット"じゃ〜ん!!!みたいなツッコミは省略していい?ってか、猫のお前は語尾"ニャア"とか付かないわけ?もう、この流れで来たなら、無理やりにでも付けてよぉ〜。人と違うからキャラが立つんだろうけど、ある程度の統一性は世界観の構築に必要だと思いますよ!!!


「・・・・・・・」


「はぁはぁはぁ」


矢継ぎ早にツッコむバンプにあっけにとられたようなキツネとロボ人。


「お前、なんだか忙しいな!!!」


「ふむ。少し落ち着いた方が良いでござる!!!」


「お前らが言うなぁーーーーーー!!!!!」


バンプの今日イチの大声に、周りの田畑にいたカラスたちが驚き、一斉に飛びだった!!!


「まぁ、この先に村があるのなら、どうせ通るわけだし。いっちょ助けてやるか!!!」


とはいえ、やはりバンプは優しいのである。


「モカもそれでいいよな?」


「ZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZ22222ZZZZZZZ」


「って寝てるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!"Z《ゼット》"なのか"2《に》"なのかわからないくらい爆睡してるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」


「なっ?寝ることは大切なんだよ」


「うるさい!!!猫は黙ってるニャア!!!!!」

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