第31話 旅行2
「ついたな。しかし凄い旅館だな?」
「そうだねー。温泉街からも近いし、良いところだね?」
「この後の予定はどうするのかしら?」
「とりあえずそれぞれチェックインして16時ごろ集合して、温泉街行くか?そんで夜ご飯バイキング食べて、飲んでその後自由とかでいんじゃね?」
「ん。賛成。」
旅館に着いた俺たちは、一旦それぞれの部屋へと解散する。
「ふいー…着いたなー。おお!良い部屋だな。」
「あら、本当。16時まで時間あるけど、あなたはお風呂かしら?」
「そうだな。せっかくだし風呂だけさくっと入ってくるわ。お前はどうすんだ?」
「私は旅館を散策してお土産屋さんとかカフェで一息ついてるわ。」
「おけ。そうそう。ちゃんと浴衣に着替えといてくれよ?温泉街と言えば浴衣だからな。」
「あら、着替えが見たいの?」
「ばか。そしたら後でな?」
「ええ。行ってらっしゃい。」
俺は軽く微笑みながら冗談を言う琴奈と一旦別れ、温泉へと向かう。
「いやー。良い風呂だな…種類も多いし露天風呂もサウナも充実しててサイコーっと。」
「全くだね。やあ紫音。」
「ヒデも風呂か?雛は?」
「雛乃ちゃんは島津さんとキャッキャウフフしてるよ。女同士の時間も必要さ。島津さんが紫音ならお風呂行ったって言っていたから俺もと思ってね?」
「そうか。あいつら高校の時から仲良かったからな。実際琴奈も嬉しそうだったし、今日は誘ってくれてありがとうな?」
「紫音のありがとう、ごめんをしっかり言えるとこはいいよね?男だとなかなか出来ないよ…ん?紫音胸に入れ墨入ってたのかい?イケイケだね?イニシャルかい…?」
「ああ。ちょっとな。」
「理由は聞いてもいいのかい?」
「構わない。このイニシャルはさ、俺の両親と妹の名前のイニシャルだ。昔の事だから言うが、俺が中学3年の時の誕生日の前の日に事故で死んだんだ。トラックの居眠り運転だった。奇跡的に俺だけ助かって、所々あるキズはその時のだ。」
「そんな事が…でも、今の実家や両親は?確か実家もあるし親もいるよね?」
「親父の弟夫婦なんだ。家もな。子供がいなかったから俺の事しっかり可愛がってくれたが、俺が気を使ってな…だから本当に感謝はしているが、早めに自立したくてさ。俺が今のバイト先で働いているのも店長が事情わかってくれてるし、料理人になるって夢を叶えるためだ。大学も経済なのは自由が聞くし多少は経営も学べるだろ。」
「なんで料理人になるのが夢なのかは聞いてもいいのかい?」
「ああ。俺は親父、母さん、妹。名前は美音(みお)って言ったんだが、俺の作るヘタクソな料理をいつも美味しそうに食べてくれたよ。それが俺の楽しみでいつか最高の店と料理を作って家族を招待するって思ったんだ…」
「…その事は俺の他に誰か知っているのかい?」
「いや、変に同情されたく無いし、ヒデは長い付き合いになりそうだからな。琴奈は薄々何かあるんじゃないかと思ってるっぽいけど、そのうち俺から話すさ。あいつは親友だから。」
「紫音がハイスペックな理由がわかったよ…そしたら俺は立派に親父の後継者を目指して、紫音に出資して無料で食べさせて貰おうかな?」
「ばか。金は取るぞ。」
「ひどいね!?っはは。とりあえずこれからもよろしく!紫音。」
「はいよ。お姫様たちが待ってるから、そろそろ上がるか?」
そう言い暗い雰囲気を笑い飛ばした俺たちは、風呂場を後にする。
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