第30話 旅行

「おはようお二人さん。早いわね?」


「うっす。良い天気でよかったよ。」


「おはよ。こっと、しーくん。今日はよろしく。」


「よし。揃ったね?早速行こうじゃないか。」


次の日の朝。俺は琴奈と合流し、その後にヒデと雛と合流する。天気は良好で旅行日和だ。


「先にお礼言っとくわ澤村くん。あの宿はなかなか良い宿だし久しぶりに雛と会えて嬉しいから。」


「あはは!言っても俺も親のコネだし、気にする事はないよ。雛乃ちゃんも昨日から楽しみにしていたよ?もちろん俺もね?」


「ん。嬉しい事言ってくれる。でもこっととしーくんの邪魔はしない。」


「それは俺たちのセリフだ。まあ特に目の前でイチャイチャしようが何しようが気にしないが、4人の時は4人で楽しもうや。とりあえず飯にしね?駅弁美味そうだし腹減ったから。」


「そうね。…あら、あなたの美味しそうね?一口貰ってもいいかしら?」


「良いぞ?ほれ。お前のも美味そうだな?一口くれよ。」


「美味しいわ。どうぞ?はい、あーん。」


「ん…うん。いけるな?」


俺たちはなんの迷いもなく、お互いの口に箸を運ぶ。 


「…俺たちがお邪魔な気分なんだけど。自然すぎてツッコむ気にもならないよ。」 


「2人は高校の時からこんな感じ。だから私達も気にしない。」


「まあ、お前らの前なら俺たちも普段の感じ出せるし、これが俺たちだから気にしないでくれ。おっと…ほらよ。」


「ありがとう。」


俺はさも自然に、開けるのに手間取っていた琴奈の紅茶のペットボトルを開ける。何せ今日はお姫様扱いしなきゃいけないからな…朝琴奈に釘も刺されたし…


「紫音が女慣れしすぎてて怖いんだけど…」


「しーくんはこっとには特にだけど、基本誰にでも優しい。」


「高校の時からなんだよね?こんな事聞くのもあれだけど、雛乃ちゃんは紫音を好きになったりしなかったのかい?」


「しーくんはいい男。でもこっととの関係見たらなんとも思わないし、割って入りたいとも思わない。だからお世話係。」


「まあ、それはわかるね。誰がどう見ても信頼し合ってるし。」


「いつから俺はお世話係になったんだ?まあ否定はしないが。言っても俺と琴奈もたくさん喧嘩したぞ?俺もこいつも頑固だからな。」


「そうね。だからこそお互いの価値観を理解しているし、合わせる事も出来るのよ。自分の意見は言って折れるべきところは折れる。」


「まあ、雛乃ちゃんは結構そういう意味ではなんでも言うし受け入れてくれるよ。2人の影響かな?」


「ん。2人みたいな関係になるのは憧れ。」


「2人はお似合いだよ。だから俺たちは紹介したんだよ。雛も頑固だから。」


「ええ。それに雛はわがままだし。」


「…ヒデちゃん。2人がいじめる。」


「否定できないところもあるけど俺はそんな雛乃ちゃんが好きなんだけどねー?」


「私もヒデちゃん好き。」


「ふー食ったー。コーヒー飲むか…」


「ちゃんと食べた容器は片付ける。はい、コーヒー。」


「すまんな。」


「もはや夫婦のやりとりなんだけど…俺たちのくだりスルーしないでよ!?」


俺たちは笑い合い、穏やかに列車での時間は流れていく。

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