第27話 繋がり

「へー…ここが紫音のバイト先か。てか紫音キッチンだけあって料理美味すぎ!普通に悔しいけど。」


「そりゃ金取ってんだから当たり前だろ…ところでなんでいる?観月?」


「この間飲んだ時に行ってもいい?って聞いたらいいって言ったじゃん!流石に長居はしないけどね?紫音は今日何時までバイト?」


「今日は朝から入ってるから17時までだ。たまに通しで一日中働いてるがな。」


「そしたら今16時だから、終わったら飲みに行かない?紫音の言ってたバーに行ってみたい!」


「いいぞ?夜は暇だし丁度俺も1人で行こうとしてたところだ。」


「良かったー!それじゃあ17時までゆっくりさせて貰うね?」


そう言い、観月は携帯をいじり出す。この時俺は、観月の誘いを特に気にもとめてもいなかったのだが…


「ここかー…凄い隠れ家感あるね…」


「初見では行けないだろうな。俺はたまたま紹介で来て値段もそんなかからんしマスターも良い人だから通ってるって感じかな。」


「いらっしゃいませ。おっ?紫音くんお久しぶり。」


「お疲れ様です。千葉さん。この子は大学の同級生で七条観月。琴奈と同じサークルで友達でもあります。」


「初めまして。凄くいい雰囲気…落ち着くし、こっとともよく来るの?」


「そうだな。琴奈もハマってな。千葉さんとりあえずビールで。あと薫製盛り合わせも下さい。」


「かしこまりました。七条さんは?」


「私もビール下さい!…こういうところ知ってるのはずるいなぁ。私もファンになりそう。」


「ありがとうございます。うちはわりと若い子や女の子も多いから来やすいと思いますよ?琴奈ちゃんも1人でもよく来てくれるから。」


「そうなんですか?そしたら私も繁華街来た時は来ます!行きつけ欲しかったですし。紫音ありがとう!乾杯。」


「乾杯。」


俺たちが落ち着いた雰囲気で飲んでいると、その時は突然訪れた。


「…いらっしゃいませ。」


「偶然だな…まだここに来ていたんだな…絢美。」


「凄くいい場所だから…なかなか気づらくはなっちゃったけど。」


「俺は友達と来ているから特に話す事はないぞ。」


「大丈夫。だって、私も知ってる人だから。ね?観月ちゃん?」


絢美の言葉を聞いた俺を、一気に色々な感情が支配する。


「…知ってて呼んだのか?こいつを。俺に近付いたのも?」


「…確かに紫音の事は知ってた。でも知り合ったのはほんとに偶然だし、絢美との事は私には関係ない事だから…」


「観月ちゃんは悪くないの。私が無理矢理頼んだの…2人だと会ってくれないだろうから…」


「2人が友達だった事には驚いたが、人や場所を利用するのはよく思わん。千葉さんすいません。」


「…紫音くん。とりあえず一回話してみたらどう?僕と七条さんもいるし、揉めそうなら止めるから。」


「紫音本当にごめんなさい。絢美は私の友達だから話しは聞いてあげて?でも私はもう紫音の友達でもあるからどちらの肩も持たない。なんならこんないいところって知ってたらこんな事したくなかった。それだけはわかって。結果騙してた事になるから恨むなら私を恨んで。」


「ふぅ…仕方ない。ちゃちゃっと済ませるぞ。さっきも言ったが、俺は友達と飲んでるし、千葉さんとも、話し足りないからな。ただ勘違いするな。俺が無理だと思ったら即帰って貰うからな。」


俺は何とか感情を押し殺し、絢美を隣の席へ座らせる。なぜ俺が冷静でいられたのかと言うと、きみの悪い作り笑いを浮かべた絢美とは違い。観月が少し、目に涙を浮かべていたからだ。

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