第18話 駅

「ありがとねー紫音くん。さっそく一緒に帰ってもらって…凄く安心するよ。」


「俺が言い出した事だし、愛莉さんには世話になってるんで。昨日の今日で会えればいんですが…」


翌日、大学が終わり俺はさっそく愛莉さんを送っていた。こうなりゃ根比べだなと俺は腹をくくる。

そんな時、愛莉さんが少しビクッとする。


「紫音くん…あの人…」


「さっそく当たりっすね。嬉しいやら悲しいやら…」


「愛莉ちゃんお疲れー!偶然だねー?…ん?もしかして、彼氏?」


「こんにちは。いえ、バイトの後輩でたまたま一緒で…」


「そうなんだ!?愛莉ちゃん彼氏いないって言ってたもんね?それよりいつ遊びに行ってくれるの?俺愛莉ちゃんが気になっちゃってさー?」


「ごめんなさい。あの飲み会は友達の付き合いで行っただけですし、私好きな人いるので…」


「でも付き合ってないんでしょ?それなら遊びに行くだけいいじゃん!かたいなー?」


なるほど。こういうタイプね。無駄に自信家で人の都合は考えないタイプだな。こういう奴には。


「あー。ちょっとすいません。さっきも言ったように俺バイトの後輩なんですけど、愛莉さん、その好きな人と結構うまくいきそうなんですよ。だから愛莉さんが気になるのはわかりますけど、引いてくれません?じれったいから早くくっつけたいんですよ。」


「急に話しにはいってくんじゃねーよ。それに、そいつとはまだ付き合ってないんなら俺にもチャンスはあるだろ?」


「はぁー…今の話し聞いてました?チャンスなんてないですよね?いい加減現実見たらどうですか?女性が不快と感じた時点で、今の時代は立派なストーカーですよ?」


「んだとテメエ!」


「名前も顔も大学も愛莉さんは知っている。社会的に殺すのも簡単な事ですよ?まあ手を出すなら早く出して下さいよ?立派な傷害になる。俺は10秒もあればあなたの事殺せますがね?」


「クソガキ!」


そう言うと、男は紫音の想像通りの動きをする。紫音はあえて腕を殴らせ、すぐに男の首を絞めながら持ち上げる。


「言ったろ?弱い犬ほどよく吠える。あと最後にもう一ついいこと教えてやる。…愛莉は俺の奥さんだ。もし愛莉に何かあったら…わかるよな?顔も名前もバッチリだし写真も撮らせてもらった。」


そう言いながら、俺は愛莉さんを後ろから抱きしめ、耳元で合わせて。と言う。


「本当にごめんなさい。私がもっとハッキリいえばよかったね?彼氏がいないとは言ったけど、旦那がいないとは言ってないですよ?一応学生だし内緒にしてたから…」


「なっ…」


男はそれ以降何も言わず、魂が抜けたかのようにうなだれると、とぼとぼと歩き出す。


「とんでもない作戦思いつくね紫音くん…確実にオーバーキルだと思うよ?」


「かなり力技でしたけど、解決したからいいじゃないすか?抱きついてすいませんでした。」


「ううん。嬉しかったしドキドキしちゃったー!でも暴力はダメだよ?まあ今回は許してあげるね?ダーリン?」


「ぶっ!恥ずいからやめて下さいよ。とりあえずまた何かあったら連絡下さい。今日は家まで送ってきます。」


「それじゃあ今日は私の旦那さんなんだから手繋いで帰ろっ!?…ほんとにありがとう。紫音くん。」


そう言い、愛莉さんは小悪魔チックな笑顔で俺の手を繋ぎ歩き出す。もちろん俺は断れるわけもなく、終始愛莉さんの柔らかい手の感触にドキドキしていた。

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