第13話 百貨店

「それにするのかしら?なかなかいいセンスね?

あなたに似合ってるけど、こっちにしない?傷心祝いに買ってあげるわよ?昨日も付き合ってくれたし。」


「どんなお祝いだよ…そうか。それならお言葉に甘えるよ。」


「今日はポイント5倍だし。そのうちあなたにも貢がせるから結果プラスよ。それに、あなたにプレゼントした事ってないし、いい機会だから。」


「本音がだだ漏れだが、ありがたい。それかこっちか迷ってたからな。」


「それじゃあ買ってくるわね。化粧品も買えたし満足したわ。」


そう琴奈は言い残し、レジへと向かう。その姿を見つめ、再び何気なく商品を見ていると。不意に声をかけられる。


「紫音くん…久しぶり。琴奈ちゃんとお買い物?相変わらず仲良いんだね?」


「何を探っているかは知らんが、お前と出会う前から俺と琴奈は仲良いだろう。そっちも買い物か?絢美?」


そう。目の前には俺の元カノの絢美がいた。別れてから1週間ほどしか経ってはいないが、こうして会うと、やはり俺はこの子の事が好きだったんだとわかる。だからこそ…


「用がないならもう行ったほうがいんじゃないか?友達だろ?あそこにいるの。」


「うん…あの紫音くん!私やっぱり…紫音くんにまた会いたい!」


「ストップ。あんたなめてるの?どの口がそんな事言ってるのかしら?」


「そうだよー?ふったのはそっちなんだからそれは都合良すぎじゃないかなー?」


ベストなタイミングで琴奈と愛莉さんが割って入る。おそらくタイミングを見計らっていたのだろう。俺のために怒ってくれるのはありがたいが場所が場所だ。


「…ふーん。いいね?両手に花で…琴奈ちゃんはずるいなーほんとに。」


「何ですって?…まあいいわ。結果別れたのだし、あんたが紫音の事見てあげれなかったのが悪いわけだし。」


「よせ、2人とも。愛莉さんもすいません。場所が場所だ。絢美が何と言おうが、結果俺たちは別れた。もう会う事もないだろう。」


絢美はその言葉聞くと、何かを言いたそうにしていた口を閉じ、黙ってその場を離れる。


「高校の時からあの子はあんな感じよ。人の彼女の悪口は言いたくなかったから堪えてたけど。もはや彼女ではないから。」


「可愛い子だったけど、顔だけだねー?目が笑って無かったし、紫音くんも会わないほうがいいよ?」


「2人ともありがとう。それでも俺の彼女だった人だ。少し冷静になるとちゃんと話を聞くべきだったとは思うが、俺の気持ちは変わらんから心配しないでくれ。」


2人にそう言うと、俺たちは帰路に着く。

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