第34話 私達の戦い(sideエルメア&ミリア)
私は夢を見続ける。寝ていても、起きていても。
起きている時は些細な夢を、寝ている時は私に何かを伝えようとする重大な
そして私を苦しめるのは、いつでも寝ている時の夢だ。
両親の元から逃げ出した時、孤児院に危機が迫ると知った時、……そしてレオにいが大怪我をした時。
ずっと、ずっと寝るのが怖かった。どうしようもない未来を前に私ができる事なんて、ただ怯えながら待つか、必死に逃げようとしてみるか、そのぐらいしか無かったから。
だから、レオにいがやって来て、『魔法の言葉』で私を守ってくれた時は、救われたような気持ちだった。
“悪夢を見るな”と【命令】されたあの夜。
私は久しぶりに孤児院の皆が笑う
たった一言で、恐ろしくてたまらない悪夢をやっつけてしまったのだ。まるで御伽噺の魔法使いのように。
救い出してみせたのだ、御伽噺の騎士様のように。
だから、きっともう大丈夫。あの言葉があればどんな悪夢でも立ち向かっていける。そう思った。
そう、思っていた。
でも―――
「――っ!!」
なんで
「…………はぁっ、はぁっ、」
どうして
「…………っ、ダメッ!」
そんなこと、あっていいはずがないのに。
「……エルメア…………?」
同じ部屋で寝ていたミリアが目を覚ましたことにも気付かず、ぐるぐる、ぐるぐると今視た
「……っ! どうしたの!?」
夜闇の中で肩を掴まれる。
「ねえ、顔真っ青だよ!?」
「ミリア……」
この暗い中でも、その目は真っ直ぐに私を見つめる。
「……ねえ、エルメア」
「…………」
ねえ、レオにい。
「……何が起こるの?」
「――……っ、」
任せろ、って言ってくれたよね。
「未来に、何を“視た”の?」
「…………それ、は……」
なら、あなたに頼れないときはどうすればいいの?
―*―*―*―
「レオンさん、お願いしたいことが――」
「――
武器の手入れをしていたレオンさんに話しかけてみると、先んじるように答えが帰ってきた。
……この人が死んでしまうかもしれないなんて、未だに信じられない。いや、信じたくないだけかもしれない。
「そ、そうじゃなくて。……その、何かできることはないかなあ、って……」
この人は明後日、逃げ遅れた人を庇って死ぬ。叩き潰されるところを視たとエルメアは言っていた。
あの子がああやって視た未来は、何もしなければほぼ確実に現実のものになる。
『私が直接話しても駄目だった。だからお願い、ミリア』
だから、そう頼まれてここに来た。
「……なら、いざという時の避難経路でも確認しましょうか」
このままじゃ、だめだ。
「もっと他にありませんか? こんな事、初めてだからみんな不安で……」
私達の
「……そう言われましても、安全なところまで避難さえしてくれれば俺は……」
このままじゃ、未来は変わらないのに。
「でも――」
焦りだけが募っていく。どう話せば、何を言えばいいのか分からない。
そんな時だった。
トントン
「……どうした、ヴァルナ」
ヴァルナが床を尻尾で叩いていた。
「…………まあ、それは…………ああ、そうだな」
……何の話をしているんだろう。
私には、ヴァルナの【念話】は聞こえない。うまく波長を合わせられないと言葉を伝えることが出来ないのだと聞いた。
……ヴァルナと話している時のレオンさんは、私達と話すときよりも表情が大きく変わる。きっと、こっちが本来の彼の姿だ。
そうやって感情を動かさないようにするのが私達を守るためだというのは知っている。彼の【命令】の力が強いのは一緒に暮らしていく中でよく分かっていたから。
(……でも)
たぶん、心を開いてくれない理由はもっと違う事だ。
なんとなくその理由はわかっていて、だけどどうすることも出来なくて、胸の奥底がズキリと痛んだ気がした。
「……分かりました。避難経路以外にも、応急手当とか色々確認しましょう」
そう思い悩んでいるうちに話は終わったらしい。
「ほ、本当ですか!」
「ヴァルナに説得されましたよ。役に立たないに越したことはありませんが……、まあ、やっておいて損はないでしょう」
そう言われヴァルナの方を見てみると、私にだけ見えるように尻尾をユラユラと振っていた。
(……ありがとう、ヴァルナ)
今、この場でお礼は言えないけども、いつかちゃんと言おう。
……大丈夫、未来はきっと変えられる。
今度は、私達がレオンさんを助ける番だ。
――――――――――
気付いたら1000PV超えてましたね。
フォローなどもしてくださりありがとうございます。
拙い作品ではありますが、今後も楽しんで頂ければ幸いです。
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