第25話 旅人の授業:冒険者編
長らく更新が滞ってしまい、申し訳ありませんでした。
近況ノートにて言い訳を投稿しておりますので、よろしければご覧ください。
――――――
「はぁ……はぁ…………」
「レ、レオンさん、待って」
……流石に飛ばし過ぎたか
「……少し休憩しましょう」
いつもの場所となりつつある森で、俺はまた教師になっていた。
―*―*―*―
「冒険者になりたい?」
それは今朝の事だった。
「はい」
「だから色々教えて欲しいんです」
クルトとミリアの頼みに思わずそう聞き返す。
「……御伽話みたいな華々しい職業じゃありませんよ?」
「分かってます」
「死の危険もあるし……、いや、そんなことは知ってますか」
正直、おすすめする気になれない。この二人に対しては特に。
「まずクルト、冒険者と衛兵では仕事の内容が根本的に違います」
「……気づいてましたか」
「あれだけ楽しそうにユーゴーさんと話していれば分かりますよ。」
まずはクルト、彼はそもそも冒険者ではなく衛兵志望だ、そうなると教えるべき内容が大幅に変わる。
魔物と戦うのか人と戦うのか、不整地で戦うのか市街地で戦うのか、冒険者として正しいことが衛兵として間違っている事もあるし、変な癖をつけてしまうとその矯正に苦労する。
まあ、こっちは体作りをメインに教えればいいだろう。そのことをクルトに伝え、了承を得る。
「そしてミリア、身体強化のできない女性のソロ魔法使いは危険が大きすぎます」
「それは……分かってます」
こちらはもっと切実な問題だ、彼女は何故か身体強化魔法が使えない。それ以外の魔法の才能は十分にあるにも関わらず、だ。
自衛が満足にできず味方に守ってもらわなければならない魔法使いというのは、戦闘においてはかなり足手まといになる。パーティに入れてもらえない可能性があるのだ。
さらに、冒険者という職業が問題となる。この職業は『誰でもなれる』のだ、どれだけ人格に問題があろうと、依頼をまともに達成する能力があり、ギルドに余計な迷惑をかけなければいちいちギルドは個人を調査しない。そんなところへ自衛能力の低い女性が入っていくのは危険すぎる。
「更に言うと、ミリアのほうはもう一つ問題があるんですよね……」
「もう一つ?」
「俺は本職の冒険者ではないんです。だから『冒険者らしい』事をきちんと教えられるかというと……」
そもそも俺が冒険者登録をしているのは『路銀を稼ぐのに便利だから』というのが主な理由だ、強敵と戦うことはなかなか無いし、
「……まあ、できるだけの事はしましょうか」
そうして、また授業をする事となったのだった。
―*―*―*―
…………そして今に至る、というわけだ。
「さてと……」
「も、もしかしてまた移動ですか?」
「ああ、いえ。取り敢えずそれは終わりです」
あからさまにほっ、と胸を撫でおろすのを見て少し苦笑してしまう。
体力は一朝一夕で増やせるものではない。今日のところはこれでいいだろう。
「ここからは一旦座学にしましょう。とりあえず適当な所に座ってください」
「……そういえば座学って何するんですか?」
「最初は野営の仕方なんかを……と、思っていたんですが、もっと根本的な『生き残るための技術』の講義にしようかな、と。……まあ、まずは実際に感じてみるところからですね。
ヴァルナ、できるだけ雑に、そこそこ大きな魔法を使ってくれ」
「…………?」
―――発動直前でキープ、だったな?
―――ああ、頼む。
「ああ、そうだ、ミリアは目をつぶっておくように」
―――じゃあいくぞ?
……さて、二人は気付くかな?
「……ん、んん?」
お、ミリアは気付いたか。
「ミリア、ヴァルナが使おうとしているのが何魔法か分かりますか?」
「えっと……氷結属性魔法、ですか?」
「正解です」
対するクルトは首を傾げているな。
「…………ミリア、なんで分かったんだ?」
「ほんのちょっとだけど、肌に冷気を感じたの。……たぶん雑に魔法を使ったから」
「……ダメだ、分かんねえ」
「まあ、慣れは必要ですからね。
……とにかく、その予想は正解です。どんなに丁寧に魔法を使っても漏れる魔力はあります。それを感じることができると背後からの不意打ちなんかにも対応ができるようになるんです。『熟練の冒険者が何も見ずに攻撃を避けた!』なんて話を聞いたことがあるかもしれませんが、無意識のうちにこういう技術を使っているわけです」
ふむ、この調子ならたぶん何とかなるだろう。練習相手に困ることは無いだろうし。
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