第13話 薬草集め③

―――前方右の奴に牽制、攻撃のタイミングに合わせろ。


―――わかった。後ろの奴は?


―――近づいてきてからでいい。


 素早く作戦会議を終わらせる。どうも3匹はただの陽動らしく、俺が武器を構えるのを見ると飛び出してきた。……装備は木でできた盾と棍棒、連携らしい連携があるわけでもなく愚直に突っ込んできたか。


―――いくぞ


―――おう


 棍棒を振り上げたところへあえて踏み込み、中央の奴が構えていた盾を剣ではじき、そのまま返す刀で首を切り飛ばす。

 左からくる攻撃をバックラーで受け止めつつ右のほうをちらりと見ると尻もちをついて呆けていた、放っておいて良さそうだ、と判断しバックラーで受け止めていた棍棒ごと左の小悪鬼ゴブリンを押し飛ばす。バランスを崩し、たたらを踏んでいるところを蹴りつけ、完全に転んだところでとどめを刺した。


―――後ろ、来るぞ!


「ギャアアアアアアアア!!」


 警告の声に振り向くと、雄たけびを上げながら小悪鬼長ホフゴブリンがこちらへ走ってきていた。破れかぶれなのか、もう奇襲するつもりはないらしい。


―――後ろで転んでいる奴を見張っといてくれ。


―――わかった。


 振り下ろされる剣に先んじて盾を突き出す、勢いの乗らないままに受け止めた剣を真横に受け流した。


「……そらよっと」


 慌てて構えた盾を蹴り飛ばし、体制を崩したところでとどめを刺そうとしたが転がってよけられてしまった。

 今ので仕留められたらよかったんだけどな……、そこまで簡単な相手ではないか。


 と、思っていたそのとき、不意に風の弾丸が放たれ直撃。そのままバランスを崩した。


―――よっしゃ、タイミングばっちりだな。


「……見張りはどうしたんだよ」


―――逃げたからこっちに加勢した。さっさととどめ刺さないのか?


「ああ、そうか、よっ!」


 色々と言いたいことはあったが、とりあえず先にとどめを刺すことにした。


  ―*―*―*―


「あー、何から聞くべきなんだ……?」


―――ん?どうしたんだ?


「お前の事だよ! 色々おかしいだろ! さっきの風魔法の威力もそうだし、そもそも俺は牽制って言ってたのに相手はすっ転んでるし、【念話】の技能を持った動物ってのはともかくまともに会話が通じる知性があるのもよく考えたらおかしいし……―――あーもうとにかく色々だよ!」


―――お、おう。ど、どれから話せばいい?


「……悪い、取り乱した。あー、とりあえず最初に牽制として撃ったのはあれと同じか?」


―――ああ、そうだな。あの数を確実に対処するなら転ばせるのが確実だと思ったんだが、違ったか?


「いや、間違ってない。ちなみにあの風の弾丸、あと何発撃てる?」


―――打つだけならあと4、5発は打てるな。


「……だいぶ余裕があるな。正直言ってそんなに魔力があるとは思ってなかった、体も小さいし。」


―――鍛えているからな。なんだ、俺が魔力を使い果たしたとでも思ってたのか?


「まあ、そんなところだ。あまり慣れていないような場所で足手まといは抱えたくないし」


 まあ、魔法の威力に関しては納得した。……まだ制御技術とか問いただしたい点は多々あれども。


「じゃあ次、その人と会話できるほどの知性はどうやって手に入れたんだ?」


―――気づいたらこうだった。俺にもよくわからん。


「……だろうな。……はあ、続きは採集しながら聞くか……」


 この調子で質問してたら日が暮れてしまう、そう考えて俺たちは本来の目的だった薬草集めを再開した。

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