第10話 ギルドへ行こう

「よし、こんなもんか」


 ナップザックに水筒や包帯を詰め込み、準備を終える。何のためかといえば冒険者組合ギルドに向かうためだ。


―――隣のリュックと比べるとずいぶんショボいな。


「野営する予定がないからな。できるだけ身軽にしたいし」


 着替えや洗面用具といった日用品から鍋やテントのような野営用品まで入った大型のリュックサックと比べれば、そりゃあショボくも見えるだろう。


「さて、と」

―――よいしょっと。


 立ち上がり、剣とナイフをベルトにさしていると、いつの間にかヴァルナがナップザックから顔を出していた。


「……何やってんだ?」


―――いや、首の近くにずっと巻き付いているのもどうかと思ってな。


「まあ慣れてないから少し落ち着かないけど、別に問題はないぞ?」


―――お試しってやつだよ。それにもっとでかくなる予定だしな。


 そんなものか、と納得して出発することにした。


  ―*―*―*―


―――ところで冒険者組合ギルドってなんだ?


―――……ああそうか、知らないよな。


 教えてもらった道を歩いていると、そんな質問をされた。

 どう説明すべきかな……、詳しく説明するとそこそこ長くなるんだけど。


―――一言でいうなら『何でも屋の傭兵』の集まりだな。魔物退治をしたり、危険な場所の薬草採取をしたり、後は護衛の仕事なんかもしたりする。


―――冒険者って呼ばれる理由は?


―――昔、そう名乗って世界中を旅してまわった英雄がいるらしいんだよ。んで、その時に人助けやら魔物退治やらをしていたらしい。それに感銘を受けたやつが冒険者組合ギルドを作ったんだと。……まあ、今はその実態がどうなのかって言われると首を傾げざるを得ないけどな。


 正直、当初の理念のもとに働いている冒険者なんて半分もいないんじゃないかと思っている。


―――ん?だとするとなんでこんな時間から組合ギルドに向かうんだ?なんか中途半端じゃないか?


―――すぐわかるよ、ちょうど到着したしな。


 入り口のドアを開けて中に入る。パッと見た感じでは手入れも行き届いて使いやすそうだ。併設されている酒場は……俺にはあまり関係ないか、ともかく受付に向かおう。


「こんにちは。本日のご用件は何でしょうか?」


「滞在報告に来ました。あとはこいつの従魔登録が必要かの相談を」


「かしこまりました。まずは冒険者証をお預かりします」


「はい」


 腰に付けたポーチから冒険者証を取り出しカウンターに置く、渡された書類にサインを書き、こちらがする手続きは終わりだ。


―――これがわざわざ来た理由なのか?


―――そう、【命令】持ちの冒険者は町に着いたら3日以内に報告する義務があってな、来れるときにさっさとやっておかないと面倒なんだよ。


―――なんで【命令】持ちだけそんなことに?


―――犯罪者予備軍の管理のためだろ。……ほら、もう終わるみたいだ、この話はここまで。


―――お、おい! ……チッ、分かったよ。


 手続きが終わったのを良いことに無理やり話を終わらせる、まだ聞きたいことがあったらしいが後でまとめて質問してもらおう。


「……はい、手続きは完了しました。後は従魔登録が必要かの相談とのことですが……」


「こいつについてですね。魔物ではないみたいですが毒牙があるのでどうすべきかと思いまして」


―――…? なあ、おい。


「なるほど、町に入るときに報告は……」


「ああ、はい。報告はしてあります」


―――おい、聞けっての!


 話に割り込むようにヴァルナが突っついてきた。


―――……なんだよ人が話しているときに。


―――魔物かどうかの判別基準ってなんだ?


―――一番手っ取り早いのは魔法が使えるかどうかだな。


―――魔法なら使えるぞ?


「…………は?」


 どういうことなのか問いただそうとする俺の目の前で、ヴァルナは小さな氷片を生み出し風魔法で浮かせて見せた。


―――ほらな?


「…………すみません、魔物だったみたいです。登録をお願いできますか?」

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