第5話 尋問、取り調べ、頼み事
あの後、特に何もなく俺たちは町に到着した。
……本当に何もなかった、獣の一匹や二匹は出るんじゃないかと警戒していたが、どうやら杞憂だったようだ。
ちなみに、盗賊の見張りはヴァルナがやってくれていた。俺が質問攻めにあっているのを見て色々察したらしい。
と、まあ、それはよかったのだけど、
「本当に違うんだな?」
「だからそういってるじゃないですか」
俺、めっちゃ門番の衛兵に尋問を受けています。
……いやまあ予想はついていたけどさ、
そもそも、何故こんなことになっているのかというと。
町に着いて、事の次第を話して盗賊を引き渡し、
町に入る手続きをするために、冒険者登録証を出したところで俺が【命令】持ちだと判明し、
盗賊騒ぎ自体が俺の自作自演なんじゃないかと疑われてしまった。
という感じである。
さらに言うと、強面で髭面の衛兵(多分階級の高い人、徽章つけてるし)も来た。
「第一、俺が盗賊だったならもっと高いものを積んでそうな馬車を狙うと思うのですが。」
「む、それもそうか。」
特徴の無い、……じゃなくて若いほうの衛兵は納得してくれたらしい。
「……ただの盗賊なら、な。」
ただ、強面の衛兵は納得していないようで、
「だが、人攫いではないという確証はないだろう?」
「……あっ!」
「……そこをつかれると否定しきれないんですよね……。」
正直、そういう事件の前例が結構な数あるのが痛い。
この辺りでは、人を攫って奴隷にするのは犯罪だ。だが、【命令】持ちがいれば正規の奴隷として振る舞うよう【命令】するだけで証拠隠滅できる。
多分、この衛兵はそういうことを疑っているのだろう。
「悪いが、詰め所で取り調べを受けてもらうぞ」
「まあ、そうなりますよね」
「……すまないな、こちらにも仕事がある」
どうやら、あまり疑われているわけではないらしい。宿が埋まりきる前には解放してもらえそうだ。
「すいません、助けてもらったのは俺たちのほうなのに……」
取り調べを受けることが決まったところで、クルトが謝ってきた。
「いえ、割といつもの事なので大丈夫です。むしろ庇ってくれてありがとうございました」
「……本当にすまない」
……なんとも気まずい。
「と、とにかく! 後もつっかえてますし、その、お元気で!」
「は、はい! ありがとうございました!」
そこでクルトたちとは別れることとなった。
―*―*―*―
「―――はい、これで以上ですね。遅くなりましたが、ようこそ、ロウリイへ」
取り調べはつつがなく終わった。
若いほうの衛兵(名前はルークというらしい)はまだ新しく配属されたばかりの新兵だったらしく、強面の衛兵(こっちはユーゴー隊長だそうだ)に「やってみろ」と仕事を振られていた。
要は新人研修の練習台にされたわけだ。それとなくお願いもされたし。
別室で待機していたヴァルナは、ユーゴーさんがちょうど今連れてきてくれた。
ただ気になるのは……、
「彼らの動向にはきちんと目を光らせておこう。君も指摘してくれた通り、どうにも怪しいからな」
経験則から言うと、こういう時は大抵,俺のことを共犯に仕立て上げようと足を引っ張ってくることが多い。
逆に、そうじゃないときは自分の仕事にプライドを持っている奴らがほとんどだ。
そして、今回は無関係だと主張するパターンだった。
だが、ユーゴーさんの見立てでは、彼らは足を引っ張るタイプの輩だったらしい。そのちぐはぐさが怪しく感じた。
とはいっても……
「……出過ぎたことを言ってしまいましたよね、すみません」
「いや、町の平和を守ることもそうだが、心配事を解決するのも我々の仕事だ。何かあったら折を見て知らせよう」
さすがに出しゃばったことを言い過ぎたかと思ったけど、快く許してくれた。
―*―*―*―
「色々とありがとうございました。ではこれで失礼します」
まさか、宿を紹介してくれるとは思わなかった。お詫びの意味もあったのだろうけど、これで
部屋が埋まってしまう前に今日の宿を決めてしまおう。そう決めて歩き出そうとしたところで、
「一つ、頼み事を聞いてくれないか?」
ユーゴーさんに呼び止められた。
「……何でしょうか?」
「本来、君のような通りすがりの冒険者に頼むようなことではないのだがな……」
私の個人的な頼みなのだが、と前置きをしてから言う。
「頼む、彼らを、ルーニック孤児院の子たちを気にかけてやってくれないか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます