第6話 割と早い再会
どうしよう、宿が見つからない。
ユーゴーさんが紹介してくれた宿はすでに満室だった。ならば自分の足で探すのみ!と、意気込んだところまではよかったのだが……。
「すまないけど【命令】持ちは遠慮してもらえるかい?」
「悪いが、うちはペットお断りなんだ」
といった感じで全滅だった。
そんなこんなで少し黄昏ていると、ヴァルナが話しかけてきた。
―――別にオレは自分で寝床探せるぞ?
「いくらほかの動物より賢かろうが、街中でペットを野放しにするのはまずいだろ」
最悪、野宿だろうな、とりあえず晩飯をどうにかしようか。――うおっ!?
不意に体当たりを食らっ……、違う、腰に抱き着かれた。
「ホントにいた!」
「ね、いったとおりでしょ?」
「……急に体当たりをするのはやめましょう、スリと間違われても仕方ありませんよ?」
抱き着いているのはシーアだった、すぐ後ろにはカイもいる。
「カイ!シーア!急に走り出したら危ないでしょ!」
二人を追いかけるようにしてミリアもやってきた、手には大きな籠を持っている。
「あっ、レオンさん……」
「……二人とも元気ですよね。夕飯の買い出しですか?」
「はい、そうで――」
「なにしてたのー?」
「おさんぽ?」
「いっしょにかいものしようよ!」
「「…………」」
取り敢えず、買い出しに付き合うことにした。
―*―*―*―
「えっ?まだ宿が決まってないんですか?」
「ええ、めぼしいところは全て満室だったので」
そうミリアと話しながら商店街を歩く、今日はシチューを作るそうで肉屋へ向かっていた。
「あの、私たちの買い出しなんかに付き合ってていいんですか?早く泊まる場所を決めたほうが……」
「まあ、何とかなりますよ。それに……」
「それに?」
「…………いえ、何でもありません。それより、ほら、あそこが目的の店ですよね?」
危ない、口が滑りそうになった。
……正直、ユーゴーさんのあの頼み事の意味を図りかねていた。
目の前にいる当事者たちに聞けば一発でわかる事なのだろう、でも、それは正しい選択なのか? そう思うと、迂闊に聞くわけにもいかない。
「いらっしゃい。おや、ミリアちゃんたち……と、そっちは見ない顔だね」
「レオンといいます。少しの間この町に滞在する予定なので、よろしくお願いします」
「ほう、礼儀正しいのは良いことだね」
店主のおばさんに声を掛けられ、意識を引き戻す。
…考え事は後にしよう。
「鳥むね肉を1.5キロ下さい」
「はいよ」
メモを見ながら買い物を済ませていく。
「何人分作るんでしたっけ?」
「合わせて21人分ですけど…、急にどうしたんですか?」
……財布を確認。まだまだ余裕そうだ。
「すみません、もう1.5キロ追加で」
「……ええっ!?」
「寄付ってやつですよ。まあ、お裾分けして貰えると嬉しいですが」
「で、でもそんな」
「ははは、気前のいいことじゃないか、こういうのは貰っておくのが礼儀ってもんさ」
「……あ、ありがとうございます!」
「「ありがとう!!」」
そうして、俺たちは店を後にした。
―*―*―*―
あの後、八百屋でも買い物を済ませた(もちろん野菜も買い足した)俺たちは、孤児院へと向かっていた。
目の前をカイとシーアが歩いている。籠が重たいのかしょっちゅう持ち直しているが、シチューが楽しみなのか嬉しそうな顔をしていた。
……重たいだろうから買い足した分の食材くらいは自分で持とうと思ったのだけど、結局4人で分けて持つことになっていた。どうにもそこは譲れないらしい。
それもあってか、前を歩く二人の足元が若干おぼつかない。
「二人ともちゃんと前を見て歩きなさい!危ないでしょ!」
「「はーい」」
ミリアが注意するも、二人そろって生返事だ。
何もないといいんだけどな…。
そんな願いもむなしく、
ドンッ
「うわっ!?」
「おい、お前ら何ぶつかってきてんだ?ああ?」
厄介事になってしまった、面倒くさいなあ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます