第2話 奇妙な一団と盗賊

―――で、どうするんだ?


「とりあえずは様子を見る」


 悲鳴が聞こえた方向へ街道を早足で歩きながらそう話し合う。これから向かおうとしている方向で騒ぎが起きている以上、ほかの選択肢はなかった。

 ちなみに当の本人…いや本蛇は左の二の腕にしっぽを巻き付けるようにして肩に乗っている。いざ走るとなったときに追いつける自信がないらしい。


「そういえば、まだ名前を聞いてなかったよな」


―――……今までで名前が必要になる場面があったと思うか?


「それもそうか…。ああ、俺の名前はレオンだ、改めてよろしく」


 いつまでも蛇と呼ぶのもどうかと思ったから聞いてみたが、当たり前といえば当たり前の返答だった。


  ―*―*―*―


「見えてきたな……」


―――見たところ幌馬車とそれを襲う盗賊か?


「……みたいだな」


 悲鳴が聞こえた場所へ行ってみると、そこでは4人組の盗賊が幌馬車を襲っているところだった。

 ただ……、どうにも奇妙だ、幌馬車側の一団に大人らしい姿が見当たらない。馬車の奥のほうに隠れているのだろうか?


―――どうする?オレは毒液を飛ばして牽制するくらいしかできないぞ?


「それでいい、いざとなったら頼む」


 そう返答するのと同時に駆け出す。

 盗賊たちの武器構成は、長剣を持っているのが3人、ナイフらしき何かを投擲しているのが1人、なら俺の着ているレザーメイルを貫通する威力の遠距離攻撃はないはずだ。

 それならば、隠れながら近づく必要はない。


 ほどなくして、全員がこちらに気づく。それを確認して、息を吸い込み、叫んだ。


「全員、”動くな”!!」


 その瞬間、俺の能力が発動する。俺の発した【命令】が呪いとなってそこにいた全員を縛り付ける。

 たった一言、それだけで俺はこの場を制圧した。


  ―*―*―*―


「念のため確認します、正直に答えてください。そこの4人がこちらの幌馬車に乗っていたあなたたちを襲ったという状況で間違いないですか?」


「あ、ああ、それであってます」


 勘違いで無実の人を縛り上げるわけにはいかないので念のため尋ねると、幌馬車の一団のリーダーらしき少年がそう答えてくれた。

 ……やっぱり12,3歳くらいだよな?17歳のガキである俺が言うのもなんだがまだまだ子供じゃないか?


―――おい、そろそろ威嚇して押さえつけるのも限界なんだが。


 ……おっと、考えるのは後にしよう。


「とりあえず、そこの盗賊たちを拘束しましょうか。話すのはそれからにしましょう」

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