第3話 危険なお買い物♪

 その日、僕はバイト先でオーナーにお使いを頼まれた。

 最近はバイトスタイル(女装姿)も板についてきてしまった。なぜ、こんな格好をしているかと言うと、面白いから。とオーナーは言う。ただ、対価はもちろんあって時給がプラス五百円なのだ。そりゃやるしかないだろ。だから僕はいつもこんな扮装をせざるを得ないのだ。


 そして、そんなバイトスタイルでお使いに出てしまった。スーパーまで五分、一々着替えるのも面倒だから上に一枚羽織って外へ出た。


 商店街を歩いていると昼間の佐藤と佐藤の連れが歩いていてすれ違う。


「ひゃっひゃ、それにしても炎堂さんが出てきちゃあお前にゃ酷な話だよな」

「俺はまだ、諦めてねぇ!!」

「さっすがー! さとちゃん漢だわー」


 僕は思わず、諦めろと口に出した。


 それから買い物を終え、店の外に出る。


 嘘......だろ......??


 そこには鳴尾が居た。

 そして、こちらを見ている。


「ーーーレン............ちゃんっ?」


 鳴尾の言葉を聞き、絶句した。


 やばいって!! どうするよこの状況!!


 僕は鳴尾から目を逸らし、気づかないふりをして歩き出す。こうなりゃシラを切るしかない。

 こんな姿、認めてたまるか。今の僕は朔子。蓮田五十六なんかじゃないっ!!


 僕はクネクネと歩き出す。

 歩き方も普段と変えて、いつもの僕とは程遠い存在を演じ切ってやる!!


「ちょ、すいません、君、兄弟とかいる?」


 後ろから鳴尾の声がするが反応はしない。声はまだ、出せない。出そうと追えば声色は変えられるが、元々の自分が結構残っているから出来るだけ反応したくない。親しい間柄が故に多分、バレる。


「あの、ごめんなさい」


 鳴尾が僕の前に回る。頭を掻きながら何か言いたげにしていた。偶然、耳に指していたイヤホンを取り、首を傾げてみる。


「?」

「ごめん、音楽聞いてたら聞こえないよね。もしかして、君、兄弟とか居たりする? って思ってさ......」


 僕はフルフルと首を振る。僕は一人っ子だ。何なら親だってもうこの世には居ない。


 鳴尾はまだ、話しかけてくる。僕は顔の前に手を出して、イヤイヤと首を振ったり、首を傾げたりして切り抜けようとしていた。


「ーーー何してるのよ、鳴尾柊斗」

「ん? 東條じゃねえか。お前には何も関係ねえだろ? ここはもう学区外だ。女子と話してたって特に問題は無いはずだが?」


 そう、東條澪が現れた。僕的には最悪のシチュエーションだ。助かったのには代わりないのだが二人の知り合いに挟まれ、僕は頭が真っ白になった。


 こんな事になるなら、横着しないで着替えて来るんだった......。


「関係しかないわよ。私の友達を困らせないでくれるかしら?」

「べ、別に困って無いよな? な?」


 鳴尾は同意を求めて来るが、僕は首を縦にも横にも振らない。東條の後ろへ隠れる様に後退りをする。


「現在進行形で困ってるじゃない。もういいから、今日の所はお引き取り願えるかしら? 朔子さんもきっと買い出し中であなたに割く時間なんて無いだろうから」

「そ、そうか、ごめんな......」


 柄にもなく本気の反省姿を見せる鳴尾。おいこら、お前そんなしっかり詫びれたんだな。普段、お前の謝罪の言葉には気持ちが入ってない事がよく分かったぞ。


「行きましょう」と東條。

 助かった......。とは実感するが、今の状況もなかなか芳しくはない。そう思っていると、東條から切り出した。


「そういえばね、朔子さん、私............やったのよ」


 知ってる。僕はそう思って頷いた。

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