005 魔王の力、凄すぎ!
荒れ狂う溶岩に向かって真っ逆さまに落ちていくケンタ、ベル、ハルと四人の勇者のパーティ。
俺、また落っこちんのかよ!あれ、なんか景色が止まっているし。なんだこれ。
メチャメチャ力が湧て来たぞ。
もしかしてあれがやれるんじゃねー。
うりゃー。
ケンタの全身の筋肉が盛り上がり、服をビリビリと引き裂いていく。
国民的人気アニメのスーパー○○〇人みたいじゃんかよ、俺。
肉体に収まりきらなくなった『気』が視覚化できるほどに輝いてケンタの体を包んでいる。
立ち上ってくる溶岩の熱さなんて、まるで気にならない。正に『気』のバリアーだな。
ケンタはベルを背負ったまま、宙に浮いて見える石段の欠片を蹴りながら超スピードで移動する。
四人を背負って落下するネコ耳のハルを両腕でキャッチする。そのまま抱きあげて残った石段のところまでジャンプ。
マッハの速度で一気に駆け上る。勢いあまって衝撃波で石段をすべて破壊してしまうほどの威力だった。
あれほど遠くに見えたダンジョンの地下入り口に一瞬で到達してしまう。
地下の入り口奥の穴に収まり、全員を降ろして一息つく。
それにしても、ずけえな。魔王の力。レベル99って無敵なんじゃね。このまま、一気にダンジョンを抜けるか!楽勝じゃん、俺様。
『ピポン。ケンタの魔石(クリスタル)が封印されました』
俺は天使ベルを睨みつける。
「なんで、また封印すんのよ」
「ケンタには無理だもん!」
プイっと顔を逸らされる。
「使いこなしただろ!」
マジ、ムカつく。助けた恩くらい感じろ!
あどけない少女の姿をしたベルを相手にムキになる。
いつもは強気のベルの顔に焦りの色が浮かんでいる。
言葉遣いも威張り腐った「じゃ」から媚びを売るような「もん」に変化している。
「だって大天使様が無理って言ったもん」
今度はぷくっと頬をふくらましてうつむくベル。やはりこいつは単なるガキだ。
「今、大天使様って言ったよな」
「あっ!」
大きく瞳を見開いて目を逸らすベル。絶対に裏があるぞ!
「ベルより上がいるってことだな!」
本来の俺のキャラじゃないが強気で押してみる。
「ベルだって、見習いだけど天使だもん」
「はあっ!ベル、お前、見習い天使なのか?」
「あうっ!」
とうとう口を滑らすベル。
『ピポン。ケンタのパーティーの天使ベルは見習いでした』
頭の中でまたあの声が鳴り響く。誰だか知らんが訂正すんなよ。
「でもだもん。ベルは二百八十年、見習い天使をしてるもん。ケンタは二十八しか人間して無いじゃん」
「はいっ?ベルは二百八十歳なのか?」
「うん」
うんって。二百八十年生きて、まだ中学生レベルなのかよ。天使ってマジ寿命が長いな。知らんかった。人間なら妖怪レベルの婆さんなのに。
「あのー。込み入った話は後にするです、マスターケンタ様。ここはダンジョンの中です」
ハルの目が泳いでいる。ケンタの頭の中にある疑問が浮かび上がる。
「ハル、君、高校生くらいに見えるけど何歳なんだ」
「知らないです」
困った顔も可愛い。ハルは大きくなったらもの凄い美人になるはずだと思える。
問題は何年経ったら大人になるかだが・・・。
「正直に言え。俺はマスターだぞ」
「なっ、七歳になるです。マスターケンタ様」
ぐっ。こっちはロリかよ!思わずため息がこぼれる。
「はー」
スマホゲームやラノベで、それなりに異世界のことを理解していたつもりだったけど、まさかこんなことになっているとは・・・。
「なあ、ハルさん。君、魔王の使い魔ってことになっているけど、見た目、魔族じゃないよな。角とか矢印の尻尾とかないし、黒い翼も生えてない」
「はい。獣人なのです。出世したです。そんなことより、マスターケンタ様、後ろにゴールドゴーレムが出現したです」
振り向いたケンタが見たものは金色に輝くゴリラくらいのサイズの魔物だった。
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