第壱章

第7話 五月蝿と八月蝉


ミーンミンミンミンーーー


気が付けば蝉の声。なぜ八月の蝉なのに五月蝿いのだ。夏の暑さに焼かれ、汗をかき、蝉の鳴き声に煩わしさを覚える。これは僕がまだ十六歳の子供だからなのか。大人に成ればこんな時にも風情の一言で余裕を見せることができるのだろうか。拝啓大人の皆様、すみません。僕は今のところ深いな不快しか感じません。蝉に起こされたからか少々頭痛もするのです。


今は何時だ時鳥ほととぎす

時計を見れば針は二つの腕を重ねて目一杯真上を指している。つまり正午である。デジタル化学駆け足で進む中、わざわざ自室にアナログ時計を置いているのは僕の小さな拘りだ。読書であれ勉強であれ何かに集中している時には秒針の刻む音に気がいかないが、何をするでもなくただ呆けている時には嫌になる程聞こえてくるものだ。これを僕は静的集中メーターと呼んでいる。ちなみに動的興奮メーターは脈拍である。


青春黄金期とも言えるこの高校一年生の夏休みを孤独に万歳するのもいかがなものかと思うので奴を誘おう。悪友兼親友の奴である。


プルルルーーー


「もしもし、となる、今日家来ない?」


「お主も暇よのう」


「お前も暇だろ?」


「なぜ分かった⁉︎貴様、見ているな?」


「僕とお前の仲だ。目を閉じていたって分かる」


「流石は我が盟友と呼ぶべきか。じゃあ、昼ごはん食ったら行くわ」


「分かった。待ってるよ」


「あーい」

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