第5話 同じ高校
「柚稀は紗良さんのこと名前で呼ばないのか?」
柚稀が戻るなり、恭介がそう問いかける。
「あー、そういえば呼んでないな」
「ちゃんと名前で呼んであげなさい」
「ああ」
「(……言われてみれば、名前で呼ばれてないな」
紗良はちらりと柚稀を盗み見した。
「お待たせしました。ウーロン茶になります」
ノック音と共に入ってきたボーイはウーロン茶が入ったグラスをテーブルの上へ置いた。
「あ、はい。ありがとうございます」
「こちら白ワインになります」
「ああ」
柚稀はボーイから白ワインの入ったグラスを受け取ると一口飲んだ。
他2人はシャンパンやワインを飲んでいた。
「はい! はい! 自己紹介しよー!」
「自己紹介はさっきしただろ」
未来は手を挙げながら提案するも柚稀に断られてしまった。
「さっきは名前を言っただけだよ。
僕達の関係とかも知っておいた方がいいと思うよ。家政婦兼嫁なんだからさ」
「"仮"の嫁だからな」
柚稀は未来の言葉を否定するかのように"仮"を強調して答えた。
「まあ、そういうわけだから自己紹介します! まずは僕から!
僕は日高グループの息子の未来だよ」
「ひ、日高グループ……」
「紗良ちゃん知ってる?」
「……知ってます。あ、あれですよね? 金融系の……」
「そうそう! 他にも化学と金属を中心にやってるんだ!」
日高グループは元々は日高財閥だったが解体され、現在は銀行、化学、金属を中心とした日高グループとなっている。
「凄い……」
「でしょー! でも柚くんと恭くんの方が凄いよ!」
「ゆ、柚くんと恭くん?」
「あーえっと、柚稀くんと恭介くんね。この2人は自分で社長とかオーナーやってるんだよ」
分からない紗良の為、未来は呼び方を変え話し始めた。
「そうなんですね。凄い……」
「柚くん言わないの?」
「未来、説明しといて」
未来は柚稀に視線を向けた。
だが、柚稀は面倒くさそうな顔をすると説明を未来へ丸投げした。
「もう自分のお嫁さんなんだからちゃんと説明しなきゃダメだよ」
「だから、嫁じゃなくて"仮"の嫁な」
再度、柚稀は未来の言う"嫁"を否定する。
「まず、柚くんは26歳でIT企業の社長ね。
柚くんのお爺さんが元々社長で柚くんが跡を継いだの。
柚くんとお父さんは仲が悪いから気をつけてね」
「未来、余計なこと言うな」
柚稀は未来を睨みながらそう言った。
「ごめん、ごめん。
でも僕が言わないと柚くん絶対言わないじゃん」
「(柚稀さんはお父さんと仲悪いのか。
IT企業の社長って……なんか本当に凄い人に借り作っちゃったんだな……)」
紗良は改めて柚稀の凄さを知ったのだった。
「で、次は恭くんね。恭くんは28歳でホテルのオーナー。
ここは元々は恭くんのお父さんがオーナーだったんだ。
恭くんは柚くんと違ってお父さんとは仲いいんだよ」
「私もそんなに仲は良くないですよ。
最近は会うことをも減りましたので」
「そうなんですね。
教えていただきありがとうございます。
皆さん凄いですね……」
あまりの凄さに紗良は驚愕した。
「凄いよね! 僕も高校卒業したら柚くん達みたいに頑張りたいんだ!」
「高校? 未来くんは高校生なんですか?」
「うん! そうだよ! 織山高校に通ってるよ!」
「え! うそ……。わ、私も同じ高校です」
未来が高校生しかも同じ学校と知った紗良は開いた口が塞がらないでいた。
「え! ほんと! 同じ高校って凄いね! 紗良ちゃんは何年生?」
「3年生です。未来くんは何年生ですか?」
「あー僕の方が年下か。
敬語使わなくていいよ。僕は2年生だよ」
「え! あ、私の方が上なんです……あ、上なんだね」
「僕も吃驚だよ!」
それからおつまみや、食事を食べ帰路に着いた。
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