第4話 高級ホテル

「本当のことは言えなかったんだな。

まあ、借金してるなんて言えないよな?」

「き、聞いてたんですか?」

「聞いてたとか人聞きの悪いこと言うな。

聞こえたんだよ」

「そう、なんですね。

お母さんが今度柚稀さんに会わせてほしいって言ってました」

「まあ、そのうちな」

「え、会ってくれるんですか?」

「ああ」



柚稀はそう答えると顔を引っ込めた。


紗良も立ち上がるとリビングへ入って行った。

 

 

       * * *

 

 

 

 しばらくしてインターフォンが鳴り柚稀は玄関へ向かう。

 

 そして、2つ程ダンボールを抱え戻ってきた。

 

 

「来い」

「はい」

 

 

 柚稀はダンボールを抱えたまま別の部屋へ歩いて行く。

 

 その後を紗良が続いた。

 

 

「ここな、お前の部屋。

これ荷物置いとくから」

「……ありがとう、ございます」

 

 

 どうやら先程届いたダンボールは紗良の荷物だったようだ。

 

 紗良の部屋はリビングの左隣。

 

 

 部屋にはベッド、テレビ、クローゼット、テーブル、イスと必要な家具は既に揃えられていた。

 

 

「そろそろ腹が減ったな」

「あ、では何か作りましょうか?」

「お前料理出来るのか」

「元々母と2人で暮らしてたので料理は出来ますよ」

「……お前の料理は次回にとっとく。今日は別の所へ行く」

 

 

 柚稀は少し考えると紗良の手を引き玄関へ向かった。

 

 

「えっ、どこ行くんですか」

「黙って着いてこい」

「は、はい」

「(着いてこい……っていうか手掴まれてるし強制じゃん」

 

 

 紗良は柚稀に引かれた手に視線を移した。

 

 

 

       * * *

 

 

 

「入れ」

「はい」

 

 

 先程の運転手、加藤の運転する車に乗り込んだ2人。

 

 

 車は別の高級ホテルに止まった。

 

 車から降りた2人はホテルの最上階へ向かった。

 

 

 そして、紗良は柚稀によって開けられた部屋へ強制的に入れられた。

 

 

「あ、紗良ちゃんだ! 僕のこと覚えてる?」

「紗良さん、ようこそいらっしゃいました」

 

 

 部屋に入ると大きなガラスのテーブルを囲うように高級そうな皮のソファーが並んでいた。

 

 

 そこには、未来と恭介がいた。

 

 

「ここは……どこですか?」

「ここは兄貴のホテル」

「へ?」

「(恭介さんのホテル? どういうことだろう……)」

「柚稀、それでは紗良さんには伝わらないよ。

紗良さん、このホテルのオーナーが私です。

そして、ここはホテルのVIPルームとなっております」

「はあ……」

「(なんか凄すぎて頭がついてかない……この人達お金持ちだったんだ。

だから柚稀さんの財布から10万円も出てくるわけだ)」

「お前は何飲む」

「あ、烏龍茶でお願いします」

「ん」

 

 

 柚稀はそう返事をするとどこかへ行った。

 

 

 きっと注文をしに行ったのであろう。

 

 

 

 

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