ハロウィンSS:Dangerous Night Party
時刻は現在22時を過ぎたところ。
人生で初めて女装をするという悪夢のようなハロウィンパーティーはつつがなく終了した。二度とあんな格好はごめんだ。
そしてお風呂に入って寝る準備も整えた俺は、半日ぶりに静かになったリビングのソファーで俺はくつろいでいた。本当なら寝室でゴロリとしたかったのだが、
「特別衣装に着替えるのでリビングで待っていてください。覗いたらダメですよ?」
風呂上がり楓さんにこのように厳命されてしまった。仮装パーティーはもう終わったはずだ。現に俺はみんなが帰ったら化粧を落とし、速攻でドレスを脱ぎ捨てて部屋着に着替えた。楓さんも愛用のモコモコパジャマに着替えたが、また仮装をするようだ。そう言えば、
―――そうそう。この衣装なんですけど、夜になったら特別仕様に変わるので楽しみにしていてくださいね?
こんなことを言っていたな。特別仕様ってなんだよ。オフショルダーの狼娘も相当可愛い上に肌の露出もあったが、それ以上になるとでもいうのか? そんな馬鹿な。そもそもあの衣装を用意したのは誰なんだ?
「勇也く―――ん! 準備が出来ましたぁ! 寝室に来てください!」
答えの出ない謎を考えても仕方ない。楓さんからお声がかかったことだし寝室に行くか。すっかり湯冷めして身体が冷えたから早く布団に入りたい。寝るにはまだ早いが今日は精神的に疲れた。
「楓さん、入るよ」
ガチャッとゆっくりと扉を開けると目に飛び込んできたのはベッドの上に四つん這いで雌豹のポーズをしている楓さんの姿。え、どういうこと?
「勇也君! トリックオアトリートです! お菓子をくれなきゃ悪戯しちゃいますよ! むしろ悪戯させてください!」
ガチャッ。俺は静かに扉を閉めて大きく深呼吸をした。俺の目はどうにかなってしまったのだろうか。おかしくなっていなければ、寝室にいたのはデンジャラスな狼さんだ。どれくらいデンジャラスかというと肌色面積がすごく多い。特に胸部の破壊力がヤバイ。まぁそれは今更だが、とにかくあの楓さんは危険だ。主に俺の理性が吹き飛ぶという意味で!
「き、きっと俺の見間違いだ。楓さんがあんな格好をするはずがない。うん、俺の内なる願望がきっと幻覚を見せたんだ。そうに違いない」
自分にそう言い聞かせ、俺は再び扉を開けると目の前に楓さんが立っていた。涙目で頬をぷくぅと膨らませている。
「勇也君! どうしてすぐに扉を閉めたんですか!? ひどいです! 断固抗議します!」
その仕草は非常に可愛い。可愛いのだが目のやり場に非常に困る。裸より扇情的でそれは仮装なのか!? と問いたくなる。
「ど、どうですか? お母さんが夜のハロウィンのためにと用意してくれたんです。巷ではドスケベ衣装などと呼ばれているそうです!」
犯人は桜子さんかぁ―――!! 今度お会いする時は菓子折りを用意しよう。深々と頭を下げないとな。ってそうじゃない! なんてものを用意したんですかねぇ!? よりにもよってこれをチョイスしますか!
「ゆ、勇也君? どうしたんですか、黙って……あの、感想をですね……聞かせてほしいんですけど……」
ごくりと生唾を飲み込み、改めて楓さんを見つめる。こうしてみると本当にこの衣装はデンジャラスだ。
楓さんが身に着けているのは本物かと見紛うほどのケモミミ。レース生地のロンググーローブに生足をさらに官能的に飾る網タイツ。首元、手首、足首にふわふわのファーを巻いている。しかし衣装がデンジャラスと呼ばれる所以は上下の衣装にある。
上はどうしてこうなったんだと言いたくなるほど布面積の小さいマイクロビキニ。ファーと同様に触り心地抜群のもふもふがあしらわれており、楓さんのたわわな果実の上と下とか横とかがバッチリ見えている。控えめに言って
そんな三冠王的な組み合わせだから、魅惑のデコルテゾーンだけでなく健康的で引き締まったくびれやお腹は丸出し。綺麗な背中も露出全開だろう。もう何が何だかわからないよ!
「あ、あの……勇也君? 黙っていないでなんか言ってくださいよ……こ、これでも少しは恥ずかしいんですよ?」
俺の中の理性がガタガタと音を立てて崩れていく。いや、だってそうだろう? こんな扇情的な衣装を着ておきながら実は恥ずかしいんですと上目遣いで告白されたらあまりの可愛さにノックアウトになるだろう? なるよね!?
「うぅ……やっぱり攻めすぎですよね……お母さんのうそつき……ぐすん」
いけない。日本一エロ可愛い楓さんを前にして語彙力とともに意識を彼方に飛ばしていたら楓さんが半泣きでうつむいてしまった。
「あのですね、楓さん。その……」
「なんですか? どうせ似合ってないですよね。えぇ、わかっています。お母さんに上手いこと乗せられました。勇也君も悦ぶわよと言われてホイホイ着た私がバカでした」
俺が何も言わなかったせいで楓さんが見たことないくらい落ち込んでいる。考えろ、言葉をひねり出せ!
「そんなことない! 何も言えなかったのはあまりにも似合っていたからというかむしろ裸よりエロくてヤバイというか……理性が爆発寸前で……つまり何が言いたいかって言うと、すごく可愛いです」
「……勇也君。もう一度言ってください」
「……すごく可愛いです。それとエロいです。勘弁してください。最高です」
裸以上に魅惑的な格好に脳は蕩ける寸前でまともに思考できない。そのせいで自分でも何を言っているのかわからないが、言い終わった瞬間に楓さんが胸に飛び込んできた。
「えへへ。すごく嬉しいですっ!」
あぁ、もう本当にこの狼娘は可愛いなぁ! 頭を撫でると嬉しそうに目を細めて笑う楓さん。俺は俺で色々柔らかい感触を味わうことが出来て幸せだ。
「ねぇ、勇也君。最初の質問に戻るんですが、いいですか?」
「質問? 別にいいけど何?」
「もう! 今日はハロウィンですよ?」
あぁ、そういうことか。楓さんの衣装の破壊力が絶大だったおかげで頭の片隅にすら残っていなかったよ。
「勇也君、トリックオアトリートです! お菓子をくれなきゃ食べちゃいますよ? いいんですか?」
さて、どう答えたものか。当然お菓子なんてものはない。ものはない。瞳をキラキラと輝かせて俺の答えを待っている可愛い狼さんをちょっとからかうのも一興だな。
「困ったなぁ……お菓子は持ってないや。そうすると俺は食べられちゃうのかな? こんな可愛くてエロい狼さんになら、むしろ食べられ―――!?」
食べられたいと言う前に、素早く俺の首に腕を回して身体を密着させた楓さんにキスをされた。柔らかい唇をお互いについばむような甘い口づけから、次第に甘く蕩けるような濃厚なものへと移ろっていく。
夢中で絡め合わせているうちに蠱惑的な水音が静かな寝室に響き渡る。楓さんの口から時折漏れる熱い吐息。昂ぶっているのが一目でわかるほど、楓さんの真っ白な肌は赤く蒸気している。でもそれ以上に、俺はきっと―――
「フフッ。勇也君、目がとろんとしていて可愛いですね」
「それは……だって楓さんが……」
「あぁ、もう! 本当に可愛いですね! そんな勇也君も大好きです!」
ベッドに行きましょうと手を引かれ、俺は幽鬼のようにふらふらとした足取りでその後に続いた。そして気が付けば俺は楓さんに押し倒されていた。
「お菓子をくれない悪い子にはたくさん、たくさん悪戯しないといけませんね。あと普段勇也君に耳元で囁かれていじめられているので、そのお返しもしないとです」
捕らえた獲物を前に舌なめずりをする瞳は色気に満ちている。目の前でぷるんと大きく揺れる果実にもぎ取りたくなるが、残念ながら俺の手は楓さんによって押せられている。
「大丈夫ですよ、勇也君。優しく……食べてあげますからね」
年に一度の収穫祭。金色に輝く満月に照らされながら、俺達は甘い夜を過ごした。
なお、狼になった楓さんはやばかった。
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