第105話:雀のさえずりと幸福な朝
窓から差し込む朝日を浴びて、俺は目を覚ました。心地よい気だるさを感じながら、俺は一糸まとわぬ姿で腕の中ですやすやと寝息を立てている世界中の誰よりも愛しい人に目を向けた。
「んぅ……ゆうやくん……」
どんな夢を見ているのかわからないが、その中に俺が登場しているのは嬉しいことだ。そっと頭を撫でながら、楓さんと一つになれた喜びを噛み締める。
「好きだよ、楓さん」
そっと頬にキスをしてもう一度抱きしめると子猫のような瞳がゆっくりと開いた。どうやら起こしてしまったようだ。
「……勇也君、私も大好きです」
スリスリと自分の匂いをこすりつけるように胸板に頬ずりしてくる楓さん。いや、昨日さんざんマーキングしたでしょうに。
「勇也君のご主人様は私だってことを示すためにも大事なことなんです。変な虫さんがくっついたら大変です。勇也君にくっついていいのは私だけだもん!」
それはもちろんそうだけどさ。俺だって楓さん以外にくっつかれたくないし、なんなら楓さんに変な虫がついたら俺は間違いなく気が狂う。
「フフッ。独占欲が強いのはお互い様ですね」
「……間違いない」
抱き合って、他愛のない話をして過ごす朝の時間はとても穏やかで幸せだ。このままひと眠りしたいくらい。
「それにしても。昨夜の勇也君は凄かったです。まさに狼さんでした。私、隅から隅まで食べられちゃいました」
「……それこそお互い様じゃないか?」
昨夜の楓さんは子猫から雌豹に進化してとんでもなく可愛かったし、同時にサキュバスが現実に存在したらそれはきっとベッドの上で楓さんのことだと言えるくらい妖艶で美しかった。とにかくヤバイ。理性と一緒に語彙力も吹き飛ぶくらいヤバイ。
「ところで勇也君はどんな姿勢が好きですか? 私はやっぱり密着出来てキスもできる対面z―――」
いつものように暴走する楓さんを鎮めるために頭に手刀を落とす代わりに、キスをして唇をふさぐ。一瞬驚いたようだがすぐに蕩けるような甘くて濃厚に舌を絡めてくる。
「んっ……はぁ……もう、いきなりなんてずるいです。それにこんなキスをされたら……スイッチ入っちゃいました」
ペロリと唇をなめる楓さんの瞳に妖しい光が灯り、すぅと白魚のような指で俺の身体をなぞっていく。いけない、せっかく封印したのに楓さんがまたサキュバスになってしまう!
「勇也君がいけないんです。私をその気にさせるから……昨日の続き、しましょう?」
そしてまたキスをして、俺達は愛し合う。
「楓さんと出会えて本当に良かった。俺はすごく幸せだよ」
「私もです。勇也君と一緒になれて本当に幸せです」
桜が満開になる季節。
新しい学校生活はもう目の前だ。
けれどその前にもう少しだけ。二人だけの時間を堪能させてください。
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