2 起動

 僕は帰宅すると、急いで自室に戻り、深呼吸をしてからガチャを引くことにした。


 スーハースーハー。よし、落ち着いた。


 ガチャは一回千円、中学生の僕には決して安くはないが、引く価値はある。


『せめて、Cクラスが出てくれれば良いんだけど』


『まあ、僕の運じゃ無理だよね。やっぱりZクラスかな、Zクラスが出そうな予感』


 悟は目を瞑ってガチャを引く。


 恐る恐る瞼を開けると、オレンジ色の栞が表示されており、タップすると出てきたのは、Cクラス悪鬼あっきだった。


『Cクラスか、Zに比べたらマシだよね』


『ネットで調べたら、Dクラス以上の存在は、全て美少年か美少女のどちらかを選べるらしいけど、とりあえず今回も女性で」


「徴集が成功しました。+CC 悪鬼、徴集により呼び出されます」


 ARPTのアナウンスと共にCクラス悪鬼が徴集された。


 見た目は可愛いのだが、それはある一点を除けば。


 悪鬼は、一目で異常だと感じられる部分がある。


 目が据わっており、手に持つ武器は悪鬼羅刹と彫られた大きな鉈である。


 悪鬼は存在の中でも戦闘能力が高めなのだとか。それに女性の悪鬼の方が男性の悪鬼より強いらしい。


 今日はもう一度ガチャを引いて、さっそく小城公園に設置されたフィールドに行くことにしよう。


 今度はあまり躊躇することなくガチャを引いた。


 一瞬フリーズしたかと思うと、シルバー色の栞が空間上に表示され、ドキドキしながら悟は栞に触れた。


「徴集に成功しました。+B 獬豸カイチ徴集により呼び出されました。誠におめでとうございます」


 悟は嬉しさのあまり、自然にガッツポーズをして跳び跳ねた。


 しばらく余韻に浸り、ARPTに表示された獬豸を、何度も確かめた。


『Bクラス!+B、ホントに?嬉しすぎてやべー。今度は男にしてみよう。へー、なかなかのイケメン、何々、武器は正義の剣か』


 存在をゲットした僕は、腕試ししたくてしょうがない。それじゃあ、早速フィールドに行こう。


 自転車をこぐこと二十分、小城フィールドに着いた。


 小城公園のフィールドでは人集りが凄い。


 皆がGREPを持っており、この中では僕が一番の初心者だ。


 空いてるフィールドはないかな?キョロキョロ辺りを見回し端の方に空いてるフィールドを見つけた。


 悟はコンピューターとのシングルプレイをするために右往左往していると、遠くの方から声が掛かる。


 声の主は、一、二歳くらい年上の人懐っこい少年だった。


「君、初めて?俺は牛尾中学二年、条遼太すじりょうた


「僕は牛尾中一年、照川悟です」


「俺はTell the world歴五年で、このフィールドには週五来てる。良かったら俺と擬似戦争してみる?君さえ良ければいろいろ教えるけど」


「僕はTell the world歴一日目なので、是非ご指導お願いします」


「同中か、奇遇やな。そんな堅苦しいのは止めよう、俺と君は一歳しか違わないし、今から擬似戦争するけど、君は何体存在を所持している?」


「はい、ありがとうございます。僕の存在は三体です」


「三体か、なら一体ずつ三回バトルをしよう。じゃあ、フィールドに入ろうか」


 悟は頷き、遼太の後をついて行く。ヤバい、ドキドキしてきた。初めての擬似戦争、とてもワクワクする。

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