転校生5

「ふ、ふふーん」


係の仕事で、遅くなってしまったが、ようやく帰れる。

そう思って、教室へ入った瞬間、僕の思考は止まってしまった。


あの、あの早見さんが、朝のラノベを読みながら、

「くみちゃーーん、かわいいでちゅねーー。もうずっと大好き♡」

と、からだを妙にくねくねしながら、夢中になって読書いや、鑑賞していた。


(やばい、やばい、どうしよう… 気づかれていない? 逃げ出すか?)


「あ、、、」

目が合ってしまった。なんで……

「か、かみやくん?」

「あ、う、うん」

「どうしたの?こんな時間に」

「あ、ああ。係りの仕事でね」

「そ、そうなんだ」

「じゃ、私はこれで。ばいばい」

「う、うん。また明日」

そう言うなり、ダッシュで教室を出て行った。


(早見さんって、やっぱり……)


「ガチオタじゃねーーーーーーーーーか」

なぜだろう。彼女の今までの印象から180度変わったもので、

つい発狂してしまった。


まてまてまて、これってチャンス???

見た限り、早見さんが周りの女子とそっち関連の話をしていることを

聞いたことはない。

そして、僕は知っている。

オタクというものは常に語り合える同士を探していることを!

そう、つまり僕がオタクだということを明かして、その話題で盛り上がれば…


「でゅふ、でゅふ」


完全に少年漫画のモブ敵のような、気味の悪い笑みを浮かべてしまった。


「僕の、学園ハーレム!きたーーーーー」


でも、まてまて、僕がオタクであることを明かすのか…

もしかして、気持ち悪がられたりしない??

それで、距離を置かれたりしたら……


「あーーもーー」


結局、そのまま結論は出ず、帰路につくのであった。





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