ブランコ

勝利だギューちゃん

第1話

近所に児童公園がある。

子供の頃は、たまに立ち寄ったが、

大きくなると、さすがに行きにくくなる。


昔は、市民プールがあり、夏場ば賑わったが、経営難のために閉鎖された。

今は、遊歩道となっている。


「久しぶりに行ってみるか」


何年かぶりで、行ってみる。


「変わってない」


それが、第一印象だった。

せめて、トイレは改装してほしいと思う。


ブランコがある。

ふたつある。


たまに、父娘連れが仲良く並んでこいでいる。


「久しぶりに乗ってみるか」


辺りに誰もいないのを、確かめる。

いや、別に見られてもいいのだが、やはり恥ずかしく感じるのは何故だろう?


立ちこぎは出来ないので、座ってこいで見る。


ギーコ

ギーコ


ふりこの原理なので、一回転は出来ない・・・

まあ、出来たら怖いが・・・


何気に楽しい。

割と楽しい。


もう、しばらくこのままでいよう。


完全に童心に帰っていた。


「君も来てたんだ」

その声に顔をあげる。


懐かしい顔がそこにはあった。

クラスメイトの女の子だ。


「やあ、10日ぶりだね」

女の子に声をかける。


わずか10日間しか空いていないのに、何年も会っていない気がするのは、なぜだろう?


「となり、いい?」

断る理由もないので、僕は頷く。


女の子は腰は、ブランコの上にたつ。


「立ちこぎ出来るんだ」

「まあね」

「危険だよ」

「気にしない、気にしない」


しばらくして、女の子もブランコに座った。


「やはり、このほうがいいね」

「うん」


しばらく、ふたりでこいだ。


「ねえ。○○くん」

「何?」

「いつまでも、忘れないでいたいね」

「何を?」

「ブランコが楽しいという気持ち」


確かに、大人になると、恥ずかしくなるし、大の男ならなおさらだ。

でも・・・


「恥ずかしかったら、私がとなりでこいであげるから」

「頼む」

「了解」


満面の笑みが、そこにはあった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ブランコ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る