2.1位になりたいのに…!

「最近伸び悩みの時期だよなぁ。なかなかトップの道は厳しいぜ~」


 今日も配信をする。やれることはやっているつもりだったが、なかなかランキングが上がらないことにモヤモヤとしていた。


月(るな)

「弱音吐くなんて珍しいね」


とりちぃ

「なになに?? 悩み事かな?? お姉さんが聞いてあげるよっ」


ななか

「あたしも悩んでることあるの~。ただのんに聞いてほし~」


黒夜/低音系ボイス

「サブ垢作ればいーじゃん」


「サブ垢かぁ~。サブ垢で息抜きして、本命を頑張る活力にするわけね~」


 サブアカウントの存在は知っていた。他の大手配信者たちはサブの方で、本当に仲の良い配信者同士交流したり、普段の配信の反省や愚痴大会などをやっていると風の噂で聞いていたからだ。


 特に作るほどでもないかと思っていたが、やっぱりそういうつながりも大切なのだろうか。


黒夜/低音系ボイス

「ちげーよw サブ垢で、自分に自分でブーストすんのw」


「え!? サブ垢で自分にブーストすんの!? やべえやつじゃんwww」


 笑って見せたが、全く笑えない。自分で自分に課金するなんて、悲しすぎる。リスナーから愛されてなんぼの課金ブースト、ランキングなのに。


 意味が分からない。俺は絶対にしない。


ふーみん

「そんなことしなくても、ふーがブーストがんばる」


月(るな)

「個別メッセ受けてくれるなら、私も只野さんに課金しますよ」


黒夜/低音系ボイス

「サブ垢って言わなきゃ誰も分かんないんだから、イケるイケるwww」


カナコ

「ただのんのサブ垢知りたーい!」


ぴよち

「人が少ないから、2人っきりでゆっくりできるわ・ネ」


ブンちゃん

「こうやってガヤガヤしてる配信もあたしは好きだよ!」


「なるほどな~、さすが黒くんだわ~。なんでも知ってるんだな。でもさすがにイタイっしょw 俺はいいやw で、黒くんもサブ垢持ってんの?」


黒夜/低音系ボイス

「秘密www」


「えー、いいじゃんw 教えてよw」


パプリカ

「大手イケメン2人のイチャイチャ尊い」


麗華

「黒夜さんと仲良しだよね~」


ななか

「満足~」


 気乗りしなかったので、今日は早めに配信を切り上げた。


 サブアカウントか…。自分で自分にブーストするのは、俺はダサいから絶対やりたくない。リスナーから愛されている証拠がブーストやランキング順位なのに、自分で順位を押し上げるために自分に課金するとは。


 黒くんのような大手が知っているということは、割とメジャーな方法なのだろう。ということは、今ランキング上位の配信者もセルフでブーストしている人がいるということか。


「あり得ねーよなぁ」


 プライドがないんだろうか。そこまでして獲った1位になんの意味があるんだろう。


 だけどサブアカウントで、こっそり誰かの配信を聞き行くのは楽しそうだ。


 1位への壁は厚いと言えど、ファン数も増え、俺の知らないところで俺を知っているリスナーが増えた今、好き勝手に振る舞うためには必要なものかもしれない。


 どうせ捨てアドでTwitterなんていくらでも作れるんだ。試しにサブを作ってみて、つまらなかったら辞めたらいい。


 早速、もう一つのアカウントを作成した。


「名前どうしよっかな~……」


 本命のアカウントが特定されないような名前がいいだろう。だけど、俺はネーミングセンスがないから、すぐ特定されかねない。


 悩んだ挙句、サブアカウントを「次郎」と名付けた。本名でも良かったが、何かあった時にバレると厄介だ。


 作りたてのサブアカウントで、FORKに入ってみることにした。

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