10.人目が気になる

「外で配信は初めてのことなんで、なんだか緊張しますね」


呉井心

「あの真面目な只野さんが不審者になるとはw」


いちご

「電話しているフリをすれば、不自然じゃなくないですか?」


ぴゑんマン

「只野人間、今日、不審者になる……www」


「ちょっと笑い事じゃないですって。怖いこと言わないでくださいよ!」


 小声でブツブツとスマホに向かってしゃべっていたら、あっという間にコンビニに着いた。


「あっという間に着いちゃいましたよ…。ていうか、彼女がこの時間帯もいるかは、実は僕知らないんですよね。夕方しか来たことなかったので」


呉井心

「シフトまで把握してたらそれこそ怖いよw」


いちご

「そうですね、いたらラッキーくらいでお菓子でも買って帰りましょう」


呑兵衛@酒に呑まれる全ての人に愛を

「彼女がいたらハッピーで酒が飲める。彼女がいなかったら自棄になって酒が飲める。どっちにしても酒の肴」


児島

「呑兵衛おっさんは呑むことしか考えてないのな」


麗華

「今日はおつまみも忘れずにねー」


 スマホをチラチラ確認しながら店内を確認する。夕方の込み具合からすると、だいぶ落ち着いた様子だ。


 彼女の姿を探してみるが、レジにはいつものおっさんしかいなかった。


 うろうろと歩きながらボソボソと小声でスマホに話しかけた。


「ちょっと彼女の姿は見当たらないですね」


呉井心

「なんだとー!!!」


古美

「ちょっと残念ですね」


グングンぐると

「他の店員に話しかけて彼女の行方を聞きましょう!」


ペロ

「じゃあお酒買って早く一緒に呑もぉ」


ぴゑんマン

「諦め……きれナイッ!!! トイレ掃除とかしてるかもしれナイッ!!!」


児島

「男は引き際も肝心だ」


 なんとなく気になって、フラフラとトイレを確認しに行った。


「トイレは掃除中の札とかないんで、いないっぽいですね」


グングンぐると

「真面目かっ!!!」


古美

「いたらいたで、どうかわしていたんでしょうか…」


いちご

「なんか変態」


「と、とりあえず、何買いましょうかね~」


 そう呟くものの、カゴにはしっかりビールを入れている自分がいた。麗華さんがコメントしてくれたように、今日は忘れずつまみも買おう。あと心配だからソルマックやそれ系のアイテムも。


麗華

「あ、ねー、なんか新しい雑誌とかある?」


呑兵衛@酒に呑まれる全ての人に愛を

「おじさん雑誌コーナーはオトナのコーナーにしか用がないなぁ」


児島

「おっさん……」


ペロ

「あたし今激辛ポテチ食べてるよぉ」


 不自然じゃない動きをするためにはどうしたらいいのか。もうこの動きが不自然じゃないか? そう自問自答しながらも、彼女が現れないかと期待している自分がいて、意味もなく店内をうろついていた。


「あー激辛ポテチ、ネットで話題みたいですね。自分もこの前買った気がするんですけど、その後どうしたっけな。まだあるかなぁ」


 BGMの音が耳につく店内で声を出すのが少し恥ずかしい。さらにトーンを落としてスマホに話しかけた。


 コメントはだらだらと流れていくが、そういうのもあって構っている余裕がなかった。


「ちょっと家じゃないんで黙りがちですみません。やっぱ、彼女いないっぽいんでそろそろ退散しますね」


 断りの文句を呟いて、レジに向かおうと顔を上げた。


「あ……いた」

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