9.煽るの上手いんだから…

呉井心

「ハロハロー! 昨日だいぶ酔ってたけど大丈夫~?」


「クレしんさん今晩は! いやぁ、昨日はお恥ずかしいところを見せてしまいました」


いちご

「こんばんは。二日酔いとか大丈夫ですか?」


古美

「今晩は。只野さん、体調大丈夫ですか?」


 入室早々、いつもの面々が心配してくれた。素性なんて知らないのに、こうして心配してくれるのは本当に嬉しい。


「皆さん、今晩は。会社でも怒られちゃうくらいには二日酔いでしたが、なんとか一日終えましたよ~。久しぶりの二日酔い、しんどかったです」


児島

「よう、生きてるか?」


呑兵衛@酒に呑まれる全ての人に愛を

「いよっ! どうだい、今夜もやってるかい?」


「あ、呑兵衛さん今晩は。昨日は醜態をさらしてしまってすみませんでした」


 一瞬ビクッと反応してしまったが、気づかれないように平静を装って挨拶をした。


ねぐせ君

「毎晩飲んでたらアル中になっちゃいますからね~」


呑兵衛@酒に呑まれる全ての人に愛を

「なんだ、そうなのか。今夜もやってるのかと用意してきたのに…」


 あの興奮がまた見れるのかと思うと、俺の中でぐぐぐと好奇心が頭をもたげてきた。


「いやぁ、楽しかったですけどね~」


麗華

「今日はどんなおつまみほしーですかー?」


ペロ

「今夜も一緒に呑みに来ましたぁ」


月(るな)

「え、飲まないんですか? 陽気な感じの只野さんの声が好きなのに」


 昨夜来てくれた人たちが続々と集まってきた。そして飲むことを求められている。どうしよう。


「皆さん、今晩は。今日はビール買ってくるの忘れちゃったんですよ~。すみませんね」


グングンぐると

「お、じゃあ泣き黒子の彼女がいるコンビニにこれから買いに行くのか!?」


ぴゑんマン

「それはワクワクのドキドキのムラムラ!!」


児島

「煽るなよ」


呑兵衛@酒に呑まれる全ての人に愛を

「意中の女性に会ってハッピー、アルコールを飲んでハッピーのハッピーセットだな。おじさんワクワクしてきたよ」


「えっ、いや、ちょっと」


 慌てたフリを装って答えてみるものの、内心では自分でもワクワクしていた。


「夕方コンビニ寄った時に、その誘惑を振り切って帰宅したんですから、やめてくださいよ~」


麗華

「えー、配信したまま行こうよ」


月(るな)

「私も泣き黒子あるんですよ」


呉井心

「配信したままコンビニ行くのは楽しそうだけどな~」


いちご

「でも今日も呑むのは心配ですよね」


グングンぐると

「案ずるより、産むが安し! このまま買いに行きましょう!」


古美

「正しくは、案ずるより産むが『易し』ですよ」


児島

「まぁ泣き黒子の彼女には会ってみたいよな」


「いや、でも、ほら、さっき寄ったのにまた来たってなったらなんか不自然じゃないですか? それにFORKは映像見えないんですし、会うって言ったって」


ぴゑんマン

「細かいこたぁいいんですヨ!!!」


ペロ

「早く一緒にお酒呑も」


呑兵衛@酒に呑まれる全ての人に愛を

「最後の一押しをおじさんがしてあげようじゃないの!」


 そのコメントのあとに浮かんでくる課金アイテムのモーション。今日のはハートがたくさん浮かんでくるファンシーなものだった。


「え、ちょっと、呑兵衛さん! そんな、そしたら行かないわけにはいかないじゃないですか~」


 困ったふうに言ったつもりだったが、きっとニヤけているのが伝わってしまった気がする。コメントを眺めながら着替えていた俺は、スマホとカギを持ち、すんなりと玄関を開けた。

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