5.お仕事お疲れ様です

 PCで流行りのJ-POPをメドレーで流しながら、リスナーが来るのを待っていた。


 他の配信者のところへ行くと、それらしいBGMが流れている。俺の配信に何が合っているのか分からないが、何かしら流してみるかと思ったのだ。付け焼刃だが真似してみれば、誰かがアドバイスしてくれるかもしれない。


呉井心

「ハロハロー! 今日もやってんね!」


「クレしんさんど~も~。今日も一日お疲れ様です。いやぁ、今日も仕事で疲れました~。今年から来ている派遣の女の子がいるんですけど、割とかわいいんですよ~。今まで殺伐としていた職場だったんで、結構嬉しい変化です」


呉井心

「ちょっとBGMデカいかも! 只野さんの声が聞こえづらいよー!」


「あっ、すみません。えっと、このくらいで大丈夫ですか?」


 慌ててボリュームを絞った。音のバランスは俺が良くても、リスナー側だとそうじゃないのか。気をつけないと。


呉井心

「おっけーおっけー! こーゆー音楽好きなの?」


「いや、好きとかじゃないんですけど。クレしんさんとか、みんなの枠に行くと音楽が流れてるから僕も流してみようかなって思って。どうですかね?」


呉井心

「只野さんの好きな音楽でいいのに~。気にせず、好きにやったらいいんだよ!」


「ははは。そう言ってもらえると心強いです。でも僕、あんまり音楽詳しくないから教えてくれますか?」


いちご

「お邪魔しまーす。今日は音楽かけてるんですね」


呉井心

「近くだったらオススメのCDとか只野さんに持っていけるんだけどなー」


「いちごさん、今晩は。そうなんですよ~」


 大したことのない変化でも、こうやって気づいてくれることが嬉しい。


ぴゑんマン

「初めてやってきましたぴゑんマンだよ!」


「わぁ! 初見さんだ! はじめまして、只野人間です!」


呉井心

「おっ! またもやオレ好みのネーミングのやつ! 捕まえて!」


いちご

「ぴゑんマンさんはじめまして~」


ねぐせ君

「こんばんはー!」


「ねぐせ君、今晩は! 今、初見さんが来てくれたんですよ! めちゃくちゃ嬉しくてテンション上がってます!」


ぴゑんマン

「入っただけで喜んでくれるなんて~そんなそんな~ボクは大したことある人間ですねっ」


児島

「どーもでーす」


「えっ、また初見さん!?」


 今日はなんだろう。初めての人が立て続けに入ってくる。なんだか落ち着かない。


ねぐせ君

「今日は大漁ですね~」


呉井心

「只野さんのネーミングがいいんじゃない?」


「いやっ、えっと、焦ります。いや、今、めっちゃ焦ってます」


児島

「落ち着け~! ハイ、深呼吸」


ぴゑんマン

「スーーーーーっ!!!!!、ハーーーーーっ!!!!!」


いちご

「ぴゑんマンさんが深呼吸してどうするんですか」


「あははは。あの、ありがとうございます。なんかちょっと落ち着く気がします。良かったら仲良くしてくださいね!」


ねぐせ君

「相変わらずの真面目キャラですね~良さですね~」


古美

「こんばんは」


「あっ、古美さんも来ていただいてありがとうございます。今初見の方が2人いらっしゃってて……」


 もう少し、もう少しと思っているうちに遅い時間になってしまった。だがそれもまた楽しい。平日の配信は気をつけるか、やらないか考えなくちゃいけないな。緩む口元をさすりながら眠りについた。

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