第539話 どう戦うか、それが問題だ
〈Earth〉『ほんとだ!大人っぽくなってる!』
〈Zero〉『よく分かるな・・・』
〈Jack〉『あたしはまだあんまりピンと来てないよーーーーw』
〈Zero〉『仲間!w』
〈Earth〉『全然違うよー!でもたしかに、リアルゼロやんって感じだね☆』
〈Earth〉『イケメン!』
〈Zero〉『いや、お前に言われても・・・』
〈Earth〉『んー?』
〈Earth〉『でも、他のみんなも可愛くなったし、あーちゃんも負けてらんないぜ☆』
〈Zero〉『お前は何と張り合ってんだ・・・』
俺、ジャック、あーす。
俺の記憶では過去にない組み合わせでのパーティが組まれた、最初の会話。それは早速作戦会議に入ったと見せかけて、実はようやく合流したあーすの感想からスタートという、とてもとても世間話の雰囲気から始まった。
しかしほんと、なんで分かるんだ?
みんなが分かる理由が俺には分からん。
〈Zero〉『で、どう戦う?』
でもまぁ、そこを考えてもしょうがないからな。
そう思って、俺は話題を本題である作戦に切り替える。
もちろん意見を聞きたいのは、このパーティのリーダーであるジャック。
しかしなんかあれだな、自分が作戦立案の中心じゃないのって、久々だな。
〈Jack〉『あたしがアタッカーで行けばたぶん勝てるとは思うんだけど、それでいっても面白くないよねーーーー』
そしてお目当てのジャックから早速返答があったけど、すごいなジャック。自分がアタッカーでいけば勝てるって。
いや、でもあれはそれほどの強さだった。
ロキロキがその強さは分かっているだろうが、あれはきっと、リダとぴょんは初見じゃ止められない。というか、ロキロキだって分かっていても止められない。
可能性があるとしたら高速でジャックの強化を邪魔することだろうが、初戦の相手パーティで移動速度を上げられるのはロキロキのみ。
一人だったら、あーすと俺だ止められる。
つまりジャックは止められない。
だからこそジャックは「面白くない」って言ってんだろな。
しかし。
〈Zero〉『でも1戦目はぴょんもアタッカー性能積んでくるだろうから、ジャックもアタッカーでいんじゃねーか?』
そう、1戦目の相手はリダ・ぴょん・ロキロキ。
他のチームと違って後衛のぴょんは魔法アタッカーが本業のウィザードだ。回復魔法も使えるとはいえ、ぴょんの性格を思えばアタッカー寄りにやってくるのは想像するに難くない。
そうなると向こうのアタッカーは2枠になる。
ならばこちらも同じく2枠用意するのがいいだろう。
〈Earth〉『ジャックが・・・アタッカー??』
しかしこの話が全く見えない者が約1名。
でもまぁ、これは普通の反応だ。
サポーターはその名のとおり支援役。
それがアタッカーって言われても、意味わかんねーよな。
俺だって最初は意味が分からんかった。
あーすなら一層意味不明に思うのは必定だ。
〈Jack〉『説明するより見た方が早いかーーーー』
〈Zero〉『うむ。あれは見ないと信じられんw』
〈Earth〉『むー?』
〈Jack〉『じゃあ1戦目だけはアタッカーやるねーーーー』
やはり百聞は一見に如かずだろう。
ということで、はてなを浮かべるあーすのために、1戦目のジャックアタッカーが確定した。
支援受けたガンナーがどんな感じかは気になったけど、それは2戦目以降のお楽しみ、だな。
〈Jack〉『あーすはロキロキを止められればベストだけど、とりあえずゼロやん狙ってくる相手からゼロやんを守るイメージでーーーー』
そしてまた作戦会議が再開する。
今回の敵の中で脅威は当然ロキロキ。相手方唯一の経験者という点もあるが、やはり持ってる知識量が段違い。
だからロキロキをあーすに止めてもらうのは、さすがに荷が重いだろう。
それはジャックも分かってたようで、本命は俺のガードという指示を出していた。
〈Earth〉『ゼロやんを守ればいんだね!任せろ☆』
〈Earth〉『何があっても、あーちゃんが守ってあげるね☆』
そんなジャックの指示に、ムカつくくらい爽やかな笑顔を浮かべているあーすの中の人の顔が浮かんだが、まぁあーすでもこれくらいは出来るだろう。期待は出来ないけど。
〈Zero〉『よろ。じゃあ俺は、とりあえず落としやすいぴょんからいくか』
やる気を見せるあーすに一言応えつつ、俺は俺で自分の予定をジャックに伝える。
その提案に。
〈Jack〉『だねーーーー』
〈Jack〉『リダはあたしが落とすねーーーー』
俺と考えが同じだったのだろう、ジャックの同意が伝えられ、ジャックの狙いも告げられる。
リダは盾だから当然硬い。昼過ぎの記憶から判断して、
そしてそこをジャックが抑えてくれるなら、俺は無防備なぴょんを狙い放題。
もちろんロキロキは俺を狙ってくるだろうけど、そこはあーすに守ってもらってなんとかする。
そうやってぴょん→リダと撃破して、最後に残るロキロキを撃破する。
これが勝利への青写真だろう。
きっとロキロキもこう読んでくるだろうが、アタッカージャックを見たことがない二人では、読まれたところできっと勝てる。
〈Earth〉『ジャックが、リダを・・・??』
でもやっぱり、あーすにはその青写真は見えやしない。
〈Zero〉『マジもんの撲殺だぞw』
〈Earth〉『撲殺天使・・・?』
〈Jack〉『見た目男だから違うかなーーーーw』
そんな混乱したあーすからはあの口ずさみたくなるメロディーを彷彿とさせる言葉が出てきたが、ジャックがLA上は男ということでそれは否定される。当たり前なんだけどな!
ちなみに今のパーティメンバーは、見た目だけなら圧倒的に天使は〈Earth〉で間違いない。
アイドルのようなルックスを備えた緑髪の美少女、それがLA上の〈Earth〉なのだから。
とはいえ、こいつに撲殺されて復活させられるのはお断りだけどな!
〈Zero〉『ジャックの殴るとこは最後に残るだろうロキロキ戦で見れるだろうから、よそ見すんなよ?』
〈Earth〉『了解だぜ☆』
〈Zero〉『とにかく迷ったら指示を仰ぐことな』
〈Earth〉『もー、過保護だなー☆』
〈Zero〉『んなわけあるかい』
〈Zero〉『ちゃんとやってほしいだけだっつーの』
〈Earth〉『頑張るぜい☆』
〈Jack〉『あたり強いなーーーーw』
〈Earth〉『ゼロやんのツンデレーション☆』
〈Zero〉『いや、俺がいつデレたってんだおい?』
〈Jack〉『あははーーーーwま、とりあえず向こうもリダとぴょんは初PvPだからねーーーーやってみよーーーー』
〈Earth〉『おー☆』
〈Zero〉『うい』
そんなこんなで、あーすに一抹の不安を覚えつつ、俺たちは1戦目のスタンバイを完了し——
〈Gen〉『それでは各チーム、検討を祈る!w』
〈Jack〉『健闘でしょーーーーw』
〈Daikon〉『健闘』
〈Loki〉『健闘っす!』
〈Yukimura〉『健闘では?』
〈Hitotsu〉『検討・・・?』
〈Yume〉『わたしたちに何考えて欲しいって祈ってるの〜?w』
〈Earth〉『祈られた☆』
〈Soulking〉『さすが名ギルドリーダー、締まらない始まりだなー^^』
〈Pyonkichi〉『決闘じゃー!!』
〈Senkan〉『もう言葉ちげーよ!w』
〈Zero〉『健闘を祈る!w』
〈Gen〉『取られた><』
ギルドチャットで発された、リダの盛大な誤字によって、これから戦う仲間同士で最後に一盛り上がりしたりしつつ、俺たちはそれぞれの戦いへ向かうのだった。
さぁ、俺たち戦場が、今幕を開ける——
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