第536話 場を繋ぐ男の奮闘

〈Soulking〉『みんなキャラメイクうまいねっw』

〈Soulking〉『最後の出番の奴はずっとぶつぶつ言って作業してるけど、ちゃんとリーダーの面目保てるのかね?w』

〈Jack〉『大トリの変身気になるねーーーーw』


 4番手の俺の変身も終わり、なぜか〈Daikon〉だけでなく〈Yukimura〉、〈Yume〉、〈Hitotsu〉、〈Senkan〉と他のメンバーも〈Zero〉の近くに来て〈Zero〉の姿をやたらと見てくるというなんだこれな状況の中、ありがたいことにログ上ではお姉様方が話を進めてくれていた。

 だが、そんな会話が起こる中——


〈Pyonkichi〉『終わったー!!!』

〈Pyonkichi〉『なんだあの戦闘システム!おもしれーな!』

〈Loki〉『お疲れ様っす!!』

〈Earth〉『ええっ!?ぴょん早い!』


 すっかり忘れていたが、突如割って入ってきた、よくよく考えればここまでの静寂が奇跡的としか思えない奴が一人。

 ここでもあれか、遅れてきたから——


〈Pyonkichi〉『ようやくヒーローが合流するぞ!!』


 やっぱりか。

 しかしほんと珍しくずっと静かだったけど、そんなに新システムにハマったのか。正直ウィザードは不遇かなって思ってたけど、楽しいと思えるなら何よりだな。

 これはPvP活動が増えそうだ。ふふふ。


〈Loki〉『みんなこっちっす!』

〈Pyonkichi〉『おっけ!』


 そしてあーすを置き去りにする形になるのだろうが、チュートリアルが終わったであろう地点から俺たちがいるところまで、ロキロキがぴょんの案内を申し出る。

 二人が合流したらこのギルドのメンバー12人中11人が合流か。

 ……なんというか、変身アイテム一つでこんな盛り上がれるんだもんな、流石【Teachers】俺たち、だなぁ。


〈Yume〉『うるさいのついに来るか〜』

〈Pyonkichi〉『なんだよ、あたしがいなくて寂しかったくせにー』

〈Yume〉『?^^』

〈Pyonkichi〉『^^』

〈Yume〉『(*'-' )、』

〈Pyonkichi〉『( ´Д`)y━・~~』

〈Yume〉『(´・_・`)』

〈Zero〉『やかましい!w』

〈Pyonkichi〉『*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*』

〈Pyonkichi〉『おいおいおいおい!ゆめから始まってんだからあたしが返してからツッコめよ!』

〈Jack〉『早速ぴょんぶり炸裂だねーーーーw』

〈Zero〉『監督責任を問う!!』

〈Senkan〉『( ˘ω˘ )?』

〈Zero〉『おい!w』

〈Loki〉『せんかんさんまで!w』

〈Daikon〉『(*・ω・)ノ』

〈Zero〉『ええっ!?』

〈Hitotsu〉『だいさんまで!?』

〈Yukimura〉『私も打てばいいですか?』

〈Zero〉『何でだよ!!w』

〈Jack〉『ゆっきーーーーwww』

〈Soulking〉『天然勝ちっw』


 流石だなぁ、たしかにそう思ったの事実だが、あまりに早すぎるぴょんの登場効果に俺は自身の変身早々、結局いつもと同じ対応を求められた。

 しかしほんと、何と意味のない応酬か。

 悪ノリする奴まで出てくるし……って——


「なんでだいまで真似してんのっ」

「出番かと思って?」

「キャラちげーだろっ」

「むぅ」

「可愛いかよっ」

「ふふん」


 悪ノリしてきた奴の一人がすぐ後ろにいたので、俺は振り返って痛烈にツッコんだのだが、まさかのボケ返しからの頬膨らませ「むぅ」の可愛さに、結局強く怒れなかった。

 いや、だって可愛いんだもん。くそぅ……。

 後でお仕置きだな、そう思いながら俺は再度モニターに目を戻す。

 そこには——


〈Yukimura〉『(・∀・)』


 一瞬、我が目を疑った。


〈Zero〉『って結局乗っかってんのかい!w』


 だが正気を取り戻した俺は、そこに映っていたまさかまさかのログを理解し、自分でも驚くほどのスピードでキーボードをツッコミをタタタタンッ入れましたとも

 そんなちゃんと仕事したのに。


〈Pyonkichi〉『ゆっきー打ってから微妙に間があったな。ちゃんとしろ!』


 振り返りと一瞬の思考停止時間があったが故。謎の叱責を受ける羽目になる始末。


〈Zero〉『理不尽かよ!w』

〈Senkan〉『まぁ得てして人生は理不尽だわな』

〈Yume〉『世知辛いのが現実だよね〜』

〈Pyonkichi〉『ままならないから人生は楽しいんだろうが!』

〈Hitotsu〉『タメになる言葉ですね・・・!』

〈Zero〉『サランラップより薄っぺらい言葉に騙されんな妹よ!』

〈Yukimura〉『むむ?皆さんの言葉は嘘なのですか?』

〈Zero〉『惑わされんな!ケースバイケースだ!』

〈Zero〉『ただ少なくとも今この時の発言においては中身のないハリボテだ!』

〈Jack〉『ぴょんがきてゼロやん楽しそうだねーーーーw』

〈Soulking〉『若者は元気だっw』

〈Daikon〉『水を得た魚ね』

〈Zero〉『君らの見てる世界線俺と違うよね!?』

〈Yukimura〉『私はゼロさんがいると楽しいです』

〈Loki〉『あ、俺も楽しいっす!w』

〈Hitotsu〉『お兄ちゃん人気者・・・!』

〈Zero〉『あ、えと・・・お前らは素直だな!ありがとう!』

〈Pyonkichi〉『あたしも楽しい☆』

〈Yume〉『超楽しい\(^o^)/』

〈Senkan〉『あちしも(^O^)』

〈Zero〉『お前らは黙ってろ!』

〈Pyonkichi〉『扱いがひどいよぅ(´;ω;`)』

〈Yume〉『ぴえん(;ω;)』

〈Senkan〉『ぱおん( ´_ゝ`)』

〈Zero〉『鬱陶しいわ!!』

〈Jack〉『仲良しだなーーーーw』

〈Daikon〉『かまってもらえてよかったわね』

〈Zero〉『え、待ってだい、それ俺に言ってる!?』

〈Yume〉『ゼロやんかまちょだな〜w』

〈Pyonkichi〉『しょうがねぇやつだな!』

〈Senkan〉『可愛い系から大人っぽくなったのに、ギャップ狙いかこのモテ男め☆』

〈Pyonkichi〉『で、これどこ変わってんの?』

〈Loki〉『え、けっこう変わってると思ったんすけど!?』


 そしてもう、色んなやりとりにはコメントすらしないが、気づけばいつの間にか俺の目の前に二人の小人たちが立っていて、驚くべきほどにスパッと話が変えられた。

 足元から見上げてくる二人の小人族の男の子たち。

 俺の見た目を観察しているようだが、ゲーム内においても〈Pyonkichi〉と〈Loki〉の眼差しは、じっと俺を見ているように見えた。


〈Daikon〉『身長、髪型、輪郭、瞳の色、耳の形、肩幅が変わってるよ』


 なんだと!?


〈Jack〉『そんなにあったんだーーーー!www』

〈Loki〉『なるほど!』

〈Pyonkichi〉『・・・ほんとか!?w』


 だいの言葉にジャックが俺の気持ちを代弁し、方や納得し、方や疑問をぶつけ出す。

 いや、でも俺と付き合いの長いぴょんの方が分かんなくて、加入間もないロキロキの方が分かるってどういうことやねん。……俺自身人のこと言える立場じゃないけどね!


〈Zero〉『ってか、俺の見た目の話はもう終わったろって!w』

〈Zero〉『リダ!リダの変身は!?』


 そして危うく俺まで完全に脱線しかけたところで、何とかギリギリ、残りライフ2%くらいのイメージで踏みとどまって本題に戻してみる。

 そんな俺の願いが届いたのか——


〈Gen〉『パパパ パパパ パパパパーン!!』

〈Gen〉『はーっはっはっはっ!!!』

〈Gen〉『傾注せよ!!!!!』

〈Gen〉『大魔王☆降★臨☆』


 キ、キターーーー!!!!!


 そのログが、俺にこの繋ぎのスーパーツッコミ時間タイムが終わりを迎える事実を教えてくれた。

 僥倖疲れた……!


 さぁリダよ、いい変身を見せて休憩をくれ……!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る