第523話 いざ冒険の始動です
〈Yukimura〉『おはようございます』
〈Jack〉『おはよーーーーw』
〈Loki〉『おはよっす!』
〈Daikon〉『おはよ』
〈Zero〉『うぃ』
11月14日土曜日、午前10時過ぎ。
夜更かしの夜を越えて迎えた朝、俺たちが起きたのは9時過ぎだった。
その後珍しく寝惚けていただいのために朝ごはんを作ったり一緒に食べたりしてから、約束の通りだいと一緒にログインし、今に至る。
ただログインしたとはいえ、まずは昨夜のチュートリアルの内容を確認し合っていたので、結局まだ冒険には出ていない。
でも、昨夜と違って先に来ていたジャックやロキロキが既に色々拡張データの話をしていたので俺とだいもそれに参加することができ、情報はさらに集まった。
そんな中ゆきむらがやってきて——俺たちの会話はネタバレ防止のために一旦終了だ。
〈Yukimura〉『皆さんもう新しい街に行かれてるんですね』
〈Jack〉『だねーーーーwゆっきーも早くおいでよーーーーw』
〈Loki〉『是非色々自分の目で見てくださいっす!w』
〈Yukimura〉『ちなみに、どこから行くのですか?』
〈Jack〉『コンフォルセから船だよーーーーw』
〈Zero〉『迷子なんなよw』
〈Yukimura〉『気をつけます。ご心配ありがとうございます』
で、やってきたゆきむらにみんなでアドバイスをしたりする。
まぁでもゆきむらも何だかんだちゃんとゲーマーだからな。
勝手に追い付いてくるだろう。
「さて、じゃあそろそろ行くか」
「うん。とりあえずパーティ戦闘に慣れないとね」
「うむ」
ということで、俺たちも先にフィールドエリアに進んだジャックやロキロキに追いつくべく、だいと二人パーティを組んでついにパダーノヴァ平原に進出開始。
「こっからはこの視点ってことか」
「戦闘があるし、当然よね」
「探索もちょっとやりづれーな」
「慣れるしかないでしょ」
外に出て分かったのは、街中と違って戦闘のチュートリアルと同じく、キャラクターの背中が画面に近づいて、俯瞰視点でフィールドを見ることが出来ないということだった。
当然この視点は昨日が初だったからまだ慣れるものではない。
俯瞰視点ではなくなったせいで、そこらへんに生えている植物が今までよりもやたらでかく見えるし、距離感も掴みづらい。
これまでだったらまずじっくりと風景を見たりしてたけど、その余裕が今はない。
もちろんパッと見で今までもあった草原エリアなんかと基本は似ているし、牧歌的な風景だなとは思うけど。
「最初のエリアだから障害物少ないのかもね」
「え」
「あ、でも正面にあるあの木は今までなかったかも」
「マジ? よく見てんなー」
「長いことこの世界を見てきてるんだし、普通じゃない?」
「いやいや……」
そうだった。だいは記憶力に定評があるんだった。こいつと記憶力で勝負しても勝てるわけがないのだよ。
だいの普通は、俺の普通じゃないのだ。
「っと、モンスターだ。強さは……まぁこの辺じゃ当然格下か」
「だね。とりあえず狩ってみよ」
「おう」
風景について話しつつ少し街から進んだところで、昨日チュートリアルで見た羊型モンスターが何体か見えたので、いよいよパーティ戦闘が出来そうだった。
盾なし紙装甲パーティだが、格下ならば大丈夫だろう。
「いくぜ」
「うん」
だいに一声かけてから、俺は構えるコマンドをして、照準を意図的に見える範囲で1番遠くの敵に合わせて……
「そんな遠くても届くんだ」
「うむ。照準マークの中心に7ミリくらいのセンターマークあるんだけど、これより敵が小さくなってなきゃ届くっぽい」
「つまりどれくらい?」
「体感で、前までの倍」
「すごいね。ベストショットとかの判定は?」
「たぶんヘッドショットがベストショットになるっぽい。この辺はモンスターの種類によるのかもだけど」
「ほうほう」
俺はちょっとだいを驚かせるつもりで、昨日検証した射程範囲を披露してみた。
ちなみに1発目は流石に遠すぎていいとこに当たんなかったのか、ダメージ量は大したことなかったけど、近付いてくるにつれてモンスターの狙い所もわかりやすくなったので、話しながら2発目、3発目と連射してHPを削り、トドメの4発目にスナイパーショットを発動してモンスターを撃破した。
「すごいね」
「まぁ格下相手の芸当だよ」
で、この戦闘をだいが抑揚もなく褒めてくれたけど、お分かりの通り俺はだいに攻撃させる暇もなくモンスターを撃破したわけである。
「でも今のはパーティ戦じゃない」
「あ、バレた?」
「次は私がやる」
「あいあい」
ってことで今度はだいが移動速度を上げた直後、モンスターに近づいて行って、一撃を当てる。
当然モンスターはその攻撃を受けだいに攻撃をしかけようとし、俺も一応構えてみたのだが——
「はやっ」
移動速度を上げていただいはモンスターの攻撃を掻い潜ってあっさり背後を取り、背後からの攻撃にボーナスがはいるシャドウスタッブを炸裂させた。
攻撃は、その2回。初撃とスキル1回。たった2回の攻撃しかしていないのに、あっさりモンスターが倒された。
「やっぱり近接アタッカーは攻撃はえーなー」
「ガンナーがこの速さで攻撃したら反則でしょ」
「そりゃそうだけどさ」
まぁスナイパーショットと違ってシャドウスタッブはだいぶ基本攻撃力が高いからな。
そんなもんか。
さて——
「じゃあさ」
「うん」
分かったのは、俺もだいもそれなりに自分の戦い方のイメージは持てていること。
それと——
「この辺のモンスターじゃ面白みないからさ、もっと先に行ってみようぜ」
そう、やはり技術を高めるのは、難しい戦闘をしてこそだから。
俺は椅子をクルッと回転させて、後ろに座るだいを誘う。
そんな俺に、ゲームの中でにこっと笑う〈Daikon〉とは違い、本人は苦笑いで——
「ノーヒーラーだけど?」
と、何とも真っ当なことを言われたが、今回ばかりは状況が違うからな。
「もち。だって亜衣菜を加えた約束のパーティは、どうせノーヒーラーだろ? ならそのイメージで戦うのに慣れとかないと」
「それは、そうね」
「だろ? ってことで、敵強そうなところを探しに草原デートと洒落込もうぜ?」
でも、俺があえて二人で進む理由を話すと、だいもすんなり了承してくれた。
そのスムーズなやりとりに、俺はさらにちょっと調子に乗った言い方もしてみたりしたけれど——
「平原だけどね?」
「同じようなもんだろっ」
流石生真面目、エリア名をちゃんと覚えていただいに一本取られましたとさ。
ま、とりあえず色々見てから、ジャック・ロキロキとまた情報交換してこっと。
青々とした草原……じゃなくて、平原を駆ける男女ペアを眺めながら、俺たちは新たな冒険を進めるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます