第483話 攻略閑話
〈Reppy〉『あと5分したら来てくれるらしい』
〈Zero〉『ふむ。それで、誰が来るんだ?』
〈Reppy〉『ひ・み・つ☆』
〈Zero〉『は?』
〈Reppy〉『腕は確かだって』
〈Zero〉『いや、で、誰だよw』
〈Reppy〉『俺が誘うからリダ貸しといて』
〈Zero〉『シカト!?』
〈Reppy〉『マジつえーから安心しとけ』
23時14分、レッピーの交渉が成功したらしく、俺はレッピーに言われるまま、レッピーと交代するアタッカーをパーティに誘ってもらうため、一時的にパーティリーダーの権限をレッピーに譲渡した。
しかし5分後に来るとして、そこから戦略の話をしたら下手したら突入が0時直前になりそうだな。
さっきの流れを受けてのレッピーの提案だから、ふざけた奴は誘わないだろうし、ここまで強いって言うんだから人選に心配はないが……やはり誰が来るか分からないのはちょっと不安ではあった。
自慢じゃないが俺はこのサーバーで顔が広い方だが、レッピーも最古参勢なので顔が広い。
だからこそ俺の知らない知り合いがいたとしても不思議はないのだが……。
まさかレッピー、サーバー最強のファイターと目されるあの人と知り合いなんてことねーよな……?
と、誰が来るのだろうかと考えていると。
〈Daikon〉>〈Zero〉『誰だろうね』
パーティチャットで聞けばいいのに、いじらしくだいから個別チャットがやってきた。
まぁ基本内弁慶……いや、内でも弁慶ではないけど、内輪でしか喋れない奴だもんな。
前より成長しているとはいえ、こうして同じパーティにいながら個別チャットしてくる辺り、LA内じゃまだまだ俺についてくるちびっ子感は否めない。
ちびっ子。ちびっ子だい。……ちびっ子だいか……。
姪っ子の真琴ちゃんみたいな感じかなー、ちびっ子だい。……うわ、考えただけで鬼可愛い……。
って違う違う!
〈Daikon〉>〈Zero〉『離席?』
〈Zero〉>〈Daikon〉『いるいる!w』
〈Zero〉>〈Daikon〉『強いファイター誰だろなって考えてた!でもヤコブだったら笑うなーw』
ちょっと変な妄想をし出して返事が遅れた俺に、だいの追いチャットがやってきて、俺は慌てて妄想を捨てて会話を繋げた。
〈Daikon〉>〈Zero〉『ヤコブさんならさっきから別なパーティでやってそうだから、厳しいんじゃないかな?』
〈Zero〉>〈Daikon〉『あれ?あいつもここいた?』
〈Daikon〉>〈Zero〉『うん、さっき見たよ』
〈Zero〉>〈Daikon〉『あ、ホントだ。フレリスト見てもここいるってなってるわw』
〈Daikon〉>〈Zero〉『でしょ?』
〈Zero〉>〈Daikon〉『よく見てるなーw』
〈Daikon〉>〈Zero〉『知ってる名前いたら目で追っちゃうじゃない』
〈Zero〉>〈Daikon〉『まぁそれは分かるw』
〈Daikon〉>〈Zero〉『うん、それでね、ちょっと提案なんだけど』
〈Zero〉>〈Daikon〉『うん?』
〈Daikon〉>〈Zero〉『次の50%以下にする時の攻撃、私の
〈Zero〉>〈Daikon〉『あ、戦略の話か』
〈Daikon〉>〈Zero〉『うん』
〈Daikon〉>〈Zero〉『それで、私が減らして、後半戦スタートしたら』
〈Daikon〉>〈Zero〉『別なアタッカーの人に初手で
〈Daikon〉>〈Zero〉『30%以下くらいまで削って』
〈Daikon〉>〈Zero〉『最後にゼロやんの
〈Daikon〉>〈Zero〉『順調なら後半戦のトリック回数2回でいけると思う』
〈Daikon〉>〈Zero〉『私もトリックの時極力被弾抑えるようにするし』
〈Daikon〉>〈Zero〉『どうかな?』
ずらっと並ぶだいからのメッセージを、俺は改めて読み返す。
たしかにだいの考え通り戦えれば、上手くやりゃ4分で撃破出来そうな火力重視な攻略が、そこには書かれていた。
〈Zero〉>〈Daikon〉『なるほど』
〈Zero〉>〈Daikon〉『力isパワー的な作戦ってことか』
そんなだいの戦略に対し、俺はパワー系の作戦だなって言ったつもりだったんだけど——
〈Daikon〉>〈Zero〉『それはよく分かんない』
ここはバッサリ切られましたて——
〈Zero〉>〈Daikon〉『ま、まぁ要はゴリ押しってことだろ!w』
もっと分かりやすい言葉に言い換えてみたんだけど——
〈Daikon〉>〈Zero〉『違うよ。最短ルートで被ダメ抑える作戦だよ』
どうやら根本的に発想の着眼点が違ったらしい。
でも殴られることを織り込み済みみたいな作戦だけど、これが被ダメ抑える作戦?
そんな風に疑問に思っていると。
〈Daikon〉>〈Zero〉『作戦のベース考えたゼロやんはすごい』
〈Daikon〉『けど、この編成で時間かけるのはダメージを受けるリスクにしかならないから』
〈Daikon〉>〈Zero〉『リスク減らしてこ』
〈Zero〉>〈Daikon〉『・・・なるほど』
俺はどちらかと言えば安全な橋を渡ることこそがリスクカットだと思っていたが、過酷な後半のマラソン役を経験しただいは、どうやら俺と思っていたことが違ったらしい。
たしかに俺は空砲で遠くからヘイト上げてボスキープ出来てたけど、だいはヘイトが動くたびにボスに近づいてからタゲ取りしなきゃいけなくて、その度に必ず被弾してたわけだもんな。
さっきみたいに不運なクリティカルを連発でもされたら、そもそもどうにもならないか。
……ぽくぽくぽくぽく。
チーン!
〈Zero〉>〈Daikon〉『だい案採用!』
〈Daikon〉>〈Zero〉『じゃあ説明はよろしく』
〈Zero〉>〈Daikon〉『はいよw』
そして俺は少しの思案の末、だいの提案を受け入れた。
そこで返ってきた"らしい"返事に、思わずモニター越しに笑ってしまったのは、当然だいには秘密だぞ。
こんなにLAに真剣で、俺のために作戦の改善も考えてくれてるのに、MMOの肝であるコミュニケーションは俺に任せるあたりがね、ほんともう……可愛いね。
って、これはちょっと親バカか? 彼氏だけど。
とかちょっと一人脳内で惚気つつ。
さて。
机の上に置いたスマホで時間を確認すれば、現在時刻は23時20分。既にレッピーの言っていた5分が経過した時間を迎えていた。
明日も仕事なのに、勝ちたい気持ちを抑えられずやめられないのはゲーマーの
そんな、俺の意識が時間に向いた時——
〈Richard〉『よろしく!w』
軽口と共に現れたのは、とんでもない名前だったのである。
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