第480話 作戦を考える時と夢を見ている時は似てる
〈Zero〉『来てくれそう』
22時32分、連絡を取ったフレンドからの返事があり、俺はだいに朗報を伝えた。
〈Reppy〉『だいさー、お前の男ひどいんだぜ?俺せっかくりさことチェンジで休憩タイムだったのに、ちょっといいからツラ出せよって』
〈Reppy〉『人権侵害で通報していい?』
そして俺の誘いに応えて、マイフレンドレッピーが現れて……いきなりのこの言い草が炸裂する。
もちろん俺はこんなことなんか言ってない。
俺は『面白い作戦考えたから来てくんない?』って声かけただけ。しかもレッピーは二つ返事で『乗った』って言ったくせに、パーティ入った途端これですよ?
そんな奴には毒の一つや二つでも吐いてやろうと思ったら——
〈Daikon〉『こんばんは。よろしくお願いします』
〈Reppy〉『つめた!!!www』
一枚上手はだいだったようで、俺は打ちかけた言葉をキャンセルした。
いや、でも、うん。
さすがだい、レッピーにはそれが一番の反応だな!
……って!
〈Zero〉『その流れのよろしくはダメだろ!w』
〈Reppy〉『許可得たから通報した』
〈Zero〉『すんな!w』
と、のっけからおふざけモード全開な会話になってしまったが、とりあえずこれでパーティは完成。
編成はガンナー俺、ロバーだい、アタッカーレッピー。脳筋もびっくりな編成が完成した。
〈Reppy〉『で、なんだ?レイのサポート有りでも負けたんだろ?俺がヒーラーやっても同じだと思うぞ?』
〈Zero〉『いや、レッピーはアタッカー。後衛は入れない』
〈Reppy〉『ほお』
そして、俺の発言に『は?』って言ってこないあたり、さすがレッピー我が友だと再確認。
〈Daikon〉『それで、どうやって戦うつもり?』
〈Zero〉『うむ。盾は俺がやる』
そしてだいの質問に、いきなり普通に考えて意味が分からないことを言ってやったのだが——
〈Daikon〉『それで?』
〈Reppy〉『ほむ』
さすが
〈Zero〉『もちろん真っ向から攻撃を受けたりなんかしないけど、前半戦は基本ボスのタゲは俺が持つ』
〈Reppy〉『マラソンか』
〈Zero〉『うむ。空砲でヘイト維持しながら、時計回りにフィールドの壁沿いを走って引き回す』
そして俺の続けた説明にレッピーが即座にマラソン戦法だと気づいてくれたのだが、マラソン戦法とは文字通り、ターゲットをキープしているプレイヤーがモンスターを引き連れて走り続ける戦法だ。
この戦法が最も使われるのは、ボスが2体同時なんて時で、片方をマラソンして味方から引き離しつつ、他のメンバーが残る片方を倒すとか、そんな時が基本。もちろん一体しかいないボス相手に使ったりするようなことはほとんどない。
だが今回は例外。
盾役にキープしてもらった正攻法でも、俺とだいでタゲをシーソーさせる戦法でも有効的に戦えなかったからこその、
とはいえ俺だってただただ無策で提案しているわけではない。
〈Zero〉『だいとレッピーは3時と9時の方角とか、対角にいてもらって、俺が引き連れたボスが攻撃範囲内にきたら俺からタゲを奪わないように中位ランクまでのスキルとか、通常攻撃で地道にダメージ与えてくれ』
〈Zero〉『それに合わせて空砲を入れるから、なんかしらセリフも頼む』
〈Daikon〉『私とレッピーさんが位置固定ってことね』
〈Zero〉『ああ』
〈Reppy〉『元から走ってんなら、単発スキル当てて走らせても関係なし、ってことか』
〈Zero〉『うむ』
〈Daikon〉『でもちまちま削ることになると思うけど時間足りるかな?』
〈Reppy〉『だな。10分ありゃいけるだろうが、7分でバフなしだろ?きつくね?』
続けた俺の説明は上手く伝わった。それ故に、二人から来ると思っていた質問がやってきて、俺は小さくほくそ笑む。
〈Zero〉『言ったろ?前半戦はって』
〈Zero〉『後半戦は、だいに盾やってもらう』
〈Daikon〉『ふむ。私がマラソン?』
〈Zero〉『ああ。今度は俺が固定砲台なる番さ』
〈Zero〉『ちなみに50%以下なるとヘイトリセットの技が来るけど、あれでタゲは一番遠いプレイヤーに行くだろ?』
〈Reppy〉『だな。直後の2秒硬直のせいでヒーラーの時何回も殴られたわ』
〈Zero〉『うむ。それでヘイトリセットの2回目以降だけど、たぶんあれは一定範囲内にボスのタゲがいないと使ってくるギミックだと思う』
〈Daikon〉『そうなの?』
〈Reppy〉『一定間隔か、削り具合じゃねーのか?』
〈Zero〉『いや、これまでの戦闘から俺が遠くからタゲ取った瞬間に使ってきてたと思うから、たぶんギミックは合ってると思うよ』
〈Reppy〉『ま、そう言うならそれを前提にやるっきゃねーか』
〈Daikon〉『うん。それで、私はギリギリの範囲内で引きつけながらマラソンすればいいのね』
〈Zero〉『ああ。たぶん1回目に使われる時はだいかレッピーにタゲがいくと思うけど、レッピーにいったらレッピーはだいの方に走って、だいはレッピーの方に走ってトリックでタゲを奪ってくれ』
〈Zero〉『2回目以降のヘイトリセットが来ても、タゲ持ちはだいの方に走って、だいはトリックでキープする』
〈Zero〉『で、レッピーは前半戦と同じく位置固定でタゲ取らないように通常攻撃』
〈Zero〉『俺は前半戦MPほとんど使わないはずだから、サドンリーデスを2回ボスに当てて、倒す』
〈Reppy〉『一定上限カットあっても、サドンリーなら上限カンスト出るか』
〈Daikon〉『当てれる?』
〈Zero〉『そこはまぁ、腕の見せ所だなw』
〈Reppy〉『まー、ゼロやんなら当てるか』
〈Daikon〉『期待してるね』
〈Zero〉『そもそも前半のキープが上手くいくかだけどな!w』
〈Zero〉『ノーヒーラーだから、HP減っても動じないようにw』
〈Reppy〉『武器変えちゃうかも^^』
〈Zero〉『^^』
〈Zero〉『前半で誰か死んだら諦め。後半でだいが死んだらレッピー気合いでマラソンして』
〈Zero〉『俺が死んだらだいのスキルで押し切れないか試してみて』
〈Zero〉『レッピーは死んでも無視』
〈Daikon〉『わかった』
〈Reppy〉『あいあい』
〈Zero〉『そんじゃま、各自スキルのマクロ調整よろ!終わったらやってみよう!』
こんな感じで、俺は頭の中にあった計画を伝え切り、受け入れてくれた二人に心の中で感謝した。
そして、22時45分、準備を終えた俺たちは、いざ無謀な作戦決行へと動き出すのだった。
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