第451話 勝ちたくない戦い
北条真実>【Teachers】『すごい通知たくさんと思ったら、こんばんは!楽しそうでいいですね!』18:42
盛り上がる酔っ払い3人に囲まれる状況に俺が軽く辟易しているところに、新たな会話への参加者が現れる。
神宮寺優姫>【Teachers】『いっちゃんこんばんは。写真を見て好きな人に1票入れるシステムみたいですよ』18:43
北条真実>【Teachers】『えぇ!?好きな人選ばなきゃいけないの!?』18:43
そしてその新規参入者に対し、先に参加していたゆきむらがまたややこしいことになりそうな返事をし、間に受けた真実が困惑する。
さすがゆきむら、語弊を生むぜ!
ここは手を差し伸べるのが、兄の役目だろう。
北条倫>【Teachers】『選ぶのは写真な!誰の写真がいいと思うか選んで、ぴょんに直で誰に投票したいか送れ』18:44
ということで、俺は今日初めてとなるグループへの投稿をしたわけだが——
「さすがお兄ちゃんだな〜」
「よっ! ナイス兄貴!」
「これはいっちゃんもゼロやんに投票かー?」
神宮寺優姫>【Teachers】『ゼロさんこんばんは』18:44
北条真実>【Teachers】『なるほど。ありがとうお兄ちゃん!』18:44
返ってきた言葉たちは、十人十色……いや、酔人単色だから、五人三色だったけど、とりあえずこれで軌道修正は出来ただろう。
ぴょんが変なこと言ってるが、真実なら俺に入れることもないだろうし、案外あーすにいれたり……はないか。となれば投票先はぴょんかゆめかゆきむらか。
そんな分析をしている間にもぴょんのスマホが揺れて——
「3対3対2対1対1対0!」
さっきまでは言ってなかった0票者の存在まで教えてくれた。
しかし1が一つだけ2になったから、真実の投票先はゆめかゆきむらか。
ううむ、これは読めん。
でもとりあえず、先に勝ちを譲りやすくするため、俺も投票しておこう。
そう思って俺は今浮かべてる笑顔とは質が違う、爽やかな笑顔を並べた二人の写真に票をいれるつもりで——
北条倫>山村愛理『ぴょんとゆめの写真に1票』18:47
と、ぴょんの優勝だけでなく、まだ投票してないだいとロキロキ、そしてぴょんがみんなゆめに投票しても逆転してもらえるように、俺は二人への票を投じた。
で、その連絡に気づいたぴょんが。
「ほうほう。よし、あたしも投票しよーっと。で、そうなると……えーっと、せんかん。紙とペン貸してー」
「はいよ」
「すぐ出るお前すげぇな……」
「さすがぴょんの彼氏だね〜」
だんだん頭の中だけで集計するのが大変になってきたのだろう、赤ら顔のぴょんが大和に紙とペンを求め、大和が即座に対応する。
その光景に俺は呆れ、ゆめが楽しそうにケタケタ笑う。
ちなみにゆめはもうすぐ飲み終わりそうな4杯目のお酒の入ったグラスを両手で持っていて、ザ・お嬢様感が漂ってるけど、ゆめはこれあれか、笑い上戸か?
そしてぴょんが紙に何かを書くこと十数秒。
「4対3対2対2対2対0!」
と、高らかな声とドヤ顔で告げて来た。
その表情から自分が1位になったのは、余裕で伝わってくる。
しかし1票が0になったということは……ふむ。俺が投じた票でぴょんとゆめが+1でそれぞれ4と2になったわけだよな。となると、誰かがゆきむらと大和に票をいれたわけだから、たぶんあれか、真実がゆきむらに投票して、ぴょんは大和にいれたわけか。
相思相愛だなー。
ぴょんの場合自分に票いれて5票にしておけば、残る投票権を持つのがだいとロキロキの二人だけなんだから、何があっても同率1位以上が確定だったのに。
まあ、この辺がぴょんらしいったららしいんだけど。
「あとはだいとロキロキか?」
「二人の投票次第だと、まだあーす以外優勝の可能性あるね〜」
「二人が20時までに来なきゃぴょんが優勝だな」
「まっ、あたしの実力にかかればな!」
「ゼロやん優勝したくないから、わたしたちの写真にいれたんでしょ〜?」
「え? いやいや! ゆめたちの写真がすごい綺麗だからだって!」
「ほんとに〜?」
「マジマジっ。笑顔、めっちゃいいじゃん?」
「たしかに分かる。このゆめ可愛い」
「あ?」
「おいおい、ぴょんは"いつも"可愛いじゃん? 俺は今"この"ゆめって言ったんだぜ?」
「あ? あー、うむ。そうだな!」
「ちょろぴょん激かわだな〜。その可愛さに免じて、せんかんの無礼を許してあげよ〜」
「さんきゅっ」
「ゼロやんだったら許してないけどね〜」
「えぇっ!?」
で、俺以外みんな笑う、と。
いやぁ……でも、すごいな大和。さらっと俺のフォローをしてくれたと思えば、ぴょんすらも宥めてしまった。何というかスマートさ。こいつもしや……孔明……!?
と、そんなことを思ってしまうくらいには、俺の頭もアルコールが回ってきているようだが、そんなこんなで一旦投票の流れが落ち着いた。
グループTalkでは真実とゆきむら、時々あーすの会話が続いていて、俺たちも適宜そこに反応しているが、ほんとなんか、みんなオフ会に参加してるみたいだなぁ。
この落ち着いた隙に俺は大和が仕掛けて来た肉の大食いバトルをしたり、お酒を飲んだり、かなり楽しい時間を過ごせた。
そして19時を過ぎ、投票時間残り1時間を切った頃。
岩倉亜紀>【Teachers】『通知3桁はえぐいっす!w』19:11
岩倉亜紀>【Teachers】『改めましてこんばんは!今日勝ったので、オフ会はいけないっす!また今度参加しますね!』19:11
と、満を辞してロキロキが登場し、みんなでおめでとうを伝えた後、ロキロキへ真実が写真を確認するよう伝えると——
岩倉亜紀>【Teachers】『なるほど!了解っす!』19:14
岩倉亜紀>【Teachers】『決めたらぴょんさんに送るっす!』19:14
と、非常に物分かりのいい返事がきて、ぴょんが単独首位をキープするのか、はたまた、な状況になることが決定する。
しかしロキロキか。
うーん、ロキロキが誰にいれるか、か……。
ロキロキが誰と仲が良いか……で考えると……いやいや、さすがにこんなに麗しいメンバーもいるんだし、それはないだろう。
浮かんだ考えに、俺は一人頭を振る。
そもそもさ、なんでそんなに俺の写真に需要があんのかって話なんだよな!
そんなことを思いながら、俺はおそらくロキロキの投票を受けて震えたであろう、自分のスマホを確認するぴょんが告げる言葉を、ドキドキして待つのだった。
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