第448話 決着は、みんなの手で
「まだ17時過ぎかー。めっちゃ飲めるな!」
「まぁ明日日曜だしなー、今日はある程度ノーセーブでいけるか」
「酔っ払い対応は別料金で〜す」
「ゆめだけギャラ飲みかよっ」
御苑を出てみんなで人混みを抜け、ぴょんと大和の案内でやってきたのは歌舞伎町の居酒屋、というよりは、飯がメインっぽいお店だった。
3時間の飲み放題に肉寿司やらステーキやらが食べ放題コースという、正直大学生向きじゃないかと思ってしまうコースが今日のオフ会の晩餐会らしい。
ゆめなんか着いた瞬間「重そうだな〜」って軽く引いてたからな。ぴょんならゆめへの配慮があるだろうから、きっと大和の提案なのだろう。
まぁでも、男の俺からすれば、ちょっと楽しそうというか、肉! って感じのメインメニューたちに、男心がくすぐられる部分はある。
そんなお店の個室に俺とゆめ、大和とぴょんでそれぞれ横に座って、ピクニックオフのアフタースタートだ。
「そういや、写真対決の決着ってどうやって付けるんだ?」
スタートして飲み物を頼み、生ビール3のカシスオレンジ1を注文し、飲み物がくるまでの間に俺はぴょんに先程までやっていた写真対決についてを聞いてみた。
「うむ。【Teachers】のグループTalkに写真あげて、どっちがいいか聞いてみて、会計までに返ってきた得票数で決着をつける」
「あ、わたしらで決めるんじゃないんだ〜」
「俺もてっきり俺らで決めるのかと思ってたよ」
俺の質問に返ってきた答えに、聞いておいてなんだって話しではあるのだが、ゆめ同様俺も正直予想外。
でもそうなると、あの写真をみんなに見られるのか……ちょっと、やだな。
そんな気持ちになったのだが。
「せんかんがさー、あたしらだけで決めたら出来レースじゃんってゼロやんが拗ねてるって言うから、しょうがなくこうしてやったんだぞー?」
「いや拗ねてねーし頼んでもねーよ!?」
俺は返ってきたぴょんの言葉に反発して大和の方へ文句有りと睨むが……爽やかなサムズアップが返ってきて、既に最早何も効かない状況であることを悟る俺。
「ゼロやんたちはどんな写真撮ったの〜?」
「あー、とりあえず投稿されるまで秘密」
「ほうほう。そんなクオリティが」
「なんだよ倫、結局自分でも期待値あげてんじゃんっ」
「あ」
で、俺たちの戦果を確認してきたゆめに対し、俺は自分が写真データを持っていないからというのをぼかして伝えただけなのに、見事に誤解されてしまい、大和が笑う。
とまぁ、そんなやりとりをしている間に、頼んだ飲み物が届いて、とりあえず——
「「「「かんぱーいっ」」」」
お酒が入ればノーサイド。
なんだかんだそんな雰囲気を醸しながら、色々と頼んだ食べ物も食べつつ、オフ会のお楽しみ夜の部が始まるのだった。
☆
山村愛理>【Teachers】『ってことで、あたしに直でどっちに票入れるか連絡よろ!』17:30
上村大地>【Teachers】『楽しそう!いいないいな!投票迷う☆』17:31
久門しずる>【Teachers】『可愛い方に一票いれるねーーーーw』17:33
石神美香>【Teachers】『つまりそれはどっちだいジャックどん?』17:34
久門しずる>【Teachers】『秘密ーーーーw』17:34
17時30分にぴょんがルール説明を送った後、大和ともども写真を送信し、すぐに反応があったのはこの3人だった。
あ、ちなみにみんなそれぞれの設定した名前があったみたいだけど、俺は自分の都合で相手のフルネームに俺の表示を変えているからな。キャラネーム登録も考えたけど、急な電話来た時とかに『嫁キング』とかって出てきたら恥ずかしいし、ここはフルネームだ。
「みんな反応早いね〜」
「なるほど、ここまでは対等かー」
「いやそれどこで判断してんだよ……」
テーブルの真ん中に置いたぴょんのスマホを眺めながら、みんなの返事に女性陣が反応する。
でもぴょんさんや。みんなからの通知はまだきてないみたいだし、ここまではまだ全員投票前だろこれ。
「でもまさかゼロやんとせんかんのイチャイチャ写真だとは思わなかったよ〜」
「まぁな! 勝つにはこれくらいしかないだろってな!」
「断じてイチャイチャはしてないからな!?」
しかしスマホに目を向けていたと思えば、今度は俺と大和の写真についてゆめがコメントしてきたので、俺はその言葉を否定する。
いやたしかにそんな感じの写真をネタで撮ろうかと提案しかけたが、俺は俺の声かけを勘違いした大和にツッコミをいれただけなのだ。
断じて大和からあーんをして欲しかったわけではない。俺がして欲しいのはだいだけだし。
「ちょっと拗ねた感じのゼロやん可愛いね〜」
「うむ。せんかんが爽やかに笑ってるのコントラストがよく撮れてるなー」
「被写体がいいからなっ」
「やめいっ」
それなのに、多勢に無勢孤立無援。
明らかに楽しんでいる3人を相手に、俺は孤軍奮闘を強制されるわけである。
いやほんとツッコミ対ボケ&いじりの比率おかしいってこれ。
はぁ……。
「でもぴょんたちの写真もよく撮れてるなっ」
「ったりめーだろー。被写体誰だと思ってんだよ?」
「構図考えたのも撮ったのもわたしだけどね〜」
「協力あたしだし!」
「そこで威張んなよ……」
そんな単騎で防戦に勤しんでいた俺を憐れんだのか、やっと大和が話題を変えてくれたけど、ここでもやはりツッコミがないと話が締まらないので、結局俺はツッコむ羽目に。
まぁいいや、諦めよう。
そう割り切って俺も自分のスマホでグループに送られたぴょんとゆめの写真に目を落とすが、たしかにそれは、いい写真だった。
二人で芝生に寝そべって、二人揃って目を線にしてニカッと白い歯を見せて笑う無邪気な笑顔が、そこには並ぶ。
その笑い方は普段の二人が見せることのない笑い方だったからか、二人ともいつもより可愛く見えた。
しかし。
「ちなみにこれゼロやんたちと別れてすぐ撮ったんだよ〜」
「うむ。歩くのだりーなってなったからな」
「ええ!?」
あっという間に邪気全開。あっさりと可愛いと思った俺の思いを踏み倒して来る辺り、さすがの二人だよな。
全然歩きもせずすぐ撮ったと語る二人はケラケラ笑っているが、その笑顔の質は写真の中とは全然違う。
詐欺です。
とまぁ、お酒を飲んで肉を食べ、そんな会話をしていると、中央に置いたぴょんのスマホがブブッと震え、その直後に全員のスマホに通知がやってきて。
石神玄一郎>【Teachers】『投票した!w』17:48
と、リダからの連絡がグループにやってきた。
その直後、さらにぴょんのスマホが2回振動した後で——
上村大地>【Teachers】『僕も送ったよ☆』17:49
久門しずる>【Teachers】『あたしもーーーーw』17:50
と、みんなのところにも連絡が入る。
そしてぴょんが一旦スマホを取って、みんなに見えないように操作をし……なんとも言えない表情を一度見せ——
「ここまで2-1!」
と、どちらが何票かは言わないが、既に票が割れたことを告げてきた。
しかし俺らに票を入れてくれるなんて、ネタ投票の可能性を持つリダくらいだろうから、これはきっと俺たちが一票か。
いや、下手したらこのまま一票で終わる可能性も高いよな……。
負けたらこれ、何が起きるんだろう……。
そんな不安を抱きながら、俺はみんなの投票の行く末を見守るのだった。
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