第435話 次回予告はいつものやつ

〈Zero〉『助っ人さんきゅ!』

〈Senkan〉『おうよ。いやぁ、いいギルドだったなw』

〈Zero〉『うむw気のいい奴ら揃いだよ、【Bonjinkai】は』


 一仕事終えた俺と大和は、先程まで話していた青色文字のパーティチャットから緑色文字のギルドチャットに切り替えて、ついさっきまでの冒険を振り返っていた。


〈Zero〉『しかしログが荒れ狂った時は中身も変わったのかと焦ったぜw』

〈Senkan〉『あー、実はたまにぴょんにやってもらってる時もあったんだぜw』

〈Zero〉『マジ!?』

〈Senkan〉『おうよ。中ボス3体目までは、コントローラーもぴょんだったからな』

〈Zero〉『マジかー・・・気付かなかったわ』

〈Zero〉『普通に話してもいたのになー』

〈Senkan〉『ま、ぴょんだってゲーマーだってことよw』

〈Zero〉『それはたしかに』


 何となくぴょん=オフ会の企画者兼ギルドの賑やかし要因って認識になってたけど、普通に【Teachers】の攻略で活躍してるんだもんな。

 やる気とか強さはそれぞれでも、ゲームを楽しもうとするのは一緒、か。


 今日は色々気付かされる日だな。


〈Hitotsu〉『ありがとうございましたっ』

〈Jack〉『いえいえーーーーw』

〈Loki〉『スキル上げ頑張っすよ!』

〈Hitotsu〉『はい!』


 そして俺と大和が話しているところに、真実のお手伝い班も戻ってきたようで、今日の出席者が最集合。

 でも時刻はもう23時を回ってるから、今日はこのくらいで解散かな。

 そう思っていると——


「わっ」

「ぬおっ!?」


 不意に背中側から感じた衝撃と温もりに、俺は思わず声を出す。

 その直後さらに俺の首に抱きつくように二本の腕が回ってきて、さらに首になんだか柔らかいような感触も伝わった。

 あー、休ませるためにノー下着を推奨してた俺GJ!


「びっくりした?」

「いや、そりゃびっくりするわ」


 そんな俺内心GJを気取られぬように、俺は抱きついてきただいに返事をする。


「ふふん」


 その返事を聞いたからか、背後からまとわりついて抱きついてくる腕に少し力が加えられ、さらに耳元で聞こえるちょっと悪戯っぽい声。

 その声の方には振り向けないが、間違いなく今楽しそうな顔をしているのは、声からも伝わった。

 体調はもうだいぶ回復したみたいだな。

 よかったよかった。


「電話、楽しんでたみたいだな」

「うん。それでね、来週のオフ会はせっかくの秋だし、お昼にピクニックしてから、飲みに行って、カラオケにしようって」

「ほうほう。そうなるとだいの出番だな」

「うん。食べたいものあったら教えてね」

「おうよ」


 そしてその楽しそうな声から聞かされた、楽しそうな未来の話。

 未来っても、まぁ来週なんだけどね。


 しかしピクニックかー。この年になってからそんなのずっとやってないし、だいのお弁当確定イベントだし、なんかちょっと楽しみだな。


 そんなことを思いながら、俺は左手を上げて自分の頭の後ろにあるであろうだいの首元を撫でてあげると、「にゃぁ」とさらにご機嫌な声が聞こえてくる。

 うわ何この子、可愛いなおい……!


 と、ちょっとそのまま幸福な時間を過ごすこと数秒。


「あ、なんか話してるよ」

「ん?」


〈Senkan〉『ってことで、いよいよ来週はオフ会でい!』

〈Senkan〉『10月17日の土曜日、昼に新宿集合!』

〈Senkan〉『御苑で大人のピクニック開幕だ!』

〈Jack〉『おーーーーw』

〈Hitotsu〉『ピクニック楽しそうですね!』

〈Senkan〉『者ども準備はいいかー!』

〈Zero〉『いや、準備には早すぎるだろw』


 だいに言われてモニターを見れば、間違いなく中身が切り替わった〈Senkan〉が、来週のオフ会の告知を行なっていた。

 その内容は今まさにだいから聞いた話そのものだったので、とりあえず俺は自分の役割であるツッコミを果たす。


〈Jack〉『でも来週はあたし別件の用事あるんでごめんねーーーー』

〈Senkan〉『なぬ!』

〈Loki〉『すみません、俺も土日がサッカーの大会なんすよね・・・負けたら日曜ないんで、夜からは行けるかもっすけど』

〈Senkan〉『そこは負けんな!』


 だが、今伝えられたログからも分かる通り、今回は早くも二人の不参加予定が伝えられる。

 まぁ前回が多過ぎたからな、こんな時もあるか。


「私たちは行けるもんね」

「だな」

〈Zero〉『俺とだいは参加するよ』

〈Jack〉『安定だねーーーーw』

〈Hitotsu〉『さすが全回参加メンバーだねー』

〈Senkan〉『当然だな!』

〈Zero〉『なんかもう〈Senkan〉って文字が〈Pyonkichi〉にしか見えなくなってきたわ・・・』

〈Zero〉『ま、あとはリダたちとあーすは無理だろうし、あとはゆめとゆきむらで、今回は6人かね』

〈Senkan〉『なんか初期メン感あるなー』

〈Zero〉『その名前は初期メンではないけどな!』

〈Yukimura〉『呼びましたか?』

〈Jack〉『いきなりきたーーーーw』

〈Loki〉『こんばんはっす!』

〈Hitotsu〉『ゆっきーこんばんはー』

〈Senkan〉『来週の土曜オフ会だぞ!』

〈Yukimura〉『あ、その件でしたか』

〈Yukimura〉『大変残念なのですが、来週は両親が一時帰国して家族旅行なのです』

〈Yukimura〉『無念です』

〈Hitotsu〉『あら』

〈Senkan〉『なんてこったい!』

「残念……」

「まぁ、ゆきむらの両親は普段海外なんだし、その予定はしょうがないだろ」


 そんな奇跡的なタイミングで現れたゆきむらも自然と会話に参加して、次のオフ会の参加者は全部で5人になることが判明する。

 でもまだゆめの確認取ってないから、もしゆめもダメだったら、第一回オフぶりの四人? っつか、俺とだい、大和とぴょんだったら、それもうダブルデートじゃんな。


 俺はこの時、こんなことを思ったのだった。

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