第433話 誰かがこれを やらねばならぬ
ふざけたログラッシュの後も、それはまぁネタ満載なログを流しながら俺たちは戦闘を継続し、
ここまで経過時間が長引いたのは〈Senkan〉の波動砲の溜めが長いから……というわけではなく、先刻の2体同時戦の後レッピーのMP回復休憩が入ったからだ。
被弾したとほぼ同時にHPを回復するくらい回復頻度が高すぎるレッピーの消費MPは尋常ではなく、アタッカーとして安心感はあるのだが、という戦闘になってしまっていたわけである。
だが、ラストのこいつは3分もあれば倒せるから、ボス戦に至るには何も心配はない、はずだ。
そんな割と油断を持って俺は戦闘に入っていった。
〈Limon〉『いっくぞー!』
〈Reppy〉『やっておしまい!』
〈Senkan〉『全集中!』
〈Kodama〉『割とナウいネタきた!w』
〈Yamuimo〉『いや、もう割と前な上に、そもそもナウいとか今日日聞かないよ・・・』
〈Risaco〉『こじまおっさんだなー』
〈Kodama〉『こだまだよ!w』
〈Kodama〉『おじさんだけど!w』
ログだけ見ればふざけているようにしか見えないが、戦闘は至って普通にやってるあたり、【Bonjinkai】ではこの会話も普通なのだろう。
うちも割合楽しく話す傾向はあるけど、全員が基本的に会話に加わってくるのは割とすごいと思ったり。
そんな風に思いながら、俺も普通に戦っていると。
「ちょっと具合良くなってきたから、私もキーボードだけやっていい?」
「え?」
ベッドの上から俺の肩をトントンした後、返事を待つことなくのそのそベッドから降りて俺の隣にやってきて、一度ちょこんと俺の肩に自分の頭を乗せて甘えてきた後、頭を戻してカタカタと俺の目の前にあるノートPCのキーボードを打ち出すだい。
てかあれだな、今だいが「私も」って言ったってことは、〈Senkan〉に発言させてるのは当然ぴょんだって確信してるってことだよな。
で、それを自分もやりたい、と?
「動き、私のログに合わせてね?」
「あー、はいはい」
そんなまるで子どもみたいなことを言い出してきて、俺の返事を待たずにやりだしたのが可愛くて、俺は表向きちょっと投げやりに、でも内心けっこうその可愛さに気分を高めながら、だいのために少しだけ画面正面からズレて、二人で画面が見やすいように移動した。
そしてだいがエンターを押すと——
〈Zero〉『攻撃阻害してみるから、ボスの練習ね』
と、今まさに俺がやらんとしていた尻尾への狙撃を伝える言葉が発せられた。
〈Limon〉『おお、ほんとだこない!』
その攻撃を防ごうとしていたりもちゃんが、素直にこのギミックに感動する。
流石だい。俺のやらんとしたことを伝えてくれたわけか。
でも——
〈Risaco〉『照準合わせながらよく喋れんなw』
と、これまで戦闘中話すとしても単語か一文字、二文字程度だった俺の発言に、やはり気づく人は気づくようで。
〈Kodama〉『腕三本か!?w』
〈Lohengrin〉『神速のタイピング・・・!』
〈Yamuimo〉『さすがゼロやんー。略してさすゼロ』
〈Zero〉『ブレスきたら連携よろしくね』
りさこの発言に気づいた三人も俺の発言に反応するが、それには応えずさらに
そしてそのログから間を置かずにブレス攻撃がきたので、俺は的確にそのブレスを阻止し、僅かながらの硬直を生じさせた。
その直後——
〈Senkan〉『この身を弾丸と化して、我が敵を阻止せん——☆タックル☆——』
〈Lohengrin〉『おお・・・』
俺はもう〈Senkan〉のセリフには何も触れないが、このタイミングに慣れていた大和のタックルが決まり、硬直時間が増加する。
それを見ていもがグラウンドスラッシュを放ち、りさこがトリニティスピンを放って、俺はサイレントショットとマルチプルショットを発動させ、攻撃する。
その後ローエンの魔法も加わって、俺の使用スキルの威力が上がったこともあり、一気に5割ほどを削ることに成功した。
〈Zero〉『いい感じ』
連携直後はもう俺は通常攻撃に戻っているわけだが、それと平行してだいがみんなを賞賛する言葉を発してくれた。
出来るなら俺も『gj』だけじゃなくちゃんとした言葉使いたかったから、代わりに喋ってくれるのはありがたかったのだが——
〈Reppy〉『あー、なるほど』
と、唐突にそういえばさっきから少し黙り気味だったレッピーが謎の発言をしたと思えば——
〈Reppy〉『仲直りおめw』
〈Limon〉『なんのこと??』
〈Lohengrin〉『む?』
〈Kodama〉『誤爆か?w』
〈Yamuimo〉『レッピーフレ多いもんねー』
〈Risaco〉『裏でチャットしながらあの回復の早さとか、意味わからんしょw』
レッピーの発言の意図が伝わらない【Bonjinkai】の面々が軒並みクエスチョンを浮かべているのが伝わったが、俺には、俺たちにはその発言の意図が伝わった。
「む……」
そのログにだいもちょっと驚いたようだったが——
〈Reppy〉『語尾は大事にゃん☆』
〈Kodama〉『ここでにゃんきたーw』
〈Risaco〉『え、あたしもわんわん言えばいい流れ?』
〈Yamuimo〉『りさこのわんとか聞いたことないよー?』
〈Lohengrin〉『猫と犬の饗宴・・・!』
〈Limon〉『戦闘集中しなさーい!』
分かる人には分かり、分からない人には分からない。それがありありと伝わるログが連なる中、俺の思うことは一つ。
これ終わったら、間違いなくレッピーにいじられるな、というある種の諦めだ。
だいのログはたしかに普段の俺からすればちょっと柔らかい物言いだったけど、やまぴょんほどの内容じゃなかったのに。
まぁでもこのくらいはしょうがないかと思った矢先——
〈Senkan〉『体調大丈夫かー?』
こんなログが現れた。
予想してなかったそのログに、俺が呆気に取られていたら、カタカタと音が聞こえてきて——
〈Zero〉『だいぶよくなったよ、ありがとね』
だそうです。
「二人して人の身体借りて会話するんじゃありません!」
そんな風に俺に雷を落とされただいが、ちょっとしゅんとした後、自分のスマホでぴょんに電話をかけたのは……言うまでもない。
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