第432話 戦う男? 燃えるロマン

 ……俺様?

 そのフレーズに浮かび上がる違和感。

 助っ人参加の大和が、そんなこと言うか?

 いや……!


 その予想を立てると同時に、俺は血の気が引く思いだった。


 そんな俺を尻目に槍持ち恐竜へ突っ込んでいく〈Senkan〉が、槍持ちに攻撃スキルの正拳突きを放ち、ファーストタッチによるヘイトボーナスを獲得。そのまま予定通りに、りもちゃんがタゲを取った斧持ち恐竜と、対角線上に離れていく。

 そして十分に距離を取ったところで正面に向き直り、迫り来る槍攻撃を捌いてカウンターを繰り出し、ヘイトを重なる。


 その動きは、指示通りのちゃんとした動きそのもので……むむ? 俺の想像は杞憂だったか? 

 そんな風にも思えてきたのだが——


〈Senkan〉『オラオラオラオラオラオラオラオラァァァ!!いくぜいくぜいくぜいくぜー!!!』

〈Risaco〉『熱い奴だなーw』

〈Yamuimo〉『いつでもいーよー』


 どこのスタンド使いだよと言いたくなるほどに、やはり違和感がすごい。

 どうした大和、知らない人たち相手にいきなりそんなはっちゃけるなんて……!?


 と、俺がドキドキしながら戦闘を継続していると、いい具合に間隙を縫ったタイミングで——


〈Senkan〉『波動砲発射用意。エネルギー弁閉鎖。 エネルギー充填開始。セーフティーロック、解除。エネルギー充填120%。対ショック、 対閃光防御!』

〈Kodama〉『充填はやwww』

〈Reppy〉『その戦艦なのかw』

〈Reppy〉『俺は相転移砲搭載の戦艦が好きだなー』

〈Risaco〉『バカばっか』

〈Kodama〉『真面目に戦えwww』


 長台詞の直後すぐ撃つのかと思った波動砲——〈Senkan〉曰く——はここからさらに数秒の5,6秒の通常戦闘タイムを挟んだせいで、色々ツッコミをいれたい発言も続いたが——


〈Senkan〉『最終セーフティー、解除。波動砲、発射!!!!!』

〈Kodama〉『閃光防御時間長かった!!w』


 こじまさんのツッコミはそこなんだとも思ったが、まぁ当然実際は放たれたのはタックル硬直スキルだよね!!

 〈Senkan〉の身体をぶつけられたくらいでは、オーストラリア大陸を一撃で破壊する威力なんてものは当然ない。ただ、微々たるダメージを与えつつ敵を硬直させた直後——


〈Yamuimo〉『グラウンドスラッシュ〜☆』


 いもの大剣スキル、グラウンドスラッシュが発動し、小人族である〈Yamuimo〉が、大剣——多種族からしたら通常の剣サイズの見た目だけど——を*印を描くように振り回す。

 その発動を確認し、俺も頭の中で激鉄を起こし——


〈Zero〉『3番ビックバンショット!』


 ヘイトを取りすぎない威力のスキルを選択し、〈Zero〉の視界の先にいる恐竜へ銃弾を放つ。そして——


〈Risaco〉『〆トリ( ´Д`)y━・~~』


 緩いログの後、ものすごい速さで回転しながら横薙ぎの槍の攻撃を2回繰り返したあと、止めと言わんばかりに槍を中腰に構えた〈Risaco〉が、グッと溜めを作り、最後の一撃として超高速回転させた槍を敵に突き刺していく、トリニティスピンが発動された。

 さらには。


〈Lohengrin〉『凍てつく波動を受けよ!』


 とローエンのダメージボーナスを狙った氷魔法が放たれ、トータルでぐっと敵のHPを削ることに成功。


〈Senkan〉『波動被せとは、やりよるな!!!』


 だが、〈Senkan〉のツッコミは味方の攻撃を賞賛するでもなく、まさかのローエンのログへの賞賛だったわけだが……とりあえず結果としては、見事に予定通りの連携攻撃が決まり、槍持ちのHPを4割弱減少させることに成功した。

 ちなみにクソ長いセリフの後〈Senkan〉がタックルを放っていたが、あのセリフに合うのは間違いなくめっちゃモーションが波○拳に似たスキルである気功砲だと思う。どうでもいいけど。

 しかし、ここで振り返ってみれば、普段の大和は冗談は言うがタックルを放つ時あんなことは言わない。しかも硬直スキル発動直前に連携準備の合図として一言発する場合はあるが、今回そこに当てはまるとしたら『オラオラオラオラー』だろう。だからその後の発射準備ログは、単純な味方騙しなのだ。俺もそのログの直後は連携準備のために通常攻撃を止めてしまったからな!

 本人によるわざとだとしたら、ちゃんと注意しないとな……。

 と、真面目にLAのプレイについてあれこれ考えたものの、もしこれが大和の野良パーティ仕様なのだとしたらちょっと印象変わるけど、いくらなんでも外でここまではっちゃけるようなこと……だろう。

 ってことはきっと……なんだよな……?


 俺が半ば確信的に一つの予想を立てた時。


〈Reppy〉『いてつくはどうは攻撃技じゃねーけどな!』

〈Kodama〉『たしかに!!w』

〈Lohengrin〉『む』


 リーダーからのローエンへのツッコミはある意味で的確だった。

 だが——


〈Kodama〉『レッピー残MP!w』

〈Reppy〉『おお、減りすぎてたな、さんきゅ!』


 こじまさんの指摘を受けて、レッピーが残り5割まで減ったMPに気づく。

 だがキングサウルスが落とすステータス爆盛りの盾であるアンキーレを持っているりもちゃんなら、ソロでキープすることもギリギリ出来ると思う。

 まぁギリギリは怖いから、レッピーがサポートに着くんだろう。

 でもつまりだ、そこまで過剰な回復はいらないはずなんだよね。


〈Limon〉『上位ヒール回復魔法使いすぎ!w』

〈Reppy〉『んだよ俺の愛だろーが』

〈Risaco〉『早いだけじゃダメなんだわw』

〈Reppy〉『速さは愛だろーが』

〈Kodama〉『擦り傷で救急車呼ぶ親かよw』

〈Senkan〉『ならばこちらも、そっこーで落とすのであーる!!!』


 KHAOS真面目に戦え\(^o^)/


 そんなことを思いつつ、密かに俺は愉快だなぁと思うところも、ないわけじゃない。


「楽しそうね」

「え、あー、まぁ。効率よく倒すことに拘るだけがゲームじゃねぇよなぁって思わされるな」

「たしかに」


 いつものメンツならもうボスまで辿り着いてる頃だとは思うけど、今俺たちがやっているのはゲーム娯楽なんだから、こんな戦いも悪くない。

 そんな気持ちを抱きながら、俺は話せない自分にもどかしさを抱きつつ、俺のやるべきことをやりながら、戦闘を続けるのだった。

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