第431話 共闘開演
「まとめ狩りじゃないの、久々だね」
「うむ。でも不慣れなことして誰か死んだら元も子もないからな」
「ゲスト参戦だもんね」
エリア侵入直後、後衛たちからバフ魔法と移動支援魔法が唱えられ、1,2分の時間が経過する。
最近の俺らならもう既に最初の中ボスと出会う頃だが、俺らも昔はこのゆったり感でやってたから、懐かしい。
〈Reppy〉『うし、じゃあ移動!』
そしてようやく移動開始。
でもこの安全な橋を渡るのは確実性の観点から見れば大事だから、俺はむしろレッピーの指揮に好感を持った。
そして雑魚モンスターに見つからないための魔法をもらっての移動の末、俺たちはエリア侵入5分ほどで1体目のトカゲ型の中ボスと遭遇した。
最近こいつと出会う時は雑魚がうじゃうじゃしていて、序盤は範囲攻撃で雑魚を殲滅してから、範囲攻撃の余波で残り6〜7割までHPが減った中ボスに1連携叩き込んで、死ななかったら通学攻撃で押して終わり、ってのが多かったけど、今日はこいつ1体に集中できるからだいぶ楽だな。
範囲攻撃スキルは狙った敵を100%とすると、一定範囲内において最初に狙った敵から遠くなるほどに与ダメージが減衰する。
もちろんそうじゃないスキルもあるけれど、つまり俺が言いたいのは敵が多い時はどの敵を範囲攻撃の起点とするかがけっこう重要、ということである。
でも、今日はそれがない。じっくり1体に集中出来るのだからありがたい。
〈Limon〉『いくっすよー!』
〈Reppy〉『やっちまえー』
そしてりもちゃんの
「やりづらそう」
「しょうがないべ」
Bang! と一発攻撃をして、俺は位置取りを変えるためにキャラを動かす。
後衛の魔法の範囲内かつ、敵の攻撃が届かず、タゲを取っても敵が迫るまで1秒はかかりそうな、敵が見やすい位置へ。
もう無意識的にこの位置取りを意識して判断することが出来るようになったが、これもかなり大切なガンナーとしてのプレイヤースキルなのだ。
もちろんこれは基本のキだし、色んな攻略サイトの基礎知識編に載っていることなのだが、理解するはかんたんでも、やってみると意外と難しい。ただ敵から離れるだけではなく、味方の魔法を受けれつつ、ヘイトを上げすぎて敵のターゲットが自分になったとしても、多少の逃げる猶予を持ちつつ、後衛メンバーに被害が及ばない立ち位置を取る。そしてもちろんガンナーはアタッカーなのだから、その本分をしかと発揮するために、タゲマがちゃんと見えるように自分と敵の直線上に味方を含む障害物を置かないことも重要だ。
前にだいにレクチャーした時も、「頭では分かってても、すぐにここって判断しづらいわね……」と顔をしかめていた。レイさんにレクチャーした時も「むず〜」と頭を悩ませていた。
ましてこれをコンテンツ攻略でやるとなると、位置取りに時間をかければかけるほど、殲滅スピードが落ちてしまい、下手したら役立たずのまま終わってしまうこともあるわけだ。
なので俺はこの位置取りはめちゃくちゃ大事にしているんだけど——
「やむいもさん、けっこう動くね」
「敵が動いてるから、自分も動いた方がいいって思っちゃうんだろうな。感覚的には分かる」
「でもおかげで、ゼロやんの動き勉強になる」
「そうか?」
「うん。この前のストーリーボス戦も勉強なったけど、外から見ると色々よく分かる」
頑張ってたらだいに褒められた。
ちょっと嬉しい。
ちなみにだいが言った通り、敵のトカゲ型モンスターがりもちゃんに攻撃をしかけつつ、ちょこまかちょこまか絶妙に動く。
それに合わせて、いもも動く。
アタッカーたちの基本の位置取りはサブ盾の後ろか、盾役の位置取りに対して90度の角度を保つことだ。
これは敵が前方範囲攻撃してきても盾役のみの被弾で被害を抑えつつ、敵を挟み込むよりも盾とアタッカーが広がらず、範囲支援魔法を同時にかけやすいというメリットがあるためだ。
もちろんロバーだけは敵の背後からの攻撃にダメージボーナスがあったりするから背後の位置取りを取ったりするが、今日はロバーはいないのだから、基本に忠実な位置取りすればいいだけなのだ。
この戦闘が終わったらちゃんと伝えよう、そう思っていると——
〈Reppy〉『いも、ちょろちょろすんなー』
〈Risaco〉『ゼロやん困らせたい確信犯なら許すw』
〈Reppy〉『後ろ回るとガンナーの射線とかぶる』
〈Senkan〉『さぁ俺の後ろに入りたまえ!』
〈Yamuimo〉『なるほど、ごめんねゼロやーん』
〈Zero〉『
レッピーが指示の起点となり、他のメンバーがそれを補足する。
ガンナーはタイピングする余裕ないから、ありがたい。
そんなこんなの指示が入った後は、しっかりといい位置でいもも戦ってくれたので、なんの不安もなく敵を倒すことが出来ました。
「いい感じだね」
「うむ。レッピー面倒見はいいからな、しっかり鍛えられてるよな」
「うちも面倒見いい人がいるから、強くなったんだと思うよ?」
「あ、俺のこと?」
「プラスジャック」
「それは間違いない。でも、俺らも昔はこうだったよなー」
「うん、特に大地くんはめちゃくちゃだったよね」
「あーすはなー、ほんと、成長したよ」
「最初から上手かったのは、ゆめかな」
「分かる。ちゃんとゲーム理解しようとしてたよな。比べるとぴょんとかゆきむらは、教え甲斐があった」
「ぴょんは今でも雑な時あるけど、ゆっきーの飲み込みは凄かったね」
「うんうん」
「きちんと教えられる人がいるって大事」
「褒めてる?」
「割と」
「そこ認めるんかいっ」
そして再びの道中の移動と第二、第三の中ボス戦を潜り抜けながら、俺たちは進んでいく。
そんな画面を見ているだいは、けっこう頻繁話しかけてくるんだけど、たぶん一緒にやりたがってるんだろうな。
明日は一緒に何かやろっと。
〈Reppy〉『じゃ、手筈通りせんかん槍持ちよろー』
そんなだいぶ気楽に進められるようになって迎えた、槍待ちと斧持ちの同時バトルとなる第四の中ボス戦。
レッピーの指示に応えてりもちゃんと大和が同時に突っ込んでいきながら——
〈Limon〉『槍お願いします!』
〈Senkan〉『俺様に任せとけーい!!』
〈Kodama〉『おお、やる気だなーw』
……ん?
指示通り向かっていく二人の姿を見ながら、俺は大和のログに、何か違和感を覚えたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます